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悠久とエテル  作者: aqri
本編
9/107

ロジクス2 ロジクスの能力

「三年の優等生様が目をつけてるみたいだから、周りには充分気を付けろよ?」

「誰に言ってんだよ」


 自信満々のロジクスはニヤリと笑う。悪知恵はトータ以上だ、それもそのはず裏稼業の出身である。

 他者に明かしたことはないが、ロジクスには特技が一つあった。それは親から受け継いだ能力だ。まるで役に立たないと思っていたが、学校生活の中では割と有意義に使わせてもらっている。

 成績を上げるためには役に立たないが、こそこそと隠れて何かをするときは最大限にその能力を発揮する特殊な力。人の影に意識をうつすことができる。


 影からはその周辺にいる会話を聞くことはもちろん、風景も見ることができる。意識を盗りたい影がある場合、その人の姿を見ればどれだけ遠くに離れていてもその人の声が聞こえるのだ。そのため視力が悪くならなければかなり遠くの人の会話が聞くことができる。


 どうやら魔法というよりは魔法の力が体に何らかの作用を与えているらしい。自分の家では代々受け継がれていて、他人には絶対に明かさないようにしている。

 そのためロジクスの家は情報収集や少し危ない仕事をやって富を稼いできた。裏では有名な家系なのだ、金次第で危険なことをやってくれると。主に商人たちから、流通や商売敵の弱みを握るための情報収集を依頼される。魔法学校に入れたのはそういった稼ぎから金を捻出してくれたからだ。


 魔法の力が強まればもっと上まで、それこそ貴族などに取り入れることができるかもしれないからという期待もあってのこと。親からそういう目的で魔法学校へ行けと命令されてしぶしぶ入学した。

 親に反して立派な魔法使いになるのも面白いか、と思って胸を躍らせたのは入学して一か月くらいだった。今では立派にひねくれている。


「半信半疑、というよりもほとんど信じちゃいないが。もし本当に魔術が隠されてるんだったらこれほど面白いネタは無い。実際にそんなものがなかったとしても、お姫様に近づけるのは収穫がでかそうだからな」


 一年生はイベントのルールを説明された。この学校内の敷地内に何カ所も宝が隠されている。それは魔法で隠されているらしい。単に魔法を感じ取る能力だけではなく、謎解き要素などもあって協力しなければ見つけることができないという。

 上級生がヒントを与えてくれるが、各自一回しか教えてもらえない。つまりチームのメンバーが多ければヒントをたくさん集められるということだ。


「さすがに二人ではちょっともらえるヒントが少ないなあ。他の人も探さないと」


 そう言ってキョロキョロあたりを見渡すがもうほとんどが数人のチームを作ってしまっている。美少女であるエテルに声をかけようとそわそわしている者もいるようだが、なぜか遠巻きに見るだけでみんな近寄ってこない。

 それもそのはず、あまり他人を信用していないエテルが他の人に冷たい視線を送っているからだ。


「そんな顔してたら仲間が増えないよ?」

「……」


 エテルが声をかけてきた相手に目を向けると、緑のローブを羽織っているので三年生だということがわかる。入学した年によってもらえるローブの色が異なり、色によって学年がわかるようになっているのだ。


「少人数だから不利になるということにはならないけど。目的は交流だからいろんな人に声をかけてみると良い」

「……」

「分りました!」


 返事をしないエテルに代わって元気よく返事をした。そしてエテルの手をつかむとそのままどこかに走りだす。

 その様子を見て苦笑する。思っていた以上に手強かった。冷めた目つきと同時にまるで道端の石ころでも見るかのような全く興味がないという顔。


「まいったな、仲間に引っ張り込むのは至難の業だ」


 そんな様子をロジクスは遠くから冷めた目で見ていた。会話は影から聞いていた。

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