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悠久とエテル  作者: aqri
本編
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ラム4 変わり始めた人間関係

「ないと思うけど。彼女ちょっと警戒心が強いというか、そこまで心を開いている様子じゃないから」

「相手がどうじゃなくてお前がどうなんだよ。好みかどうかって話」

「可愛い子だと思うけど恋愛に発展するかどうかは別問題だ。今のところはしっかり者の後輩っていう感じかな」

「交流続ければアリ?」

「そんなの僕にもわからないよ。ただ変な噂を立てて彼女に迷惑かけるような事はしないでくれよ」

「わかってるって」


 そんな男同士の会話を周囲の女子たちはちらちらと様子を伺いながら聞いている。その場にシャロンがいないからというのもある。シャロンとラムが付き合っているんじゃないかという噂が根強い中、エテルが登場したのだ。三角関係なんじゃないかという想像をかきたてるのは仕方のないことである。

 どうやら一年生でもその話題で盛り上がっているらしく、エテルが一度移動すればいろんな人が話しかけに走る。人が集まるところに必ずエテルがいる、そんな状態になるのにニ日とかからなかった。今日もまた中庭に人が集まっている、おそらくエテルと同級生たちだ。彼女の友人たちは声が大きいのですぐにわかる。


「あっちはあっちで大変そうだな」


 その様子を見て笑いながら、ラムは次の授業のために教室を移動した。廊下でシャロンと会って、次の行事の打ち合わせなどを話しているが。二人が並んで歩いていると周囲の者たちがひそひそと何か話しているのがわかる。


「あんまりいい気分しないわね、何を話されているのかわかるから」

「面白いネタがないんだから仕方ないさ。色恋沙汰の話題なんてそう頻繁にあるものじゃない。この間は何だっけ、二年生が教師と駆け落ちしたみたいな話もあったんだっけか」

「実際は違ったみたいだけどね」

「自分の人生に影響があるわけじゃない人間関係の話を楽しむ時点で、つまらない人間だ。そんなものに自分の感情揺さぶられる必要なんてない」


 どこが冷めたようなその言い方にシャロンは「そうね」と相槌を打った。


(全く関係ないわけじゃないから面白くないんじゃない)


 さりげなく教師に聞いてみたが、どうやらエテルは魔法の実力がかなり高いらしい。授業は一度見聞きしただけで覚えて、初歩の魔法はあっという間に使えるようになったそうだ。

 頭が良くて魔法も強くておまけにとんでもない美人。しかもラムはエテルを自分のチームに招き入れたいと考えている。今回の屋外活動ではずいぶん二人は仲良くなったようだし、うまくいっているようだ。


 学年の垣根を越えた大きなイベント。そのチームに果たしてラムはどんなメンバーを集めるのか。エテルは決定だ、おそらくシャロンも。だがはっきり言ってしまえばこの三人で事足りてしまうのだ。

 ラムは不得意なことなどない、全てが完璧だ。それと同じくらい優秀なシャロンもいろいろなことができる。今まで友人達とチームを組むことが多かったが、ラムが達成したい目的を考えればおそらく今回は本当に必要最低限の人員しか誘わないはずだ。三人だけの可能性は充分ある。


「ところで屋外活動はどうだったの」

「珍しいな、シャロンがそこを気にするの」

「そう?」


 気にしているのは屋外活動の内容ではない。エテルとどんなことがあったのか、それが気になってしまっただけだ。それを指摘されたような気分になる。


「魔法の暴走としか思えないことが起きているらしくてね。魔法協会の調査はいい加減だ、住民たちの不信感が強くなってた」

「教会はいつもそうね。実際のところはどうだったわけ? 本当に魔法の暴走?」

「今のところは何とも言えない。雰囲気から誰かが故意に起こしてることかなっていう感じかな。あと気になることがあるけど、ここでいう話じゃない」

「わかった」


 周りには生徒がたくさんいる。どこで誰が聞き耳を立てているかわからない。それだけ重要なことをつかんだということに他ならない。


(それを私には教えてくれるんだ)


 その事実に嬉しくなる。当然行動を共にしていたエテルは知っているはずだ。そこと同じ情報を共有できているということに安心感が出る。


「今日の放課後エテルに旧図書館に来てもらうように頼んである。少し打ち合わせがしたいから。シャロンも頼む」

「わかった」

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