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海に沈む思い出

作者: 紗々イズム

私は放課後、屋上で寝転がっていた。が、気が付くと眠っていた。

目を覚ますと、空は夕暮れ特有の茜色と青色を混ぜたような紫がかった色をしていた。気の早い星は既に光り始めている。

その景色があまりにも綺麗だから私はしばらく寝転がって眺めていた。



波の音が聞こえる。ざざんざざんという波の音が。

ここら辺は山と田んぼしかないような土地だから、波の音なんて聞こえるはずがない。

不思議に思って体を起こすと、屋上以外の世界が海の底に沈んでいるのだった。校庭も校舎も商店街も公園も山も田んぼも。私の生まれ育った街は青い海の底に行ってしまった。


私は悲しくて泣いた。わんわん泣いた。私の思い出は水浸しになってしまったのだ。

泣いて泣いて泣いて泣いて泣いた。疲れて泣き止むころには屋上も水浸しで、涙の底に沈んでいた。


私は水の上にぷかぷか浮かぶ。水面は空の色を反射している。茜色と青色を混ぜたような紫がかった色。でも、沈みかけた夕陽が水面を優しい茜色に塗りつぶす。空も優しい茜色に塗られてく。

私は徐々に優しくなる空を見上げて、静かに目を閉じた。



私はどうやら夢を見ていたらしい。目を開くとそこに海なんてなくて、一筋の涙が頬を伝っているだけだった。でも空の色は夢の中と同じ。優しい茜色だった。


明日は卒業式。私は屋上を後にして家に帰る。

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