20/27
弟を守る兄
任side
俺はずっと、弟のことを見ていた。
泣き叫んで、ひたすら助けを求める仁を。
同時に、その願いを聞き入れず、仁に優しくしない親。
憎かった。
だけど1番憎かったのは、誰かに助けてもらうことを心の奥底から望む弟を、ただ見るだけで助けてあげられない、俺自身だ。
いくら虐待に苦しむ仁が、自分を助けるために俺を呼び出したとしても、俺は仁の兄だ。
俺を生みだした弟を、俺は守り抜くと、決めた。
仁が両親を殺した時、俺はアイツの体を奪った。
ただでさえ幼い頃から精神的に不安定なんだ。
我に返った仁が死体を見たら、本当に壊れてしまう。
だから俺は、初めて表に出た。
目の前で、血を流しながら死んでいる屑ども。
コイツらが…弟をッ…!
気が付けば、俺は仁が台所から持ってきて両親を刺したナイフで、屑どもをメッタ刺しにしていた。
だけど、気が付いた時仁が傷つくのは、嫌だから。
俺は刺すのを止め、仁が少しだけど心を許している相手へ電話をかけた。




