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悠久とエテル  作者: aqri
本編
63/107

ラム5 魔法を打ち消す魔法

「完全に納得したという感じではなかったですけど。とりあえず他の同級生も一緒なので勝手な行動はしないと思います」


 そんな説明をすれば、ラムは思い出したように言った。


「そういえば毎年恒例の武術大会もあったね。そっちもわりと盛り上がってお祭り騒ぎになるから、そっちに意識がいってもらえると助かるんだけど」

「では、もしも今日調査が難航したら大会の日に合わせて本格調査をしようか。人の目がそちらにむいている方が動きやすい」


 全員でうなずき合って万全の準備をしてから時計塔の中に入った。デリーが特殊な鍵の解除をすると、ある程度仕掛けが動いて地下に繋がる階段が現れる。時計塔は戦争で使われる目的だったので地下に行くためのルートはいくつか存在する。目的に応じて地下の複数の場所に行けるようになっているのだ。

 その中でも一番簡単に地下に行くルート、おそらく避難場所として使われる予定だったであろう場所まで四人は降りて行った。

 そうしてたどり着いた場所はラムを含めて優秀な生徒が施したいくつかの魔法が存在する。前に来た時から妙な感じだったが、なんだか。


「前に来た時よりおかしな感じが強くなっている気がします」

「私も、ちょっと説明しづらいんですけど。なんだか胸がざわざわする」


 二人の言葉に教師二人は顔を見合わせた。どうやら彼らは何も感じないらしい。


「光属性と闇属性が得意な二人がそう言うのだったら、この二つの属性が関わっている可能性が高い」


 エテルが闇属性の魔法を使ってあたりを調べる。


「霊魂の類はないようです、命の気配がない。でも、確かにこのさらに下に空間はあるみたいです」

「僕も調べてみよう」


 ラムが別の魔法を使った。それは教師たちも見覚えのないものだ。


「ラム君、それは?」

「気流を調べるものです。去年屋外活動に行った時、山の麓で妙な匂いがするという騒ぎがあったんです。その時考えられたのは火山活動、硫黄の匂いではないかと思ったので。酸素の割合などを調べるために作りました」


 三年生ともなれば自分のオリジナルの魔法を作る事は確かにできる。しかしそれは攻撃魔法だったり、薬を調合するという授業の延長線にあるものばかりだ。空気中の各成分の濃度を調べるなど、学者でもない限り思いつきもしないしない。正直この魔法の特許をとればそれなりに稼げる内容でもある。学生である彼はそんなことに全く興味がないようだ。

 しばらく探っていたラムだったが、少し険しい表情となる。


「ここから大体建物五階分ぐらい下の方。かなり広い空間があるみたいです。時計塔の敷地より広いのでこの学校内そのものに巨大な地下空間があるみたいですね。しかしその空間そのものを調べることはできませんでした」

「なぜ?」

「結界では無いのですが、やはり魔法を使おうとすると邪魔されます。邪魔、というよりも。魔法が打ち消されてしまう感じです」


 なぜかその空間では魔法が使うことができない。魔方陣がスウっと溶けるような感覚だ。仕方ないので探りが入れられるギリギリの範囲でぐるりと回って外周を調べたらしい。とんでもない集中力だ。

 それを聞いてエテルはもちろん教師二人も同じように探査用の魔法を使ってみたがやはり同じだった。普通魔法が打ち消されるとなると、逆の属性によるもの。或いは同じ属性でもっと強力なものをぶつけて強制的に粉々にする。陶器が砕けるような、何かが爆発するようなそんな感覚だ。

 エテルの入学イベントの時の出来事がそれに値する。しかしまるで氷が溶けるようにすっと消えてなくなってしまう。こんな事は初めてだ。


「属性関係なくすべての魔法を打ち消す魔法、か」


 そんな魔法は聞いたことがない。あったら大変なことだ、歴史が大きく動く。チラリとデリーたちを見れば演技ではなく本気で悩んでいるようだ。


(町で聞いた魔法の効果が打ち消されるもの。彼らはまだそれを知らない。やっぱり幽霊騒ぎと町の出来事は無関係なんだ)


 教師たちに気づかれないようにチラリとエテルを見れば、彼女も小さくうなずいた。


(町で起きていることがここでも起きている? いや違うな、順番が逆だ。そんな地下奥深くにあるのならもっと昔からあった。むしろ町で起きていることの方が、被害が拡大していると考えるべきだ)


「地下に空間があるのなら必ずそこに続く階段があるはずです、協力して探しましょう。幸いここではまだ魔法が通用しますし」


 エテルが探査用の魔法を使おうとしたが、ラムがそれを手で制して止めた。


「いや、作ったほうが早い」

「つくる?」


 意味がわからないと言った様子のエテルはラムの動きをそのまま見つめる。教師たちも再び目を丸くして驚いているようだ。


「建造物は土属性だ。全体の水分量を調節して空気の流れを変えれば、組み換えができる」

「できる、って。簡単に言いますけど、それものすごく大変なのでは」

「山とか自然のものはすごく大変だよ。でも建築物は必ずレンガや石が規則正しく並んでいるはずだ。パズルを組み替えるだけだからやりやすい」

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