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私。川本みやはどこにでもいる……
引きこもりだった。
小学生の頃にクラスのいじめのターゲットにされた。
物は隠される。筆箱はゴミ箱に捨てられる。上履きはトイレの中へと捨てられる。教科書には落書きされる。
登下校で突然背中を蹴られて転んで、その様子を笑われる。
後ろから「ばか」「ぶす」とささやかれる。
授業中に、私の周りで一枚の紙がまわされてくすくすと笑われる。その紙はちらっと見えたが私への悪口であった。
どうして私はこんな目に遭うのだろう。
もう耐えられなかった。
そしてある日家から出られなくなった。
学校へ行こうとしても足が動かない。
ようやく親がいじめに気付いた。
学校に怒鳴り込み、放置していた教師が校長に叱責され、いじめっこと教師が私の家へと訪問して謝罪してきた。
「謝ったから、川本も謝ろうか」
教師の言葉に私は何も言えなかった。代わりに怒ったのは母だった。
私はますますひきこもった。
何かをする気になれなかった。
そんなある日、私のもとに友達がやってきた。
けいちゃん。
隣の家に住んでいた同い年の女の子。一緒の小学校へ通うと思っていたけど、親の転勤でいなくなってしまった。
そして私はいじめられて引きこもって。
小学校5年になる頃に再び隣に戻ってきた。
「みやちゃん、大変だったね」
いじめについて聞いたけいちゃんは泣いていた。それをみて私はぶわっと目頭が熱くなった。
「どうして一緒の小学校にいってくれなかったの。そうすれば私はひとりじゃなかった! 耐えられたのに!!」
私の怒りはけいちゃんへと向かった。
けいちゃんはじっとそれを聞いていた。
しばらくして私は青ざめた。
「違う……ごめん。ごめん。けいちゃんのせいじゃないのに」
自分の怒りは別の方へ向かうべきだ。それなのに、私は優しく何でも聞いてくれるけいちゃんの方へと向かった。
最低だ。最低な私。
「大丈夫だよ。大丈夫」
けいちゃんは私の手を握ってくれた。
あんなに酷いことを言ったのに、けいちゃんはそのままの私を受け入れてくれた。
私は相変わらず登校できなかったけど、けいちゃんがプリントを届けにやってきてくれた。
新しい担任は真面目な人で私のことで何度も訪問してくれた。色々と提案を考えて、ようやく保健室登校をしようという話になった。
「ほんの少しいるだけで良い。みんなが授業始まってからでも良いです」
それでも私は外にでることができなかった。このままじゃよくないとわかっている。わかっているのだけど、足が動かなった。学校へ行こうと思ってもベッドから起き上がれない。
「みやちゃん、プリント」
「ありがとう」
学校が終わってけいちゃんがプリントを届けてくれる。それから一緒に持ってきた宿題を一緒にした。
けいちゃんが一生懸命教えてくれたからドリルは何とかこなせていた。
「今日はお土産があるの」
けいちゃんはじゃーんと紙を取り出した。それには印刷されたもの。
文章が並んでいる。
「なにこれ」
「ネット小説だよ。最近アニメになったやつ。面白いの」
アニメ……そういえば不登校になってからみていないや。
読んだ小説は現実世界から異世界へとやってきた物語。何かしらの能力を得て、それで物語を進めていく。
「面白い」
「でしょ、でしょ。今度続きを持ってくるね」
けいちゃんは毎日プリントと宿題と一緒にネット小説のコピーを渡してくれた。
それが楽しくて私自身ネット小説を自分で探してみたいと思った。
父親の古いパソコンを使わせてもらって、それで色んな作品に触れていった。
「女子向けもあるんだ」
恋愛ジャンルもあり、私はそれを毎日のように読み漁った。
けいちゃんと感想を言い合って、絵を描いて。
小説の中に社交ダンスがあって私は気になった。
「どんな感じかな」
「そのテーマの映画があるよ。うちのママがDVD持っているから今度持ってくるね」
お古のパソコンでみる映画。内容の半分がまだ小学生でよくわからなかったけど、登場人物たちが面白くて、社交ダンスもすごくて魅せられた。
「すごいなぁ。私もやってみたい」
映画の中で、社交ダンスの講師が教えてくれる内容を一言一句メモにとる。動画を流しながらけいちゃんと一緒に練習した。
私が女役やったり、男役やったり交互に。
お互いの顔が合って、くすくすと笑った。
社交ダンスに興味があるというと母親が教室を探してくれて、けいちゃんと一緒に通った。
小学生が通うのが珍しいのか、周りの大人たちがあれこれと構ってきた。
気づけば、家の外を出れるようになり。学校の敷地に一歩入れるようになって、保健室登校ができるようになった。
何とか小学校は卒業できた。担任が色々と頑張ってくれた。けいちゃんが協力してくれた。
中学校にあがれば、いじめっこたちは別の学校にいっていて新しい環境の中私は一歩踏み出すことができた。
「ふぁあ」
大きくあくびをする。
「最近あくびすごいね。さてはネットを夜までしていたな」
けいちゃんのいう通りで私はぺろっと舌を出す。
「へへ」
今は言えないが、そのうち出来上がったら言うつもりだ。
実は私は今小説を書いている。
はまったネット小説で登録ができるようで、こっそり書いている。
小学校の時にはまって自分も書いてみたいと空想して中学になって形にしようとしている。
完成したらけいちゃん読んでくれるかな。
私が書いたと言えず、たまたま見つけた小説だとけいちゃんに読ませた。
『私のプリンセス物語』
これは私が書いた物語だった。




