ラム4 学校に隠された秘密とは
あきれたようにツッコミを入れるが、ラムの表情は思いのほか真剣だった。ふざけているわけではなさそうだ。
「魂っていうのはその場に留まりやすい、どこまでも追いかけてくるものじゃないんだよ。そもそも魂がこの世にとどまるには理由がある。強い思いを残しているとか、結界で封じ込められているとかね」
「なるほど? 閉じ込められているんだったら追いかけて来れないし、強い思いがあって残っているならそこに執着してるってことだもんね」
そんなことを二人で相談していると遠くからエテルの友人たちが手を振っている。それに気がついてエテルは「そろそろ行くね」と言ってその場を後にした。遠巻きに見ていたラムの友人たちは、やっぱり仲良しじゃんとからかってくるがラムは適当に受け流す。
「何の話してたんだよ?」
「光属性の魔法について。彼女結構優秀なんだね、成績が上がれば飛び級できるかもしれない」
「マジか。つーか、色気のある話じゃないのか。つまんないの」
「はいはい」
就寝時間が近くなり各々自分の部屋に戻る。三年生でありしかも寮長であるラムは一人部屋だ。だからこそ様々なことが画策しやすい。
(さて、まるで僕らが手がかりをつかんだのを見計らったかのように今回の幽霊の話。明らかに地下に誘い込むための餌ってところか)
一年生がそもそも地下の噂を知っているはずがない。入学イベントの時に多少仲良くなったとしても、上級生がわざわざ地下の幽霊の話を教えるとは考えにくい。その話をすれば忍び込んでやろうと考える一年生が出てしまうのは目に見えている。
(エテルと一緒にいる友人たち、だいぶ好奇心が旺盛な様子だった。あちこちいろんな人から話を聞いたとしても、いきなり地下に忍び込むとは考えにくい。焚き付けた奴がいるはずだ、絶対に)
しかも自分たちが屋外活動に行っている間に。どう考えても彼らからエテルに伝わって、自分のほうに話が来るように仕向けられているとしか思えない。そうなれば結論はほぼ出ているようなものだ。一緒に行った教師たちから協会本部へ連絡が伝わり、それが学校に残っていた教師に連絡された。
学校側にいるのは、今回の騒動を知っている立場の者達、ということだ。すでに首元にナイフを突きつけられているような状態か、とため息をつく。
(協会の人間がもう少し入り込んでいるとして。地下の調査を僕らにさせたいから誘導しているというのは充分考えられる)
そうなると魔法協会の人間は魔法学校の地下を探りたい理由があるということだ。地下に何かあるのはほぼ間違いない。
(考えられるのは高位魔法が封印されてる、とかかな)
大きな戦争があるたび強力な魔法が作られて来た。人の命を大量に奪うことができる危険な魔法は現在使用禁止、厳重な管理のもと魔法協会と王家が主導権を握っている。しかし中には重要施設の奥に封印されているものもあると聞いたことある。魔法学校の地下に封印されていて、それを魔法協会に渡さないために理事長が管理している。これなら一応すべての辻褄が合う。
(もしそうだったら理事長が魔法協会と敵対している理由もわかる。魔法を渡さないためと考えたらおかしなことじゃない)
そもそもこの学校は戦争目的に建てられた要塞だった。
(地下に攻撃専用の巨大な魔方陣を作っておいて、無人化した状態で敵が来たら魔法を発動する。戦争ではこの使い方がよくされていた、地下に今は使われていない魔法が封印されているのはあり得る)
それなら探らせるためにあえて好奇心をかきたてるような噂話を流している。奉仕活動に関しては協力しているのも、優秀な生徒を手駒として引き入れたいのもすべての点は一応つながる。
(父さんが地下に探りを入れたのもそれが理由だったとか)
母の話では何かを探していたらしい。実の母は幼い頃ラムを置いて姿を消した。最後の記憶は泣きながら自分を抱きしめてくれたこと。養母である今の母に預けてそのままいなくなった。
母は父の失踪に心当たりがあり、探しに行ったか何らかの対処に行ったと考えるのが自然だ。育ての親である母は行き先は聞いていないらしいが、「もう帰ってこないと思う、強い決意だったから」と悲しそうに言っていた。かなりの資産も残してくれていたそうだ。結局税金だなんだと様々な理由で国に没収されてしまったが。
(母さんも地下で消えた、かもしれない)
地下に行く理由が固まった。問題は本当に魔法が通じない亡霊のようなものがいたらどうやって対処するか。地下に行かせるためのただの作り話だったら良いが、万が一本当にそんなものがいたら対処のしようがない。
(一応魔方陣を地下に飛ばすことはできるけれど。本当におかしなものがないか時計塔のそばまで行って調べる必要があるか)




