表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
悠久とエテル  作者: aqri
本編
42/107

ラム4 町で起きている爆発事故

 穏やかに説明されたが、おそらくそれが本来の目的だ。自分たちが言っては角が立つ、そのため注意をするという嫌な役を魔法学校の生徒にやらせるのだ。生意気を言えば魔法学校の評判が下がるし、協会としては一石二鳥である。無論ラムもそれをわかっている。


(逆に言えば学校の印象を良くする機会でもあるってことだ。僕らの行いで学校の評判が変わるわけだ、責任重大だな)


 責任重大だと考えながらもそこまで気負っていないラムは、大方話を聞いて早速活動に移ることにした。昼頃に到着したので、夕方に集合ということで全員で町に向かう。事務員は仕事の件で打ち合わせがしたいということで協会本部に残った。


「聞き取りの類は大方協会がやってるだろうけど。何も知らない(てい)で最初から聞いていこう」

「何も得られるものはないのでは?」

「そうとも限らないよ。教会にあまり良い感情を持っていない人だったら、協会に正直に話したりしないさ。魔法学校の生徒だっていう事ならまた違う情報がもらえるかもしれない」

「私にはよくわからないんですけど。魔法協会と地元の人ってそこまで仲良くないんですか」


 内容が内容なだけに、さすがにエテルが声を小さくした。その問いかけに二人の教師は苦笑だ。


「あくまで客観的に見た感じだけど、そこまで仲良しこよしってわけではないみたいだよ。寄付をしてくれる人には優しいみたいだけど」

「魔法が使えることで普通の人より優位に立っているつもりなんですね。どこにでもいる魔法使いの典型的な考え方です」


 どこか冷めた様子のエテル。この様子からもあまり魔法使い自体に良い感情は抱いていないようだ。


「全ての人じゃないけど、魔法協会は自分たちが魔法を使って人々を『助けてやってる』っていう、ちょっと上から目線の考えの人が多いんだよ。それが鼻につくんだろうね。でも実際魔法の力で普通ではできないことをやっているのも事実だから、表立って揉め事はないみたいだけど」

「表立っては、ね」


 そこだけ注目したエテルにラムは微笑む。うまく伝えたかった意図を汲んでくれたからだ。


「さて、一番被害が大きかったっていう爆発事故のところに行ってみよう。亡くなった人はいないみたいだけど怪我人は多く出たみたいだ」


 人通りの多い場所で突然何かが爆発したらしい。爆発事故は実はこの町ではそこまで珍しくは無い。なぜならお祝い事には花火を使うからだ。郊外に出れば花火や火薬を作っている工房もある。そういったところで稀に爆発事故があるため爆発自体は驚くことではない。

 問題はそこに火薬や花火の類が全くなかったことだ。念のため警備兵などが調査したが、祭りの予定もなくどこかに運んでいたという様子もない。本当に何もないところが爆発した。そうなると魔法以外にありえないというわけだ。


「この件で魔法協会によくない印象を持つ人が増えたみたいだ。完全に魔法使いが魔法を失敗したって思ってるみたいだね」

「普通に考えればそうでしょうね。その場に魔法使いはいなかったと説明したところで、じゃあ一体何なんだという話になりますし。だから魔術なんじゃないかっていう噂も出たわけですか」


 現場に到着し穏やかそうな雰囲気の人たちに声をかける。声をかけるのは主にラムだ、見知らぬ人との会話をするのは慣れているらしく穏やかな雰囲気で会話が続く。

 通り掛かる男性たちはちらちらとエテルを盗み見ているようだ。魔法学校のローブを身にまとった絶世の美少女がそこにいるのだから注目するなという方が無理である。しかもラムも整った顔立ちをしているので、教会の者が言った通りまさに美男美女。何が起きているのか調べたいと言えばあっという間に話が広がって人が集まってきた。


「調査なんてほとんどされてないの、適当に聞き取りして終わりなのよあいつら!」


 住民たちが口を揃えて言ったのはこれだった。爆発しそうなものはなかったかだけを聞いてあっさりと終わってしまったという。じゃあ魔法だろうと皆が口を揃えても、そこに魔法使いはいなかったという一点張りだ。


「事前に何か音とか、何か気がついたこと等はありませんか?」


 ラムには女性が集中して集まっている。若い女性は興味本位といった感じだが、中年女性たちになると凄まじい勢いで喋り続ける。自分たちの話を聞いてほしいという一心のようだ。その中でも当時その現場にいた女性が話の主導権を握り詳しく説明してくれている。


「本当に突然だったんだよ、音とかはしなかった。だから魔法以外ありえないだろう!?」

「そうですね。その場に一人も魔法使いがいなかったなんて誰も管理してないわけですし」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ