悠久【Eternal】ここから始まる物語
「魔法学校に入学おめでとう。ここは貴族とかお金持ちが通う学校ではない。平民やドジっ子、何なら頭が悪かったり。割とダメな子供たちが集まるおバカの学校だよ」
校長のそんな話にもふてくされる子供だといない。だってそれは事実だからだ。そんな不幸な話さえネタにしてもらい飛ばせる。それを平民の子供たちは既に身に付けている。
「ようこそシュードマリス魔法学校に。教師一同、在校生も皆さんを大歓迎します」
校長のモカ・シュードマリスの元気な挨拶とともに、魔法で作られた白い鳥が一斉に飛び立つ。その光景に新入生たちはワッと沸き立った。
「校長先生、若いねー! すっごい奇麗な人だけど男の人、だよね?」
「まだ十八歳だって。でも七歳で王都の魔法学校に編入して飛び級卒業までしちゃったらしいよ」
「魔法学校組合作った凄い人なんだってさ! 王立魔法騎士団からの引き抜きも全部蹴ってここの理事長やってるって。定期視察、って名目でまだスカウトくるらしいよ」
「じゃあ王都の人もちょこちょこくるの!? やった、私たちもアピールするチャンスじゃん!」
「マジで、ちょーすげえ! エリート中のエリートなのに、こんな田舎で学校やるんだなあ」
「だからこそありがたいよ。親も金もない僕らが魔法学校に入れるなんて夢みたいじゃない。年齢制限ないし」
ひそひそと話す一年生たち。その中にひときわ目立つ美少女が一人。周囲はそわそわして声を掛けたい雰囲気だが、氷のように冷たい空気なので話しかけられずにいた。しかも見た目が校長にそっくりなので妹かな? と聞こえてくる。
「そこのカーノジョ」
校長が指さしたのは、その少女だ。突然自分が指さされると思っていなかったので目を丸くする。
「トモダチをたくさん作ってね。まずその第一号は僕ってことで」
「え、あ、へ?」
壇上からぽーんと飛び出して浮遊魔法でゆっくりと少女の前に立つ。
「えっと、あの」
「よろしくね、エテル」
「え? なんで私の名前……」
「戦争は当面起きないよ。王位継承した御方は聡明だ。内部改革に乗り出してる、僕も今後は陛下に協力していくから。絶対に大丈夫」
何の話かさっぱりわからないが、「戦争は起きない」という言葉に。この人の「大丈夫」という言葉に。何故か少しほっとした、気がした。
「学校生活を楽しんでね。思いっきり」
「ええっと。あの……は、い」
今度の君の物語は、どんな話になるのだろう。
君の実家には勝手に鍵をつけてしまったから、君はとうぶん戻れないけど。
戻れないから、「退屈凌ぎの面白さ」を求めた無茶なんてしなくていいんだ。子供はいつか家を出て独立するのだから。
君の物語を、君が自分で見つけ続けていい。とっても幸せで、楽しくて、アレが羨ましがってまた拗ねてしまうような。
そんな光り輝く、eternity(悠久)の物語を。
差し出された手。少し戸惑いながら、ほんの少し恥ずかしさを覚えながら。
エテルは、その手を握り返した。
「僕は君にたくさんのものをもらったから。たくさん返すよ」
「心当たりないですけど。なにを? 何を、私に?」
わずかにドキドキしながら尋ねる。なんだか、自分の欲しい答えをくれそうだから。
「目一杯の友情を、君に」
「なにそれ、バカみたい。馬鹿馬鹿しくってとっても素敵!」
end
否。
ここから始まる。
始まり始まり!




