三角形さんかっけー!
「三角形さんかっけー!」
「そうだろうそうだろう!」
興奮気味に弾む円と、癇に障る喋り方をする正三角形が会話していた。
「このとんがった頂点! いつ見てもクールっすね!」
「まぁ……なんていうの? 理不尽なこの社会に対しても尖り続けるぜ的な? 雰囲気を醸し出してるワケよ」
「三角形さんマジリスペクトっす!」
円はころころと三角形の周りを転がる。
「オイオイ、あんま近寄んなよ……どこから当たっても、等しい鋭さだぜ?」
「うおーっ! さすが正多角形家の一族!」
キラリと3つの頂点が光る。
円は角度を測るかのように、順番に角を巡る。
「それに俺っちは、内角の和が180だ。これが何を意味するか分かるか……?」
「いえ。何っすか!?」
三角形は無駄に溜めて言い放った。
「……数字界の最高峰、9で割るのが簡単だ!」
「すげぇーっ! あの9さんを使ってる上に、計算が苦手なちっちゃい子供にも優しいー!」
円のテンションがピークに達する。
あまりのはしゃぎ様に、形が歪んで楕円になった。
するとそこへ、台形が通りすがる。
「おっ。おい見ろよ円。ぶっさいくな台形のお通りだぜ~?」
「うわっ、ほんとっすね! バラバラな角度~!」
「…………」
台形は黙って彼らの真横を進んでいく。
と、その時おもむろに口を開いた。
「私は、円にも良い点があると思うのだが」
「「……へ?」」
「円く綺麗なフォルムで見る者を落ち着かせ、事実どこから触っても痛くない。中心からの距離が等しく、またあらゆる角度を内包している。円周角の生みの親にして、数々の定理の基礎となる存在でもある。さらに三角形よりも多くのシーンで円が利用され、社会に出ても雇用機会は尽きんだろう──」
台形は一旦言葉を切ると、1つの鈍角を光らせた。
「──証明終了」
円は惚れた。
「台形さぁああああああん!!」
凄まじいスピードで転がり飛びつく。
台形は辺で抱き止め、穏やかな声で語りかける。
「図形にはそれぞれの良さがある。一概にどれが一番とは決められないのだよ」
「台形さんっ……!」
再び歩き出した台形の後ろを、円がついていく。
「時代は台形さんっすよね! この様々な角がそれぞれの味を出してますっ! マジリスペクトっす!」
「ははは。先程の私の台詞は、無意識の内に自分を擁護していたのかな?」
「…………」
残された正三角形は途方に暮れる。
「……1:2:√3」
彼は自らを真っ二つにした。
物理の授業中、シュールの神様が降りてきました。
ちなみにVIXは根っからの文系です。