”8”
「ああ、ちょっと待って。いつもだったらあなたの話を聞くんだけど。ちょっと事情があってね、今回は私からあなたに話してあげる。莫大な数のエテルの物語」
「莫大?」
「あなたがここに来るのはもう数えるのもばかばかしいくらい。当然ね、ここに来るたび記憶を消して放り出してるから」
「……」
「一回報告して終わりじゃあ私の退屈はしのげないのよ。話を聞いて次の話を探しに行かせていただけ。大量生産してもよかったんだけど、使い回してる方が面白かったの。だってたまに私の欠片に触れてもいないのに理解する時があったからね」
魔術の欠片、それはコレの欠片。それを追い求めていた。それに触れた時初めてエテルは自分の役割を理解する。エテルが求めるよう、欠片を無数に散りばめているのだ。
「前回はもうひどかったのよ、つまらないったらないわ。だから今からあなたに私が今まで面白かった話を教えてあげるから聞きなさい。それを踏まえてあなたの話を聞くわ、つまらなかったらお仕置きだからね?」
少女は笑う。少女の姿形をしているが人ではない、生き物ですらない。それでも本当に純真無垢で無邪気な子供のように、くすくすと笑う。
「私はすごく退屈なの。だから楽しい話が聞きたい。退屈すぎてもう何もかもやり尽くしちゃった。だからね、小さな一つ一つの物語はとても興味があるの。例えばそうね。あなたにも教えてあげる、ある物語。魔法学校で起きた悲劇と喜劇。ある一人の少女を巡って起きた慈しむ愚かな物語。とても面白いからあなたも気に入る」
彼女は語る、長い長いエテルの物語を。




