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悠久とエテル  作者: aqri
本編
46/107

ラム4 協会からの引き抜き

 用心するに越した事は無いけどねと言って再び二人は歩き出した。二人は良くも悪くも目立つ、何もしていないとサボっていることが協会の人間に伝わってしまう。何も知らない、気づいていないのを装いながら、当たり障りない聞き取り調査を進めていた。

 ラムは定期的に来ているらしく顔見知りも多かった。来てくれたんだ、久しぶりだね、そっちの子は彼女かい? など。適当な世間話から最近あったことなど、どんどんラムに話しが集まってくる。わざわざ聞きに行かなくても勝手に話が集まってくる状態だ。今までの活動がこういう形に身を結ぶのだな、とエテルも学ぶことが多い。

 その後何事もなかったかのように二日間が過ぎ、最終報告を協会本部におこなった。動物の件を言うと追加調査をしましょうということになった。


(先生たちから報告がいっているはずだ。それでもこの反応って事は、たいして重要視してないってことだな。僕らのこともそこまで役に立たないって認識でいてくれるとありがたいんだけど)


 そんなことを考えていると、相手が「ところで」と話を変えてきた。その様子にラムとエテルは一瞬警戒する。擦り寄ってくる人間の典型的な言葉選びだからだ。


「ラム君はもともとこちらの活動に積極的に参加していただいていたので、成績優秀なのは知っているのですが。エテルさんは今回なぜ参加されたのですか?」


 ラムは簡単に入学式での出来事を説明した。彼女の責任ではないが、心を痛めているというあたりを重点的に説明する。


「これだけの事態、さすがに見て見ぬふりができないって僕に相談してきたので。僕が活動に参加したらどうかって誘ったんです」


 穏やかにラムがそう説明すると、なるほどと一応納得はしてくれたようだが。


(利用できる駒かどうか品定めか。彼女はまだ入学して間もない、魔法が強いかどうか彼らには情報がいってないし)


 ラムに取りつく島がないので、ターゲットを変えられないか探りを入れてきたのだ。


「今回は貴重な経験をさせていただきました、ありがとうございます」


 話はこれで終わりだと言わんばかりのエテルの淡々とした締めくくり。帰る準備をしようという雰囲気を出して、これ以上関わらないようにさりげなく行動を進める。すると協会本部を出る前に女性の職員らしき人がエテルに話しかけてきた。


「今回は奉仕活動という形でしたけど、学校との連携はこちらも積極的に行いたいと思っております。何かあれば個人的にも連絡を受け付けますので」

「分りました、ありがとうございます」


 白々しい会話が終わって協会本部を出る。そしてある程度距離が離れたところで教師二人がやれやれといった様子でため息をついた。


「あそこまであからさまに引き抜きを示唆されるとこちらも反応に困るね」

「やはりそういう意味なんですか、さっきの」

「優秀な人材の確保は彼らは血眼だから。奉仕活動はいつもラムを中心に決まった面子なんだよ。だから違う人が来た時はああやって声をかけて、こっちに来ないかっていうのを粉かけてくるんだ」

「それを教員二人の前でやるんだから、舐められているというかなんというか。要するに見下されてるってことだよ」


 ラムの鋭いツッコミに教師たちは笑うしかない。内心面白くなかっただろうが、それを生徒の前で表情に出すわけにはいかない。


「ラムの引き抜きには何度も失敗してるから、君に目をつけたんだろう」

「実力がわからないのに?」

「言い方がアレだけど、見た目が良いのも引き抜きの立派な理由だよ」

「ああそうですか」


 教師の言葉にエテルは冷めたような表情だ。確かに見た目が良いものは客寄せとしては効果を発揮する。実力などどうでもいいから、愛想を振りまく要因として声をかけられたのだと言われて面白いはずもない。

 なんとなく機嫌が悪そうになってしまったエテルに教師もしまったという感じだったが、そこはラムが笑いながら話しかける。


「まあいいじゃないか、悪目立ちしたんじゃないんだから。学校は寮生活だから地域の人と接する機会も少ないし、良い経験だよ。魔法協会に媚びを売るために来たんじゃないんだから」

「そうですね。私は田舎の出身なのでこんな広い町来たのは初めてだから。結構面白かったです」


 その後はラムとの会話を中心に学校へ戻ることとなった。それが他の生徒の目に入れば当然仲睦まじいように見える。色恋沙汰に飢えている年頃なので、二人が付き合っているのかという噂が広がるのはあっという間だった。


「たった一回屋外活動一緒にしただけでこれか。別に二人きりでやってきたわけじゃないのに。みんなこの手の話題好きだね」


 あきれたように言っているラムに友人達は楽しそうだ。


「そりゃ絵になりすぎてるって」

「そうかな? きれいな後輩に言い寄る悪い先輩、って噂でも立つかと思った」

「お前自分のキャラ考えろ、ありえないだろ。誰がどう見てもお似合いだろうがよ、この色男」

「でも実際どうなんだよ? あれだけの美少女だ、お付き合いに発展する可能性は?」

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