1st day Ⅱ
「こんにちは、お兄さん」
「・・・・・・」
俺は話しかけられているのに口が動かせなかった。まるで少女に催眠術でもかけられているかのよう。
脳の訴えはすっかり無くなり、何も考えられなくなっていた。
「お兄さん?」
少女の声は聞こえているが、いや、そのために俺の脳が溶かされる。
そんな感覚。
そしてようやく元に戻る
「ん・・・ああ、こんにちは」
ようやく出た声もおそらく震えていただろう。何も怖いことなんて無い
何も恐ろしいことなんて無い。思い込め、そう思い込め
やっと落ち着いてきた。その間、少女はずっと待っていてくれた。
なぜかはわからないが、何も話さず、ただじっとして。
「そういえば、君はどうしてここに?」
「お兄さんと同じだよ。私も散歩」
な、なんだ・・・この違和感。さっきまでの感覚が戻ってくる。ずいぶん早い『ただいま』だ。
「な・・・なん・・・で・・・」
口をパクパクさせながらも言葉を発した。きっと端から見たらとても愚かな光景だろう。
だが、それが、俺に出来る唯一つのことだった。
「・・・・・・」
少女は何も答えない。俺の言葉が聞こえていないかのように。
さっき俺が落ち着くまで待ってくれた顔で俺を見つめる。
若干微笑んだような顔。身長差のために俺を見上げる少女の顔。
ここら辺から記憶が無くなり・・・。すぐに走って帰ったのか、もう少し話を続けてから帰ったのか。
気付いた時には自宅の玄関にいた。とてつもない疲労感。虚無感。
時間は家を出てから20分後。11時20分
漢字の間違い、明らかにおかしい表現などがありましたらすいません。
注意してくれると嬉しいです