表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
悠久とエテル  作者: aqri
本編
5/107

モカ2 モカとエテルの出会い

「お友達になりましょう!」


 突然声をかけられて少女は驚いたように立ち止まる。蜂蜜のような薄い金髪、誰もが振り返るようなお目にかかれない美少女。しかし彼女は一人で歩いていてどこか近寄りがたい雰囲気があった。話しかけないでくれとでもいうような、わずかに冷たい表情をしていたのだ。

 そんなことがわかっているのかいないのか、全く空気を読まない雰囲気でモカは真正面からそう叫んだ。その様子に少女は戸惑った様子だ。


「え?」

「新入生挨拶聞いてたでしょ!? まずはお友達第一号はキミに決めた!」

「……なんで?」

「美人!」


 自信満々にそう言うと、彼女は再び無表情に戻る。


「要するに、顔だけで友達になりたいってこと?」

「うん」


 これまたあっさりと言い放ったその言葉に彼女は驚いた。普通こういう時はそんなことないよ、と取り繕ってくるものだ。そんな経験を何度も繰り返してきたのだがこんな返事は初めてだ。


「だって今日初めて会ったんだから、どんな人か知らないもん。顔が良いのはお得なことばっかりだよ!」

「例えば?」

「お菓子を買ったらおまけしてもらえる!」


 どうやら本気で言っているらしく目をキラキラと輝かせて自信満々だ。しかしこれといって心が動く内容ではない。


「食べたくなかったら別にいらないでしょう。それに、それの何がいいの」

「なんでおまけしてくれると思う?」

「え……さあ?」


 考えたこともない。いい人を装いたいなら別に顔の良し悪しでおまけをくれるとは思えない。客に良い顔をすることで再び来てもらう目的か、擦り寄ってくる材料なのだと思っていたが。


「笑って欲しいからでしょー! 美人が笑うとみんなが幸せになる!」

「え」

「おまけしてくれた人、絶対笑ってるじゃん」


 たくさん食べられるほうがいいに決まってるじゃないか、とか。顔が良いやつと仲良くなったら自分もおまけがもらえるから、とか。そんなことを言われるのだろうと身構えていたが、モカの言う事は予想の斜め上なことばかりだ。


「笑う……」

「つまり僕は幸せをいつももらえるわけだよ。そのかわり僕も君にたくさん返すよ!」

「なに、を?」


 なんだかもっと話していたくなる。言っている事はたいした内容ではないのに。他の人が言ったら何を言ってるんだろうと冷めた気持ちになるのに。自分の言ってる事はこの世の絶対的な真実だとでもいうように、モカは目を輝かせている。


「友情! それがめぐりめぐってみんなが幸せになる!」

「……」


 一瞬辺りがしーんと静まりかえったが。


「ふ、ふふ。なにそれ」


 口に手を当てて思わず笑ってしまっていた。その様子を見ていた周囲の人たちも笑いが沸き起こる。


「ほら! 美人が笑うとみんなが笑う!」

「い、今のは。ちょっと違うと思う、ふふ」

「え、じゃあ何?」

「バカみたいだから」

「えー!?」


 ガーン! と背後に文字が書いてあるかのように目をまん丸にするモカ。しかし彼女は馬鹿にした様子はなく穏やかに微笑んだ。


「バカ正直。私もそんなバカになってみたい」


 その言葉にモカはニカっと白い歯を見せて笑った。


「よろしく友達第一号! 名前は? あ、改めて自己紹介するけどボクはモカだよ!」

「私は……エテル」

「よろしくエテル! ようし、友達が一人できた」


 そんな様子を周囲は暖かく見守っていた。


「ああああ! 猫耳と犬耳発見! モフモフさせてえええ!」

「あ、モカ」


 突然走り出したモカをエテルは追いかける。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ