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夢の子ども


遥カ遠クデ聞コエル、泣キ声。


怒リヲ浮カベタ大人タチ。


声ガ枯レテモ泣キ続ケル子ドモ。


…助ケテ。


助ケテ。


誰カ…助ケテ…。


届カナイ願イヲ今日モ子ドモハ願イ続ケル。







 僕は布団を真上へ上げるように、飛び起きた。

 汗で身体中はビッショリと濡れ、呼吸も荒い。

 苦しくて、何度も呼吸を繰り返すと、段々穏やかになって来た。


 …何だったの、今のは……。



「おはよう」



 上から降って来た声に顔を上げると、先輩がちゃぶ台の上にトーストを置きながら僕の方を見ていた。

 ぎこちなく挨拶を返し、僕はちびちびとトーストを齧っていた。



「…夢でも見たのか。

随分(うな)されていたぞ」


「す…すみません…。

何だか…暗い所で、小さな子ども…多分男の子だと思うんですけど…酷く泣いているんです。

近くに大人はいるのに、その子をまるで空気かのように扱って、気にも留めないんです」


「…………」


「その子はひたすら、助けてって言っているのに、大人たちは気にしないで…。

その上、怒ったような顔で、憎らしげにその子を見ているんです。

あんな大人も…いるんですかね?」



 でも所詮は夢の話。

 僕はふっと笑って、トーストに齧りつくと。

 黙って僕の話を聞いていた先輩が、持っていたお茶のはいったコップをちゃぶ台に置いた。



「仁が夢で見たというその子どもは…仁、お前だ」



 信じられないその言葉に、僕はトーストをお皿の上に落下させた。

 そして真っ直ぐ僕を見つめる先輩の目を、見た。

 真剣そうな先輩の目は、嘘を言っているようには聞こえなかった。



「なぁ仁。…そろそろ思い出せよ。

わかってんだろ?殺人鬼の正体……」


「せんぱ…い……?」



 何を言い出すんですか…。



「それとも…戻りたいのか?」



 先輩は立ち上がって僕の隣に腰かけると、耳元で囁いた。








「あの頃の…田中仁、に……」






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