予想外のお茶会
ドラゴンに乗りたいな〜
「ドラゴンじゃん!」
俺は喜びながら、どうやってドラゴンに乗ろうかと考えていた。えっ、ドラゴンに乗りたいなんて男として当然の夢だろ?
にしても、でかいな〜。さすがに諦めるか…。
そう思っているうちに、ドラゴンは通り過ぎ去ってしまっていた。
「やっぱ無理か〜。まあ、ドラゴン見れただけでもよしとするか。」
そろそろ魔王城に帰ろうかと思っていたが、不意に上空から声が聞こえてきた。
「きゃあああ!」
その声はかぼそく、常人には聞こえないほどであったが、俺の耳はしっかりと捉えていた(なぜかって?紳士だからさ!)
その声を聞くやいなや、俺は全身に浮空魔法をかけ、飛び上がっていた。
そうして、上から落ちてきていた女の子をしっかりと受け止めた(正直、重力もあり女の子を受け止めた時の衝撃はとてつもなかったが、俺には全然苦ではなかった。なぜかって?紳士だからさ!)。
「大丈夫かい?怪我とかない?」
そう言ってから俺は驚いていた。なぜならその女の子はロリだったからだ。
ここでみんなに言い訳をするわけではないが、俺は決して空から落ちてくる女の子がロリとわかっていたわけではない。女の子だろうなという想像はついていたが、さすがにロリとはわからない。
あと、なんでわざわざ浮空魔法を使ったかというと、そんなの決まってるじゃないか。誰でも一度は憧れるだろう?
空から落ちてくる女の子をヒーローのごとく救うというのを(正直、安全面を考えても風魔法を使うべきだったが)。
ということで、俺の過ちは水に流してくれ。緊急事態だったから仕方がないのだ。
「えっと、ありがとうございます。けがとかはないのでおろしてもらえますか?」
そんなことを考えているうちにロリが状況を察したらしい。
しかしながら、俺はロリの申し出を断らせていただいた。
「いいや、大丈夫だよ。森の中は危ないからね、お家まで送ってくよ。」
犯罪者すれすれのことを言っているが、これはもちろんロリのことを思ってである。決してロリともっと一緒にいたいという邪な考えからは来ていない。
ロリは申し訳そうにしながら、森の中を案内してくれた。
しばらくすると、森は開け、魔王城が見えてきた。
「あの、そろそろおろしてください。やっぱりはずかしいです。」
まあ、衛兵さんとかもいるからね。俺が捕まっちゃうから、そろそろ下ろさないと。
「えっと、ところで君のお家は?」
言葉だけ聞くと、完全に犯罪者である。しかし、俺は紳士である。
ロリはふとこっちを見てこう答えた。
「わたしのおうちはここですよ。わたしはげんまおうのむすめです。」
俺は昼間のことを考えながら、少し落ち込んでいた。
そうか、俺はあの子のお父さんを殺してしまったのか。なんとも申し訳がない。いくらあちらから仕掛けてきたとはいえ、なんとも複雑な気分である。
「深く考えるのはよそう…。明日の茶会について考えないと。」
そう、今はそれどころではない。俺は明日の魔族との茶会について考えなければならなかった。
世間話か…。一体魔族は何に興味があるのだろうか?
というよりも、俺は一体何を話すことができるのだろうか?
人間側の事情を迂闊に話すわけにはいかいし、まして、魔族側の事情を聞くことなんて到底できない。
しかも、俺の興味があることなど、到底人に話すことはできない。全員の顔が引きつるのが目に見えている…。
「そろそろ寝るか…。」
結局、俺にできることなどぐっすり睡眠をとることぐらいだった。
翌日、俺は引きつった顔で魔族の方々と席を共にしていた。
まず、誰も話さないというこの状況にびっくりしているのはもちろんのこと、ホストの現魔王が来ていないのだ。
気まずい、非常に気まずい。
そろそろ何か話そうかなっと、思ったタイミングで扉が開かれた。
「いや、遅くなってすまない。準備に手間取ってしまってね。」
やっと現魔王との登場である。彼女は娘と同じ白髪で、いかにも一癖も二癖もありそうな人だった。
あ、というよりも、ロリもついてきてる。お母さんに隠れるように、後ろを歩いてる(かわいい…)。
「そうか、人間の国の人も来てくれたんだね。遠いところ悪いね。今日は新魔王の選定の儀をぜひ体験してみてくれ。」
「もったいなきお言葉ありがとうございます。人間の代表として、お礼申し上げます。」
一応、敬語は使えるよ。ハゲのおっさんの時も心の中とは裏腹にめっちゃ丁寧だからね。
というよりも、今新魔王選定って言ったか?
「本日は新魔王の選定をなさるのですか?」
現魔王はきょとんとした顔で続けた。
「ん、招待状に茶会と書いてなかったかい?おそらく全員に同じものを送ったから、間違いはないはずなんだけど…。」
「………。」
いや、しらねぇよ!茶会が魔王選定の儀式なんて!
というか、それだったら俺何してればいいんだよ…。もう帰りたくなってきた。
「そうか、人間は茶会のことは知らなかったのか。まあ、気楽に過ごしてくれたまえ。実際に戦闘してもらうということはないから。私は伝統にならって、魔力の強さで決めるつもりでいるから。」
なんだろう、いやな予感しかしていなかった…。
魔力の強さといえば、俺の中で唯一誇れるものである。
まあ、魔族の代表者が集まっているのだろう、まさか俺が一番になることはあるまいと甘い考えを持っていた。
「じゃあ、申し訳ないが人間の君からお願いできるかな?
なーに、その魔力測定器に手をかざすだけだから。気楽にやってくれ。」
そうして、俺が手をかざすと、魔力測定器はとんでもない数字を叩き出していた。
「素晴らしい!私の父親、先先代魔王以来の値だ!じいや、そうだよね⁉︎」
「左様でございます、お嬢様。」
超ハイテンションの現代魔王と同様に、他の魔族の代表者も驚いていた。
なんだろう…、ものすごく帰りたくなってきた。てか、人間のおれがやってもどうしようもないよね。うん、じゃあ、次の人に移ろうか。
「さて、みんな次期魔王は決まったね。今日は遠いところわざわざありがとう。各国に、次期魔王がガイルと伝えてくれ。」
現魔王がそんなことを言い出しやがった。いやいや、他の人もやろうよ。せっかく来たんだから。絶対文句でるでしょ。
「ふざけんな!おれは認めねぇぞ!クソみたいな人間が次期魔王なんて、ふざけんじゃねぇ!」
ほら、威勢のいい若者が怒ってるじゃん。うん、そうだよな。
やっぱり魔族がなるべきだろうって、何気に人間をバカにすんじゃねぇ!
「私は何も魔力だけで次期魔王を決めようとは思っていないよ。王としてのふさわしい器を持ってるかどうかもちゃんとみて彼が適任だと思ったんだよ。あと、私は差別というものが嫌いだ。ガイルに謝罪したまえ。」
現魔王がめっちゃまともなこと言ってる…。やばいな、この流れは面倒だぞ。
「うるせぇ!俺は人間ごときが俺よりも魔力がたけぇってのが気にいらねぇんだよ!みんな死にやがれ!
水撃魔法!」
うわー、今時の若者らしく逆ギレしてる…。面倒な奴だな。てか、全方位系の魔法使ってやがる!ロリがあぶねぇ!
「氷上の世界!」
とっさに俺は唱えてしまっていた。
「ほう、古代魔法か。失われたはずの古代魔法を人間である君が使えるとは実に興味深い。」
だから、なんで失われたことになってんの…。童貞のおっさんでも知ってたんだぞ。
「やはり君しかいないようだね。皆の衆、異論はないね?」
いやいや、異論ありまくりですよ。ほら、他に否定する人早く出てくれって、みんな怯えた目で頷いてやがる。
ちょっとー、誰かなんか言ってー。
そう俺が思ってると思わぬところから助け舟が出た。
「ガイルさん。ガイルさんはまおうにはなりたくないのですか?」
ロリからの質問だった。まさかのところからの、助け舟だったが、俺は乗るしかなかった。
「というよりも、やっぱり魔王には魔族の人がなるべきだと思うんだ。人間の魔王ができて、一時的に平和になったとしても、次からそうなるとは限らないだろう?
俺が思うに、魔族と人間が和解するには、魔族の魔王が必要不可欠だと思うんだ。」
なんともロリにいうには難しい話かなと思いつつも、俺は自分の本音を話していた。
「そうですか…。ガイルさんのかんがえはよくわかりました。」
それから、ロリは思いもかけない言葉を発していた。
「おかあさん、やはりわたしがじきまおうになります!」
えっ、何だって?ロリがなんかすごいこと言ってたんだけど…。気のせいかな。
「ふーん、あなたが。あんなに嫌がっていたのに、一体どういう心変わりかしら?」
現魔王はロリを試すような目で見ていた。しかし、その目は笑っているというよりも、真剣そのものだった。
「やはりまぞくのおうには、まぞくであるわたしたちがならないといけません!
ガイルさんのようなにんげんのかたにまるなげしてはいけません!」
そう言うが早いが、ロリは魔力測定器に手をかざしていた。そこには俺と似たような値が広がっていた。
俺は帰る直前、現魔王と話をしていた。
「いや、すまなかったね。君を利用するような形になってしまって。そちらの王にもよろしく言っておいてくれ。」
「やっぱり、最初から俺を魔王にするつもりはなかったんですね?」
てか、ハゲのおっさんも関わっているのか…。毛根絶やしてやる。
「娘がね…。ひたすら嫌がっていたんだよ。昨日もドラゴンを洗脳して、逃げ出そうとしていたし。正直、手に余っていたほどだ。」
そんなことしようとしていたのか…。ロリやばいな。
「正直、あの子以上に適任はいなかったんだよ。わたしごときの力でどうこうできる問題じゃなかったから、いろいろ力を貸してもらったよ。」
「はあ、そうですか…。それでは、帰らせてもらいますね。」
現魔王との話を終え、俺は帰ろうとしていた。
「ああ、そういえば。いつ求婚してくれても構わないよ。あの子も私も君のことは気に入ってるからね。」
「な、何言ってるんですか!からかわないでください!
それじゃあ、帰らせてもらいます。転移魔法。」
現魔王とじいやの会話。
「てか、あなたも話せばよかったのではないですか?
お父さん。そんなわざわざ変装までして、執事のふりなんてしなくても…。」
「ふふふ。ガイルには人間だとずっと思われてるからね。
孫が落ちるであろう森の中であった時には、驚いたけど…。彼はさすがだね。私の教えた古代魔法をいとも簡単に使いこなしてくれるよ。」
「はあ、やっぱりあなたでしたか。そんな若作りまでして。いい歳なんですから、考えてくださいよ。それより、娘の洗脳魔法解いたのもあなたですよね?わざわざ空中で解く必要もないのに…。」
「ふふふ。なーに、若いもんは一度痛い目みないと学習しないからね。かわいい孫といえど同じだよ。さて、次期魔王も決まった事だし、旅に出ようかね。ガイルがどうなるかも楽しみだしね。」
「またですか、いい加減にしてくださいよ。まあ、止めはしませんけど。止めても無駄でしょうし。」
いかがでしたか?
予想外の結末でしたかね?
作者的には結構満足している結末ですσ^_^;
書く話の登場人物と、魔法の簡単な解説を入れて終わりにしたいと思います