最終章 ラムたちの真実
「お前は長生きしすぎて年数を数えるのがあまりにも大雑把だ。百年単位くらいでしか数えてないんだろう。ロジクスとラムの年代差が三十年も離れていないうえ、違う魔法学校だったから親子の可能性に気づくことさえできなかった。ラムはすぐに養子に出されて、母であるエテルはお前の所に報告に行ってまた記憶を消されて再利用された。そうやって二人が出会ったわけだ」
ロジクスが通っていた学校は商人等が住む都市部から少し離れた郊外だ。そしてラムが通っていたのは王都近くにある優秀な生徒だけが入れる特別な学校。ここの卒業者はそのまま王立魔法学校に入学が決まっている。そのまま国に仕える魔法使いになるためのエリートコース。
ロジクスはその学校の教員になっていた。トータの痕跡が、当時魔法協会が運営していたその学校にあったからだ。
ロジクスとエテルはそれぞれ詳細な手記を残していた。自分たちの身にいずれ危険が及ぶであろうことを予想して、何か伝えられる事は無いかと記録を残していたのだ。
「この世にエテルは一人だった。でもエテルの魂と血を受け継ぐものが根付き始めた。これも知らないだろ、ラムには子供がいた」
「はあ!?」
「あの地下の出来事は学校生活での出来事だとでも思ったのか。ロジクスの時と同じ、数年経ってる。最後は彼が二十一歳の時の話だ。そしてラムの妻は当然エテルのわけがない。エテルは身篭れないしこのときのエテルは魂の研究なんてしていないから」
エテルが妻ではない。それなら妻となる女は一人しかいない。
「まさか、シャロン!? だってこの二人が恋愛関係になるなんてありえないでしょ!?」
「なんで? 喧嘩した程度で人間関係が壊れると思ってるわけか。頭でっかちの考えそうなことだ。喧嘩をするから相手の理解を深める、より親密になれるんだろう。彼らは話し合いをしてきていたよ。シャロンの日記が残ってる」
まるで二人の仲がこじれたかのように、シャロンが嫉妬に狂ってエテルやラムを陥れたかのように勘違いするように話した。しかし嘘は言っていない、エテルはエテルが見聞きしてきたことをそのまま話しただけだ。
「ラムとシャロンの父親は対立してたじゃない!」
「対立していると見せかけた方が協会の人間を扱いやすかった。そういう演技をしようとみんなで協力してただけだ」
理事長は非道な人間などではなかった、強大な力の存在に気づき、協会本部に渡さないためにたった一人で戦い続けてきただけだ。
それは娘を危険に合わせないためと、大切な生徒を争いに巻き込まないためにすべて一人背負い込んだに過ぎない。
それがよくわかるエピソードがきちんと残っている。シャロンが教師たちに脅される前、泣きながら家に帰った日の夕方のことだ。
「俺の娘を泣かせたクソ野郎はどこのどいつだああ!」
「やめてよお父様! ほんとに恥ずかしいから!」
怒りで顔を真っ赤に染めた理事長と、恥ずかしさから顔を真っ赤にしているシャロン。さすがに言いすぎたと後悔していたラムは、どうやってシャロンに謝ろうかなと考えていた。
エテルとの会話も生返事、授業も身に入っていない様子。「花束持って土下座でもしてきてよ、めんどくさい人ね」とエテルから嫌味を言われているときに理事長が殴り込みに来たのだ。
どんなことも冷静に対処できるラムでも、予想斜め上の光景にぽかんとしている。何せ放課後に学校に乗り込んできたので在校生もまだその場にいる。みんな呆気とられて身動きできない様子だ。
「あ、僕です」
思わず手を挙げていた。その様子を見て我慢できないといった様子でエテルが「ぶ!」と吹き出して笑っている。
「最優秀生徒をこの手で葬らなければいけないとは非常に残念だなぁ! 墓に刻みたい言葉を聞いてやるぞクソガキャアア!」
「えー、じゃあ『親馬鹿はほどほどに』で」
「上等だ表出ろ!」
理事長の実力は確かだ、その場にいる生徒が怯えるくらいには魔力の高さがわかる。しかも怒りでフルマックス状態である。それでもラムは平然としていた。
「すみませんが、僕が勝つと思うのでやめた方がいいですよ。僕の方が強いです」
「よく言った小僧、骨まで焼く!『炎獄』の二つ名を思い知れ!」
「炎獄、聞いたことありますよ。内紛の時一瞬で三つの部隊焼き払ったんですよね。さようならラム先輩、お墓参りは面倒なので行きません」
「やかましい、僕が負けるわけないだろ」
「ケツの青いガキが、口の利き方叩き直してから死ね!」
「それならこのクソ生意気な後輩も一緒にお願いします」
「は? 私関係ないじゃないですか。まあ私もおっさん一人に負ける気はしないです。引っ込んでていいですよ先輩、邪魔です。私の闇魔法と相性悪すぎますからあなた」




