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裏切らない味方




 電話をかけて数分後。

 切間涼がやってきた。

 

 どんな奴か知らない俺は、仁を傷つける存在かもしれないと、身構えた。

 だけど相手は、仁と年があまり変わらなそうな、思ったより普通の少年だった。


 だけど、瞳の奥に宿る炎は青く燃えていて。

 普通に見えて普通じゃない。

 異常なくせに、日常へ簡単に溶け込めるような奴だ。


 (しばら)く、仁の両親の死体をジッと見ている涼を見つめていると。

 ふう、と涼は溜息をついて、黒髪をクシャッとして、ニヤリと口元を上げながら俺を見た。


 …コイツ…この空間で…笑ってやがる。

 目の前に、2つもの死体があると言うのに。




「アンタ、任だっけ?

初めてお目にかかるな。


おれは涼の兄・スズだ」




 ニヤリ、と笑うその姿に、俺は確信した。


 このスズと言う人物は、確かに涼の兄だ。

 しかし、戸籍上の本当の兄ではない。

 俺と仁が双子のように。


 …コイツらも、多重人格者だ。




「初めましてだな…スズ、涼。

俺も改めて自己紹介すると、任だ。


…1つ、忠告しておくな。

俺の弟…仁を傷つけたら、許さねぇよ?」


「それはおれの台詞でもあるな。

涼を傷つけたら、ただじゃおかねぇから…」




 お互い、この世に存在しない兄だけど、弟を大事に思う気持ちはわかって。

 俺とスズは、すぐに仲良くなった。

 スズは業者に頼み、両親の死体も処理してくれた。


 流れで、仁と涼も仲良くなった。

 まだ弟たちは、俺たち兄を認めてはいないみたいだけど。


 絶対に裏切らない味方だとは、わかっているようだった。





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