案内人のミオ
「ここは……どこ?」
目が覚めて辺りを見渡すと、霧に覆われて視界が悪い。
「……私、何してたんだっけ?
なんでこんなところにいるんだろう。……夢…かな?」
頭がぼんやりしている。
……よく思い出せない。
立ち上がって体を伸ばし、もう一度周りを見てみる。
とりあえず地面はしっかりしているし、危険な感じもしない。
少し歩いてみることにした。
ここがどこなのかわからないまま、しばらく歩いていると——
突然、風が吹いた。
その瞬間、霧がふっと晴れる。
一気に視界が光に包まれた。
眩しさに目を細めながら、ゆっくりと辺りを見渡す。
「うわぁ……すごい。
なんだここ……すごく綺麗。」
目の前には、神聖な光が森一面に差し込む景色が広がっていた。
泉の水面からは、光の粒子がキラキラと細かく煌めいている。
泉の中心には小さな小島があり、
人が住めそうな家も見える。
泉に近寄って覗き込むと、水が透き通っていて自分の顔が映った。
水面は波紋でゆらゆらと揺れている。
そっと手を入れてみると、
水はやわらかく、ひんやりとしていた。
両手ですくい、口に運ぶ。
「うっま!
え?……美味しすぎる……。
なにここ、天国?」
あまりの美味しさに、意識がはっきりしてくる。
それでも、目が覚める前のことは思い出せない。
「うーん……なんで思い出せないんだろう?
名前はわかるんだけどな……」
水の流れる音を聞きながら、しばらく考えてみた。
でも、やっぱり思い出せそうにない。
そのとき、
ふわりと甘い香りが鼻をかすめた。
木に実っている果実の香りだ。
とても美味しそう。
「……あのリンゴみたいなやつ、食べてみたいかも。」
背伸びをして手を伸ばす。
その瞬間——
静かだった泉に、穏やかな風が吹いた。
そして後ろから声がする。
「あれ、旅人さんですか?」
振り向くと、長い耳の美しい少女が
木の後ろから様子をうかがうようにこちらを見ていた。
「あ!すみません。
果実をひとついただこうかと思ってたんです。
美味しそうだったから……」
「はい、大丈夫ですよ。
ちょっと待ってね。」
少女は枝に手を伸ばした。
長い髪が風に揺れる。
艶のある綺麗な髪だった。
森に馴染んだワンピースも可愛らしい。
え?待って。
長い耳?
……エルフ?!
ここ、異世界なの?!
ふと、自分の状況を思い出す。
「って、あ、いや……
それより、ここってどこですか?」
テンパってしまった。
少女は枝から採ったリンゴを両手に持ち、
ゆっくりとこちらへ歩いてくる。
そして、差し出してくれた。
「え、良いんですか?」
「はい、どうぞ。
ここのリンゴは甘くて、ほっぺが落ちますよ。」
邪気のない、無垢な眼差し。
味を教えてくれるその姿に、思わず胸がきゅっとなる。
ちょっ……!
可愛すぎるんですけど……!
頭を撫でて、お礼を言いつつ抱きしめたい!
……が、引かれたくないので必死に衝動を抑える。
「ありがとうございます。
いただきます。」
早速、一口かじる。
「……っ!めっちゃ甘い!
甘いのに、果汁はすっきりしてる。
本当にほっぺが落ちそう。
ありがとう。」
少女は嬉しそうに微笑んだ。
「このリンゴを使ったお菓子もありますよ。
よろしければ、お茶と一緒にどうですか?」
初対面なのに、こんなに優しいなんて。
なにこの子。
本当は天使なの?
……私、死んだの?
「……良いんですか?
こんな見ず知らずの私なんかに親切にしていただいて。
……私、何も持ってなくて……」
「もちろんです。気にしないでください。」
少女は静かに微笑む。
「ここは、森の奥深くにある
『水鏡の泉』です。」
「この森で迷った人を、風がここへ連れてくるんです。」
「え、風が?」
「私は、ここの案内人です。」
少女はそう言って、小さくお辞儀をした。
「名前はミオ。」
「あなたの名前は?」
こうして出会ったエルフの少女のそばには、
金色の光に羽が生えた妖精が
ふわふわと浮かんでいた。
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