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悠久とエテル  作者: aqri
番外編
96/107

モカの家族の絆 モカの体調不良

 戦いが終わり王都へのダガー辞職の交渉も終わった。いろいろあった日からかれこれ二ヶ月近くが経っている。学校の取りまとめもやらなければいけないが、新しく学校の設立をしても良いのではないかと思っていた。

 すべてを一度にやるのはさすがに手が回らない。まずは学校の組合の設立を最優先にということでモカは毎日忙しく働いている。


 モカの現在の立ち位置はどこにも属さない魔法使いだ。通常個人で活動するよりもどこかの組合や団体に所属したほうがメリットは多い。仕事がもらえるしいろいろな魔法の勉強もできる。結局魔法使いも派閥や忖度の世界で生きているので、完全な一匹狼では魔法使いとして生きていくのはかなり難しい。


 それでもモカの才能や実力を考えればどこにも所属できないのは無理のない話だ。モカは人が得られる知識の数段階飛び越えた遥か先の存在だ。

 ここでモカがみんなに知恵を授けてしまうと、何の努力もなく人は「変化」してしまう。思考力と思想、様々なものが追いつかない。一気に猿から人間に進化した位の不都合が生まれてしまう。


 どこかに所属していないことのメリットの一つは、定期的な出向がないことだ。何のためにやってるのかと思うくらい魔法使いはとにかく会議が好きだ。自分の魔法の自慢話、新しい魔法の情報共有。何か目的があって話し合っているというより、話し合うことが目的のようでなんだかなとモカは思っている。まるで貴族のお茶会のようだ。


 王都に留学していた時、飛び級の天才として。そして見目の良さからモカは目だった存在だった。是非ウチに所属を、という勧誘が毎日のようにあってうんざりしてしまったので、そういう誘いはすべて断っている。

 そうして王都での学校も主席で卒業し、モカはさっさと母校に戻ってきた。この学校の修学期間は五年、アリスは教師になっている。魔法を使って人を幸せにしたいと言っていたが、子供たちに魔法を教えることこそが幸せの近道なんじゃないかということだった。


 もちろん獣人は魔力が低いので多少嫌味などはある。魔法が使えない魔法使いに教わることとは? と都心部からは笑われるらしいが、この近辺でそれを言う人はあまりいない。持ち前の明るさと人懐っこさ、子供たちの扱いに慣れていることから生徒からはもちろん。保護者たちからも人気は高い。

 全くの無職というわけにもいかないのでモカも非常勤で教師の仕事をしている。教員免許はとっくに取っているし、通常の勉強であれば教えるのには問題がない。それに子供は好きだ。といってもモカも十五歳なので本来なら子供の部類なのだが。


 いろいろな予定を詰め込みすぎてあっという間の二ヶ月だった。十五歳の誕生日当日に戦いに行ってしまったので、誕生日祝いもやっていなかった。

 毎年誕生日は家に帰って家族で誕生日祝いをしていた。そのため今年はできなかったから家族からは「適当なところで一度帰ってきなさい、お誕生日祝いしよう」と手紙が来ていた。

 そのため学校でなくてもできる仕事を持ち帰って今自分の自宅にいる。誕生日祝いに仕事持って帰ってこないでよと姉達からは呆れられたが。


 モカが帰った日の夜盛大な宴会が行われた。小さな村なので家族はもちろん村のみんなもお祝いに駆けつける。ただ単に宴会をやりたいだけのような気もするが、この村で数少ない男子であるモカの誕生日だ。子供の誕生祝いは盛大にやりたいと言うのがこの村の考え方だ。

 特別な子が産まれる家系なのは昔からの付き合いで皆知っている。特別扱いせず、普通に接して来てくれた優しい人たちばかり。


 一晩ぐっすり寝て。さて、今日は朝からあれをやってこれをやってと考えながらベッドから起き上がろうとした時だった


「!?」


 足に激痛が走り起き上がることができずその場にうずくまってしまう。


「いっ、たあ」


 経験したことのない痛み。アリスと体術の修行をしていた時もこんな筋肉痛になった事は無い。しかも痛むのは膝あたり、関節だ。


(この間の戦いでかなり無茶な魔法の使い方をした。体に影響が出たのかな?)


 いずれにせよかなりの痛みなのでこれでは歩くこともままならない。昔からモカ早起きなので、朝食の時間になっても起きて来なければ誰かが様子を見に来るはずだ。それまでに治るだろうかと膝をさする。

 しかし痛みは治まることなく、寝坊なんて珍しいねと二つ上の姉が呼びに来た。そして事情説明すると、どうしたどうしたと他の家族もみんな駆けつける。


「お、伯父さん呼んでくる!」

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