この世は可笑しい
スズside
おれはスズ。
切間涼の双子の兄。
戸籍上は兄じゃないけど、おれは涼にとっての兄。
涼は自分の両親を殺した。
自分が狂いそうで怖かったから。
だけどいざ殺すと、涼はガタガタ、手に血まみれのナイフを持って震えだした。
おれはその時に初めて、涼の体を乗っ取った。
乗っ取ったって言い方は可笑しいだろうけど、それが1番説明しやすい言い方。
それからおれは何かある度に、涼の体を乗っ取り、涼が苦しまないよう気を付けていたつもりだった。
涼が血の繋がっていない少年・仁を、家にあり余るほどあった金を使って買った家に連れてきた時は驚いた。
だけど仁は見るに耐えないほどボロボロで。
虐待やネグレクト(育児放棄)を受けていたであろうことは一目瞭然だった。
そして同時に。
家に来たのは仁だけじゃなかった。
仁が耐えられない虐待に耐えるために生んだ救済人格・任がいた。
おれと任は、弟を守りたい気持ちが一緒だったから、一気に仲良くなった。
涼の友人であり任の弟・仁とも仲良くなった。
確かに仁は、任の言う通り、純粋で真っ直ぐな子だと思った。
そんな子が虐待を受けていたなんて真実、受け入れたくなかった。
この世が可笑しいことは、涼の狂った親で薄々気がついていたけど。
仁と任に出会ったことで、再びそれを感じてしまった。




