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悠久とエテル  作者: aqri
本編
39/107

ロジクス 終章

 床に散乱したボロボロの服。それは魔法学校二年生が着ていたローブだ。靴やアクセサリー等もそのまま残っている。


「こんなところにいたんだな、トータ」


 震える手で、ロジクスはいつもトータがしていたイヤーカフを拾いあげた。


「食べるものがなくて初めて盗みをしたのは五歳の時。これを売って金にしようと思ったけど、どうしてもできなかったって言ってたっけ」


 どうしてできなかったのか自分でもわからない。でもそれをしてしまったら本当に救いようのない馬鹿になるような気がしてできなかったんだ、と笑いながら言っていた。盗みをしてる時点でバカだろ言ったら、救いようのない馬鹿にはなってないから大丈夫だとこれまた笑って言っていた。


「気はすんだ?」


 どこが冷めた声でそう問いかけてくるエテル。あれからロジクスは魔術を探した。そしてトータが本当に魔術の在処にたどり着いたのではないかという痕跡が残っていて、協会本部に軟禁されていたことも突き止めた。トータが見つかったのは学校の地下だ。おそらく協会本部の地下ともつながっていたのだろう。やっと遺品を見つけることができた。骨すら残っていないが。


「ああ。充分だ」


 けほ、と血を吐く。己の胸からは剣が突き出している。心臓を剣で貫かれているのに生きているのは魂を影に移していたからだ。エテルの正確な一突きにもこうして耐えている。

 目の前に広がる、おそらく「魔術」と思われるもの。トータはこれを見て消えてしまったということだ。魔術を探すことを夢見ていた彼にとって、それは幸せなことだったのだろうか。


「魔術は本当に存在した。お前の考えは間違ってなかったよ、トータ」


 その場にゆっくりとしゃがみ込んで仰向けになる。出血多量で立っていられない。いくら魂を影に移していても、もうすぐ命が尽きる。


「そうね。私の探し物も見つかったわ、ありがと。これを探してたの」


 そう言いながら剣を引き抜いた。そこから大量に血が溢れる。ごぼ、と口から血を吐きだした。


「さよなら、ロジクス」


 そう言うとエテルはロジクスの首に、剣を振り下ろした。


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