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悠久とエテル  作者: aqri
本編
41/107

ラム4 奉仕活動開始

 屋外活動当日。事前の打ち合わせはかなりあっさりと終わった。奉仕活動、困っている人の手助け。実際何をするのかは現地に行って説明があるという事だった。


「誰かの説明があるんですか?」

「魔法協会だよ。実は学校とはあまり仲が良くないんだけど。奉仕活動においてはそういういがみ合いは禁止だっていうルールがある」

「変なルール」

「ちゃんと理由があるよ。かつて奉仕活動とは名ばかりの自分たちの善行を国に見せつけるための活動で揉め事が起きた。その時子供が二人犠牲になった痛ましい出来事があったんだ。それ以来こういった活動は国が目を光らせてる、何かあれば支援金など全て打ち切られてしまうから」


 魔法の力があるのにそれを人のために活用しないのは悪である。それが王族が掲げている言葉なので、魔法協会や学校は何かしらの活動をしないわけにはいかないのだ。そして表向きには仲良くやっているということを民衆にアピールできれば、お布施等資金集めにも良い影響が出てくる。


「誰のための活動なんだかって感じですね」

「思惑はどうであれ困っている人が助かるのは事実だよ。あと前回やった奉仕活動がその後もちゃんと続いているか、困った事はないかの確認もしてる」


 やって終わり、やりっぱなしじゃダメなんだよと。学校が長年続けてきた活動の説明をエテルはラムから受けていた。行くのは教師二人、ラム、エテル。そして事務員が一人。

 事前にラムが言っていたように確かに雰囲気は和やかだ。懲罰というわけでもないが、真面目にやらなければというピリピリした空気ではない。教師二人は談笑している。事務員はまるで人形のように無表情で必要最低限のことしかしゃべらないが。この事務員が魔法協会の事務担当と連絡を取り合い、今回の奉仕活動を取りまとめているらしい。


「予定では二日間ですよね」

「予定はね。長引きそうだったら終わるまでやるっていうのがいつものパターンかな。長引いた分はちゃんと授業してるっていう扱いになるから大丈夫」


 そんな会話をしていればあっという間に協会本部が見えてきた。学校から協会本部はかなり遠い。全員馬車に乗って専用の馬車道を通ってきたのであっという間に着いた。協会本部の前には二人出迎えがいて軽く挨拶を済ませる。


「これはまた、美男美女で絵になりますね。ようこそいらっしゃいました」

「よろしくお願いします」


 明らかに社交辞令とわかる言葉を適当にかわしながら、ラムとエテルは案内されて協会本部へと入っていく。教師たちと協会の人間が何か話をしているが、こちらも白々しい世間話のようだ。互いに探りを入れさせないためにたいした情報を話そうとしない。

 会議室のような小規模の部屋に案内されてそれぞれ席についた。そしてこれから二日間やることについて説明が行われる。


「やっていただきたいことの前に、今何が起きているかの説明をさせてください」


 協会の人間から説明されたのはこうだ。最近魔法と思われるおかしな事故が増えている。突然何かが爆発したり、物が壊れたり。目撃者が大勢いる中突然地面に大きな亀裂が入ったという事例もある。明らかに魔法なのだが、どれだけ調べても魔法の痕跡が見つからないという。


「魔法を使えば必ず魔力の痕跡が残ります。その場には魔法使いも数多くいたにもかかわらず、誰も感知することができませんでした。一体何が起きているのか、調べる手伝いをしてほしいのです」

「協会が徹底的に調べてもわかってないんですよね? 僕らが調べてわかるとは思えません。何か頭数が必要な理由でも?」


 的確な指摘に協会の者たちはお互いの顔を見合わせる。やがて少し言いづらそうに話し始めた。


「実は、巷ではこんな噂が流れているのです。長年失われていた魔術がどこかに眠っているのではないか。この噂が出始めたのとおかしなことが起き始めたのはほぼ同時です。町ではすっかり魔術の暴走ではないかという話が出ていまして」

「魔術、ですか」


 奉仕活動するのは生徒なので教師たちは口を挟まない。何かあったときの手助けが役割だ。そのため話のやりとりは主にラムが行っている。ラムは数多く屋外活動に参加しているので、こういったやり取りには慣れているようだ。

 大昔に失われてしまったと言われている魔術。実在したかどうかさえも怪しく、御伽話ではないかというのが一般的だ。それに魔法協会は魔術の存在を否定している。


「挙句の果てに魔法協会が魔術を隠してるんじゃないかという悪い噂もたって。好奇心旺盛な者が魔法協会に侵入しようとしたり、悪質で不要な揉め事も増えています」

「なるほど。そういった人は見つけ次第僕らからも注意しましょう。他の組織も動いているんだとわかれば、聞いてもらえるかもしれませんね」

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