プロローグ
かつて、バルベという国があった。
バルベの民と呼ばれた彼らの血には魔力が流れ、今日の人類と違い、魔石に頼らずとも魔法が使えた。
バルベの民は魔法で高度な文明を築き、周辺国にも魔法の技術を伝え、魔法と共に暮らしてきた。
しかしある日、発達しすぎた文明に男神アンロベが怒り、地上に災いが降り注いだ。
災いは国々を滅ぼし続け、沢山の生物が死に、植物が死に、地が死に、海が死んでいった。
人々を救うためバルべ国の賢者サニーが七日間天に向けて祈りを捧げ続けると、女神ファリーヌが自身の化身として天から聖女レインを遣わした。
賢者サニーと聖女レインは新たな国『ミラテ』を造り、生き残った数少ないバルベの民はミラテへ移住し、地上を離れた。
やがて、荒れ果てた地に新たな命が生まれ、長い年月をかけて今の世が造られた。
かつてバルベと呼ばれた国は今はカシュリア王国となり、災いは姿を変え魔物となった。
また悲劇が起きぬよう、女神ファリーヌは新たに生まれた人類の血から魔力を奪い、生まれながらに魔法が使えるのは楽園ミラテに住む者のみとなったのである。
楽園ミラテは今でも男神アンロベの目の届かぬ場所で、隠された魔術の数々と共にひっそりと存在し続けているという。
(カシュリア王国創世神話、バルベの章より抜粋)