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兄さんの中で



 狂った親から産まれた涼と仁が「学校へ行きたい」と言いだした時は、任と一緒に反対したものだ。

 狂った親が存在するのなら、狂った子どもも存在するはずだ。


 2人とも精神は安定していない。

 誰かの何気なく言った言葉が起爆装置になって、2人の精神は崩壊するかもしれない。

 任に呼びだされたおれは、何時間も話し合った。


 だけど、結局はおれらが折れた。

 任の言う通り、簡単に2人の意思を曲げることなど出来ないと悟ったから。

 それに涼が言っていた。

 おれたち兄貴がいなくても、生きていけるようになりたい、と。

 その真っ直ぐな意思と瞳に、任せてやりたいと思った。




 それなのに。

 涼は主人格を交代したいと言って来た。

 その上、一生主人格となったおれの中で眠りたいとも。


 普段喜怒哀楽を出さないおれだけど。

 涼の最後の言葉を聞いた時は泣いた。

 任と一緒に真っ赤な教室でひたすら泣いた。

 情けないとか女々しいとか思っている暇なかった。



 涼はクラスでいじめに合っていた。

 無視は勿論、物を隠されたり、階段から突き落とされそうになったり、体育倉庫に閉じ込められたり、氷水をかけられたりと。

 信じられないほど酷かったものだったらしい。


 クラスメイトの殆どがいじめに参加していた。

 同時に担任など教師陣もいじめに参加していた。

 本来守るべき存在なのに。

 親がいない涼にとって、教師は唯一の大人なのに。

 率先していたんだ、と涼から聞いた時、おれは何も言えなかった。



 だから戻ることを決意したようだ。

 クラスメイトも担任も、涼にいじめなんてしなければ。

 おれがこんな辛い思いも、涼が死にたいと絶望するまでもなかったっていうのに。

 おれは嗚咽を漏らしながら溢れんばかりの止まらない涙を流し続けた。



「任、行くんだろう?

弟のような人を増やさないために…」



 涼。

 今はゆっくり休め。

 今度生き返った時には、おれが幸せな世界を作っておいてやるから。

 それまでお前は今まで休めなかった分、静かに休んでおけ。



『スズ兄さん』


 生き返った時にはまた、その言葉を聞かせてくれ。







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