表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
18/27

涼が仁に声をかけた理由

涼side



 オレの両親は、可笑しかった。


 父親はギャンブル依存症で、母親はアルコール中毒。

 殆ど家にいて、話しかければ無視され、時には罵られ殴られ蹴られた。

 オレは仁と違って、実の息子のはずなのに。


 オレはそんな毎日や、可笑しい両親の元で暮らすのに、耐えられなかった。

 狂った両親の元で暮らすのに恐怖を覚えた。

 オレを息子と思わず、人形のように扱う両親に、いつか殺されそうだと感じたから。

 …だから、殺した。

 後に殺人鬼として生きるオレの、最初の事件だった。


 家に金だけはあったから。

 死体を処理してくれる業者を見つけて、両親の死体を処分した。

 近所の人に何か言われたら、行方不明だと言っておいた。

 業者を雇っても余る金を使ってオレは、生きていた。


 ある雪の降る夜。

 オレは1人の少年に声をかけた。

 全身痣だらけで所々血が滲み、異様なほど痩せ細ったボロボロの少年。

 過去のオレと重なった。


 オレも両親に、まともな食事や衣服など与えられていなかったから。

 全て両親の金を使って生きていた。


 気づけば声をかけていた。

 その容姿に、もしやと思って名前を呼ぶと、予想通りだった。


 少年は、近所で虐待を受けているんじゃないかと噂されている家の息子だった。


 オレは少年に、自分の連絡先とコートを与えた。

 少しでも力になれるように。

 オレの時は誰も、力にも味方にもなってくれなかったから。



「ありがとう」



 そう少年―――田中仁は笑った。

 初めて見る、他人の笑顔。


 真っ直ぐで、澄んだそのふたつ目を守ろう。


 オレはそう誓っていた。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ