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〜オルガ軍帝国〜恋じゃなく


何気なく、発された言葉にどれだけの想いが秘められているか、直子は知っていた。大佐は戦に自身の存在意義を見出している。そして、武功によって誰よりも敬愛してやまない“閣下”に忠誠を示す。


それを面白くないと、直子が思うようになったのはいつからだったか。微笑む大佐、飛鳥は、けれどいつだって空虚だ。感情が動くのは戦と大佐に関わる時だけ。直子を殺戮人形として可愛がり続けたのは飛鳥だというのに、彼はいつだって直子をその瞳に映さない。怒りと嫉妬はいつも彼女の奥で、たゆたっている。それを表に出すことはないけれど。


「いえ、残念ながら戦争にはならないかと。国は乱れ、まとまりを欠いた状態では戦うことも難しく、新王にはそれを束ねるだけの力も度胸もないとのこと。恐らく、新王は戦を避けるため、こちらの要求をのむでしょう」


淡々と告げれば、飛鳥はわざとらしくため息をついた。


「ミグナム、楽しみを奪わないでくれ」


「事実ですから」


「ああ、がっかりだな。リンバイドは狩猟を生業とし、男女問わず戦闘意識が高いと聞いていたのだが」


納得がいかないようで、飛鳥は眉をよせ、悔しそうな表情をする。拗ねる様は可愛らしいと、直子は心の中呟いた。


そうした拗ねていた飛鳥だが、急に微笑む。紳士の笑みだが、直子は嫌な予感がした。見ると、彼は嬉しそうに口を開く。


「明日が楽しみだ」


どうやら、明日の訓練、このいい笑顔の人は、手加減なんてするつもりはないらしい。


「死者を出さないでください」


せめて怪我人でとどめて欲しい。ああ、だが、血がでた時点で終わる。そう、思い言い直した。


「死者も血も出さずにお願いします」


飛鳥が困ったように笑う。


「至難の技だね。なら体術かな。なるべく血が出ない所を狙って」


体術でも、死ぬ可能性は多いにあるのだが、まあ、十分な譲歩だろう。今度は直子が深いため息をつく羽目になった。






* * *




「よう、ミグナム。今日もノーランと逢引か?若いっていいなぁ」


部屋を出て廊下を歩いていると、中年くらいの男が直子に声をかけてきた。無精髭と、盛り上がった筋肉、オールバックの髪が印象的だ。口の端を持ち上げ愉快そうなその表情からはハルト少尉とは違い、好意的なからかいが読み取れた。


直子は敬礼すると、男に答えた。


「ダンテ大佐こそ、先日は扇情的な女性を膝に乗せていましたね。十分、お若いんじゃないでしょうか。なにせ、職場に連れ込むほどですから」


微笑みを浮かべ見つめると、ダンテもますます愉快そうに唇の端を吊り上げる。


「正しくは連れ込んだじゃなく、押しかけてきただな。なあに、ちょいと、スキンシップをとったまで。膝に乗せて撫で繰りまわした以外何もいたしちゃいねえよ」


大きく前が開いた黒の総レースのベビードール。おまけに下はガーターベルト。そんな格好でダンテの首に手を回し、豊かな胸を押し付け艶やかに微笑んでいた女性。


撫で繰りまわしたという、扇情的な女性の格好を思い出し、眉をよせる直子に、ダンテは喉の奥を鳴らし笑った。


「言っとくが、俺の女じゃねえぞ。あれは噂のフランヌ嬢。“閣下の愛人”、“軍の毒婦”。お前も聞いたことあるだろ?」


フランヌ嬢。その名は直子も知っていた。軍内部をドレスやベビードール、ビスチェと言った、高級淫婦のような格好でねり歩き、飢えた男共に惜しげも無くその白い肌をさらすという女性。


異国を思わせる黒い艶やかな髪と、派手な顔立ち、情欲を誘うしなやかな体はどんな媚薬をも凌ぐという。


彼女の正体は、閣下の愛人とも、淫魔とも言われているが、定かではない。何故、軍人でもない彼女が自由に敷地を歩けるのかは謎だ。



「彼女、何者なんですか」


「さあ?何だろうな」


ダンテは意地の悪い笑みを浮かべる。この男、知っていて教えない腹積もりらしい。


「もう、結構です。それで?ダンテ大佐はわたしに用があったのでは?」


「ああ、一零七(ひとまるなな)についてだ。例の任務に使う資料をお前に渡しに来たんだ」







* * *



檻の奥、うずくまりこちらを見つめる少女。膝を抱えこんだ腕の下からは、白い羽が幾枚も生えている。目は暗闇の中、紅く光っている。


一零七(ひとまるなな)


呼べば、鎖を鳴らし寄ってきた。


「いい子ね」


何度も繰り返したその言葉を呟けば、意味は分からずとも一零七(ひとまるなな)は嬉しそうにする。


直子の任務はこの幻獣と意志の疎通を可能にする、もしくは一零七(ひとまるなな)の話す古語を解明すること。どういうわけか懐かれてしまって以来、畑違いにも直子にこの役目が命じられている。



「ノイ、レ・ヴィアンネ メルッサ 。 レ・ヴィアンネ ミヤ ワルト」


檻の中から直子に手をのばした一零七(ひとまるなな)が、なにやら嬉しそうに話し出す。直子は理解出来ず眉を寄せたが、一零七(ひとまるなな)が気にする素振りはない。


「エベ、アナ オ ワルテ」


その手を握ると、満足そうに、語るのをやめた。結局、今日も何を言っているか直子には分からなかった。この二週間発見できたのは、“ミヤ”は“わたし”、“アナ”が直子のことを指すということだけ。


手元の書類に目を落とした。先程ダンテから受け取ったものだ。題名は『精霊に関する史記 N.E』、『グレゴール神官の調査書』、『創世神話』の三つ。どれも、極秘のマークが付いている。こんな重要書類、あんなところで気軽に渡すもんじゃない。 直子は嘆息した。ふと、去り際にダンテが呟いた言葉を思い出す。



ーミグナム、側にいるのもいいけどな、俺たちは軍人だ。帝国が負けなしといえど、明日死んでもおかしくない。後悔、すんなよ。


ノーランのこと、好きなんだろ?


新しくきた若奥様なんかに渡すんじゃねえぞ。





「・・・・・・恋じゃ、ない」


重く激しいこの執着を、そんな淡く可愛らしいもので片付けられるものか。


「恋じゃない。わたしは・・・・・」



ー飛鳥さん、好きです。私の大切な旦那さま




「大佐、大嫌いよ。いつか殺してやる」







~(・・?))話、意味分からない


となっている方、すみません。意味不明箇所多いですよね。伏線はりまくっているので。


しかし、お待ちいただければ、


∑(゜Д゜) これか!!


と、すっきりくっきりなります。(たぶん)


そういえば、岩男の名前前回、出し忘れた!





お読み頂き感謝です!次回もぜひ覗いて欲しいっ。

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