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悠久とエテル  作者: aqri
本編
65/107

モカ7 エテルの心配な噂

 武闘大会まであとわずかとなった。エテルは優秀な生徒として有名になっている。期待の一年、から将来を約束されたお姫様、とまで言われている。教師や三年生との屋外活動などに積極的に参加している、一年の授業のレベルではないからだ。


「エテルってこのまま二年生になっちゃうのかな?」


 しょんぼりした様子のモカに、ダガーたちも眉を下げる。最近エテルは一年の授業にあまり参加していないのだ。受けなくても問題ない、と判断されたものは免除となっている。

 触っていいぞとダガーから言われて、モカは最近はダガーの尻尾をずっとモフモフしている。これをやっているときは癒されたい時だとわかる。


「友達一号としてはひじょーじたいなのだ」


 うー、と拗ねた様子のモカ。何とかエテルに話しかけようと日々あちこち走り回っているが、絶妙なタイミングでうまく会えないようだ。


「全然一緒にいられないもんね」


 アリスがよしよし、とモカの頭を撫でる。


「お昼ご飯も一緒に食べられないなんて。焼きたてのパンがあんなに美味しいのに」

「ジャムは三年生の手作りらしいよ」

「三年といえば。聞いた? 三年の話」

「なに?」


 ダガーに話を振られてモカは首を傾げる。


「あんまりいい話じゃないけど。三年の女の子と、学年長の先生が密会してたらしいよ」

「み?」

「こそっと会ってるってこと」

「居残り?」


 きょとんとするモカに、ダガーも流石に悩む。要は逢引してるという噂だ。ダガーとしては人の色恋沙汰や噂話はあまり好きではないのだが。ここにエテルが関わるのだ。エテルの事は耳に入れておいた方が良いだろうと思ってなんとなく言ったのだが、やっぱり言わなくてもよかったかなぁと後悔する。


「あ、エテル!」


 中庭にエテルを見つけてモカは飛び出して行った。上級生と一緒なので、あまり雑談する暇はなさそうだが。寂しがっていたので好きにさせようと追わずに教室に残る。


「さっきの話、アレでしょ。その女の子と仲良かった男子がエテルと仲良しになったもんだから、色恋沙汰で揉めたとかなんとか」

「そ。そっから先生と一緒にいる目撃増えたらしいんだけど。どうも、その女子からエテル嫌がらせ受けてるみたいだ」

「そうなの?」

「訓練相手、三年なんだよ俺。そこから聞いた」


 ダガーは一年代表に選ばれ、今上級生と大会のために訓練の毎日だ。そんな中聞いた気になる噂だった。


「その三年が先生に色目使ってんじゃないかって話まで出てるみたいだ。私どうしたら、みたいな話を聞いたって人もいるし。まあそれはいいとして、エテルが最近俺らを避けてるのそれが原因かなって」


 モカには黙っているが、エテルはあえて皆と鉢合わせしないようにしている節があった。忙しいだけじゃないのでは、と思っていたところにその噂だ。


「アタシらに迷惑かかるかもって? なんでよ?」

「その女子、父親がお偉いさんらしいよ。彼女に目つけられると学生生活に支障でたら大変って思ったのかもな」

「気にすることないのにね。アタシら守るもの少ないし、なんかされてもやり返せるし。それに」


 笑いながら外を見る。モカがエテルにしがみついてきゃーきゃー騒ぎが起きていた。上級生が苦笑いしながら引き剥がす。僕もいく! と聞こえる。


「モカにそういうの、無駄だって。止まらないもんね」

「言えてる」




「だからモカ、一緒には行けないの。大切な調査だから」

「地下は僕もザワザワしたの感じてるー!」

「その話、詳しく聞かせてくれる?」


 三年生に言われてモカは説明した。ザワザワする、とかお祭りみたいだとか。若干わかりにくい表現はあったが、エテルが助け舟を出す形で解説する。


「違和感を抱く生徒が他にもいるのか、ちょっと先生と相談だ」


 そういうと足早に立ち去る。エテルはモカが地下に同行することになるのでは、と心配そうだ。


「大丈夫だよ! 先生も先輩もいるし!」

「あ、えっと。なんか危なそうだし……」

「エテル、危ないことしてたの!?」

「あ」


 しまった、という顔をしたのをモカは見逃さなかった。


「ずるい僕も行くー!」

「あ、モカ!」


 走り出したモカ、しかもものすごく足が速い。


「おい!?」

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