表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
悠久とエテル  作者: aqri
本編
57/107

ラム4 理事長の悪行

「審問会は国の組織だから、協会や学校などどちらかに肩入れせず平等に物事を審査する。主に権力者の重罪が対象だ。ここが動くときは、罪がほぼ確定してる時」


 二人の会話に校長が口を開いた。


「理事長は権力を使って我々教師の私生活まで干渉してきた。監視され、不要なことまで報告義務をか課していた。町に買い物に行くのも都度許可が必要だったんだよ。家族に会うのも許可、となった時教師の不満が爆発したんだ。だから我ら教師だけで協力組織を作った」


 それが協会本部とつながっているわけだが、そんなことは一言も言わない。これだけ聞けば、ラムとエテルには理事長が酷い人物で教師たちは協力して立ち上がったという風に聞こえる。


「シャロン、父上の行動知ってた?」

「知らない!」


 その場にいる全員から、ラムからも真顔で見つめられシャロンは必死だ。今彼女の味方はこの場にいない。


「そうだろうなあ。知ってたら恥ずかしげもなく我々に命令できやしない。もう少し自分の立場をわきまえろ。君は権力者の娘だが、君に権力があるわけではないだろう。しかも自分の父が何をしているのも知らずに素っ頓狂な事を言う。裸で歩いているくらいに恥ずかしいな、普段ふんぞり返っているからなおさら痛々しい」


 は、と鼻で笑いながら言ったのはブライアンだ。以前からシャロンへの小さな嫌味が多かった。権力者のお嬢様という立場が嫌いなんだと、堂々と仲の良い生徒と話して隠そうともしなかったくらいだ。


「我ら教師はね、生徒の未来の為に存在する。理事長やその娘の奴隷なわけじゃない。駆け引きをしたいなら同じ舞台に上がるところからだ。君は観客席で野次を飛ばしているに過ぎん、恥を知れ」

「それにしても、自分は来ないで娘を伝書鳩がわりにするとは。大切な要件一つ言いに来ることもできないんですか。つくづく信頼に値しませんね、理事長って」

「今頃悪巧みの最中なのだろう。自分には権力があるからどうにでもなると思っているのだな、愚かな事だ。さすが親子だな、そっくりだ」

「それ、一応生徒の前でいうのは控えてもらえますか」


 苦笑したラムがそういうとブライアンと校長は「失礼」と軽く笑う。エテルは何も表情が動かず完全にシャロン一人が針の筵にいる。デリーが無表情のまま淡々とシャロンに告げる。


「お父上に審問会にピクニックに行く準備をしておけ、と言っておきたまえ。それにこちらの事情も切羽詰まっていてね。君ら親子の戯言を聞いているほど暇じゃない」

「何かあったんですか?」

「ラム君の耳にはまだ届いていないだろうね。私もついさっき聞いた。霊の幽霊騒ぎ、地上で見たという話が出たよ」

「え?」


 それは本当に寝耳に水だ、シャロンも同じだったようで目を見開いている。


「今朝、それも明け方前だ。二年生が早起きして魔法の修練をしようと自習室に行ったら見たそうだ」

「本人は寝ぼけていたと思って気にしていなかったんだよ。霊騒ぎもこの二年生は知らなかったから報告が遅れたようだ。私が彼らの談笑を聞いて初めて公になったくらいだ」


 デリーに続いてブライアンが説明した。ブライアンは二年の担任教師だ、ブライアンからデリーに報告がいったらしい。


「もしこの幽霊が凶悪な存在だったら? ずっと地下に封印されていて、一年が肝試しに行ったから封印が解かれてしたら? それこそ魂を奪われたり死者が出る騒ぎになったら、君が責任を取ってくれるのかねシャロン君」

「そ……」

「死んだ人間の責任を、どうやってとる。生き返らせてくれるのか」


 今にも泣きそうな顔になってきたシャロン。校長も含め教師らはまだ気が収まらないようだが、ラムが声を挟む。


「先生、個人的な感情はそこまででお願いします。シャロンに文句を言っても解決しませんよ」

「ちょっと意地悪だったね。すまない、娘であり何も知らない無知な彼女は関係なかったな」


(しっかり嫌味を挟んでいるあたりまだいじめたりないみたいだけど。さっきの話が本当ならそれどころじゃない)


「時間が惜しいです、ひとまず時計塔へ行きましょう。幽霊なら夜が本領発揮です、明るいうちにできることをやりたいです」

「うむ」


 そこでずっと黙っていたエテルも口を開く。


「でも、地下ってずっと暗くて朝も夜も関係ないのでは。今から地下に行かないのですか」

「急げば痛い目を見る。戦いっていうのはどれだけ準備ができているかだ。地上にはできる限りの光の結界を張っておく必要がある。あと、エテルの同級生が行く話は無しだ。危険すぎる」

「わかりました、伝えておきます」

「校長先生もそれでいいですね?」

「うむ」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ