4th day Ⅳ
じりじりと後退る。もう後ろは壁。それでも後ろに退こうと必死になる。
「逃げなくていいよ。怖くないからね」
絶対に騙されない。嘘だ、嫌だ。
高鳴る心臓は、まだ落ち着いてはくれない。冷や汗が流れる。
決して寒くは無いはずなのに、室温が下がっていくような感覚。
少女はゆっくりと近づいて、俺の目の前に立つ。ものすごい威圧感。
もう逃げられない。後ろは壁、しかも部屋の隅。
俺は逃げたいという心だけ、その一心で、少女に殴りかかった。
はずだった。
本来あるはずの軟らかい肉の感触は無く、腕は空を切ったようだった。
しかし、距離的に外すわけが無く、少女を貫通したことになる。
思いも寄らぬその感触にバランスを崩す。それでも、それでも勢いでリビングの扉にたどり着く。
急いで扉を開け、自室へと向かう。
息を荒げて階段を駆け上がる。そして自室の扉を開けると・・・
「遅かったね、お兄さん」
部屋の真ん中で座って、こちらを見て微笑んでそういう少女。
「な、何でいるんだよ!!」
そう言って扉を思い切り閉める。少女との関わりを断ち切るように。
何でいるんだ! 訳が分からない。どうして先回りできるんだよ。
階段を駆け下りながら考えた。
外に逃げればいいじゃないか。
なぜすぐに思いつかなかった。俺のバカ・・・
そうと決まれば玄関に急ぐ。急いで、急いで、外に出ようとする。
前よりもさらに勢いよく玄関の扉を開ける。
が、開かない。鍵もかかってないし、押しても引いても開けられない。
ただ、ガタガタと音を立てるだけ。
「何で! 何で開かないんだ!!」
「逃げようとしてもムダだよ」
後ろから少女の声。恐怖から必死で扉を開けようとする。
少女の足音が近づく。まだ、諦めずに開けようとする。
「私のモノだよ、お兄ちゃん」
そう耳元で囁かれる。甘く、とろける様な声。
少女が最後に「お兄さん」じゃなく「お兄ちゃん」
と呼んでるのは仕様です。