初めての味方
僕はお兄さんのコートを着て、自宅へと帰った。
帰りたくない、と思っていたけど、僕には味方がいるんだ。
何かあったら電話して、と番号も教えてもらった。
…僕は、1人じゃない。
「そんな高いコートどうしたのよ!?馬鹿!」
「万引きしてきたのか!?
どこまで貴様はクズなんだ!」
鍵がしまっていなくて入ると、両親に見つかった。
服飾関連の仕事に就いていたらしい母さんは、すぐにコートがブランド物だとわかったらしい。
父さんと一緒に、僕をいつものように、殴り蹴り始めた。
「殺してやるわ…アンタなんて…。
アンタが死んでも、誰も悲しまないもの……!」
母さんが僕の上に四つん這いになり、首を絞めてきた。
意識がどんどん遠のいていく。
僕は初めて、必死に抵抗した。
初めて味方となってくれたお兄さんに、再び会うために。
死んでなんて、いられない。
僕が抵抗するなんて思っていなかったらしい母さんは、アッサリ僕から離れた。
再び首に手がかかる前に、僕は急いで台所へ向かった。
そして子どもの僕でも手が届く位置に置かれていたモノを取って、母さんへ向けた。
「うああああああああッッ!!!!」




