ラム4 魔法学校と協会の対立
「だったらなおさら、私がやりたいことをやらせて。魔法を制御したり消滅させる手段があるとしたら、それに立ち向かわないと根本的な解決にならないでしょう。もしかしたら明日私たちは魔法が一切使えなくなるかもしれないのよ。人間関係を優先させたら本末転倒じゃない」
シャロンの表情と声は真剣だ。
「疑わしいことがあったら私を疑っていい。言いたい事は言ってよってこの間話したばかりでしょ?」
「……意地悪な聞き方をしたのに、君はいつも立ち向かうね」
「それなりの家柄に生まれると嫉妬と嫌味の世界で生きてるものなの。学校に来てやっと普通の生活が送れてるから。一緒に過ごす人たちを守りたいと思うのは当たり前でしょ? 待ってたって何も変わらない、自分が動かないと」
「そうか。わかった」
ラムは小さく息を吐く。なんとなくこうなるんじゃないかと思っていたようだ。そして改めてエテルとシャロンを交互に見つめる。
「調べたところで僕らに得られるものはきっとほとんどないし、探り方次第では学校からの追放どころじゃなくなる。学生である僕らは人生をかけることになる」
成人していれば自分の権限でできる事はたくさんある。しかし彼らは学生で、できる事は少ない。まして守ってくれる人などいない。
「さっきシャロン先輩が言った通り。魔法そのものが根底から覆るのであれば、他人事ではありません。あの時ああしておけばよかったと自分に言い訳をしたくない」
「どっちを選んでも後悔するってさっき自分で言ったばかりじゃない。だったら自分が選ぶ道を信じて最善の結果になるように動くだけよ」
二人の言葉にラムは深々と頭を下げた。
「僕からハッパをかけておいてこんなこというのもなんだけど。ありがとう、すまない」
「別にラム先輩の為じゃないのでお気になさらず」
「あはは、確かに」
そして誰かが来る前にその場で解散となった。一年生はこの後外で授業があるのでエテルはそのまま中央広場へと向かう。ラムとシャロンは同じクラスなので次に受ける授業の教室へと移動し始めた。
「それにしても、先生が魔法協会の手駒になるなんてね」
「君が腹をくくってくれたから僕も本音で話させてもらう。不愉快だろうけど一旦聞いてくれ」
「わかった、なに?」
「多分君の父上。大部分の先生たちから快く思われてないんだと思うよ」
「そう思った根拠は?」
確かにあまり面白い話題ではない。父がどれだけこの魔法学校に人生をかけているかシャロンは知っている。決断をしなければいけない立場なので多少憎まれもするだろう。しかし他の教師たちとよく交流しているし、横柄な態度をとっていることなどなかった。シャロン自身は父と教師たちはうまくやっていると思っているのだ。
「今回協会についた先生たちの様子からは、別に人質をとられたとか脅されてるっていう雰囲気は無い。甘い言葉に乗っかったって考えると、少なくとも今この学校に強い不満があるはずだ。一度や二度じゃなく慢性的に。あと」
立ち止まってシャロンを見つめる。
「そもそも何で魔法協会と学校は対立してるか知ってる?」
「え、ううん。魔法協会は魔法を権力と掛け合わせて好きに使ってるから、そういうのは父は好きじゃないからだと思ってたけど」
「要するにシャロンも詳細を把握してないってことだね」
「まあ、ね」
引っかかる言い方だと思ったが、一旦聞いてほしいと言われたのでそのまま待って続きを促す。
「魔法協会と対立してるのって君の父親一人なんじゃないかな。学校対協会じゃなくて」
「え?」
「今まで何度も屋外活動してきたけど。先生たちは協会の人たちをそんなに嫌っている様子はなかったよ。中にはなんでいちいち協会につっかかるんだって呆れてる先生もいた」
「そんな、そんなこと」
「信じられないなら今度自分で見聞きしてみると良い」
実はシャロンは屋外活動にほとんど参加していない。ラムが外に行っている間、学生会を取り仕切っていたから。ラムが外にいる間はシャロンは学校に残る、これがいつものパターンだった。協会本部の息かかった活動場所に行くのをシャロンが避けていたからだ。そのためそういった意味での教師との交流はシャロンはない。学校生活と授業だけの表面上の付き合いだけだ。
「先生たちも裏切ったんじゃなくて、気軽な交流とかちょっとした小遣い稼ぎとかその程度の認識なんじゃないかな」
信じられないものを聞いたという表情をするシャロンを置いてラムは一人歩き始める。これでもだいぶやんわり伝えたのだ、彼女から反感を買わないために。実際のところはほぼ答えが出ている。魔法協会といがみ合っているのはシャロンの父だけだ。




