魔王の饗宴(後編)
エヴィレイは魔王の手を地面につけた。地面の形が歪み、迫り来る兵士たちを突き刺した。エヴィレイは針山から魔力を吸い上げた。魔術戦争は戦場が血に染まれば染まるほど激しさを増す。エヴィレイは人間の体に収まっているとはいえ、やはり魔人だった。魔力を残虐にして効率的に得ていた。エヴィレイの能力は創造。魔力に形質を与え、物質を生み出す。
彼は右手を天に掲げた。魔力が形となり、赤い斧槍となった。
「こっちの方がしっくりとくる」
彼は支給品の槍を投げ捨て、斧槍を構えた。兵士たちはもはや油断していなかった。槍を前方に突き出し、盾を構え、エヴィレイに迫ってきた。
「我が生み出せるのは物質だけではない。現象も作り出せるのだ!」
魔王が斧槍でなぎ払うと、旋風で盾や槍が吹き飛んだ。丸腰の兵士に魔王は非情なまでに攻撃をした。兜をかち割り、鎧を突き、馬から引きずりおろした。
「さすがに多勢に無勢だな」
エヴィレイが魔王の手で髪をかき上げると、今度は牛のような黒く毛深い獣たちが現れた。白い角が槍のように伸びた魔獣は突進しながら活路を開いた。
そこは魔界だった。この日、ロスヴェティ帝国の部隊はたった一人の戦士によって全滅した。




