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悠久とエテル  作者: aqri
本編
36/107

ロジクス5 優秀な三年生、馬鹿な一年生

【とっくに気がついてたわ、彼。だから参加するんだよって笑ってたくらい】


 社交的で誰からも好かれる、頼りになる存在。そんな風に捉えていたが、どうやら思っていた以上に肉食獣のような本性があったらしい。


(協会本部に個人的な恨みとか不信感があるってことか。教師の企は見え見えだったんだな。とりあえずほっといても大丈夫そうか)


【あっちの魔法の実力は未知数。絶対世の中に隠してる知識があるわ。緊急時以外は影の魔法を使わないようにする、この魔法が盗まれたんじゃたまったものじゃないもの】

「わかった。俺も目をつけられない程度にもう少し調べる。あいつは俺以上に不真面目だったからな、そのまま学校やめちまうんだろうっていう空気が流れて教師も特に何もしない。本当にそうだとしても俺には一言何かあるはずだし、いなくなったきっかけがきな臭すぎるからこのままってわけにはいかない」


 下手をしたら自分たちにも何か干渉があるかもしれないのだ。何か知っているのか、と。


【わかった。とりあえず屋外活動が終わったら一旦会いましょう。今回のこともそうだし今後の方針少し私なりに考えたことがある】

「あっちの魔法協会の詳細とかと一緒に聞かせてもらう。嫉妬に狂った女に後ろから刺されんなよ、すげえ噂になってるぞ。見事な三角関係だって」

【あんな馬鹿女の考えることなんて手に取るようにわかるわよ。じゃあ】


 そして気配が消える。初めて会った時に比べれば幾分か声が柔らかくなった。同級生や上級生と交流することがどうやら良い方向に働いたようだ。それだけではなく、おそらくほんの少しだけ。トータの件で気遣ってくれていたようだった。


(トータに干渉できないならトータの魂ごと消滅してしまったという可能性もある。魂の存在は一応魔法の世界では証明されているが、半信半疑な考えも根強い)


 ロジクス自身は魂が存在すると思っている。しかしどのタイミングでこの世から消えてしまうのかはわからない。とどまる者もいるのにあっさりと神の御許へ行く魂もあるというのはなんだかおかしな話だ。

 そもそもこの世に神がいるのかどうかさえ怪しいものだが。ろくでもない人間がこの世に留まり続けるなら、この世は化け物の巣窟になっている。


(魂を消滅させる魔法なんてないと思ってたが。魂に干渉する魔法がこうした実際にある。いや、そもそも国が魂に関わる魔法禁止してるんだからもともとあったってことか)


 はっきりさせなければいけないのはトータの現在の生死だ。生きているのなら助けたい、死んでいるのならせめて弔いたい。余計なことに関わるつもりはないのでこの件を明るみにする気なんてさらさらないが。ろくでもない生い立ちをした人間がろくでもない死に方をして、何事もなかったかのように世の中は動き続ける。

 大嫌いだ、その仕組み自体が。一定の資産がある者は家族がいて墓まで作ってもらえるのに。孤児や家を失ってさまよっているものはゴミのように打ち捨てられて終わりなのだ。同じ人間なのに扱いの違いは一体何なのか。金がない奴は人間ですらない。それがこの国の考え方だ、反吐が出る。

 そんなことを考えていると、ギャーギャーとわめきながら走り回っている一年生が近寄ってきた。あれは確かエテルと一緒にいる同級生だったか。


「あ、すみません! エテル見ませんでしたか!」

「見てねえよ」


 一言そういうと明らかにショボーンと落ち込んでしまう。エテルは明日から屋外活動するのでその準備で忙しいのだとは思う。何せ持っていく物は多い、今回一緒に行くメンバーと一緒に準備を進めているはずだ。


「屋外活動の準備だろ、三年の校舎じゃねえの」

「え!? 屋外活動!?」

「はあ? お前知らないのかよ。一年のお姫様が三年の優等生様と屋外活動するなんて、この学校で知らない奴いないだろ」

「え、うそ。エテル何も言ってくれなかった」

「相手が何も言ってくれなかったら何も知らねえのか。友達とは思えねえ発言だな」


 アホくさいと思いながらそれだけ言ってその場を後にした。友達という位置づけのようだが、自分が良ければそれで良いタイプだなと冷静に判断する。誰かが何かをしてくれるのが当たり前だと思っている性格の典型だ。どおりでエテルが心を開いていないわけだ。わかりにくいが自分の都合で動くタイプのようだ。


「予定ぐらいちゃんと教えておけよ、うるせえ奴だな」


 特に影の魔法を使ったわけでは無いのだが、影から小さく笑う声が聞こえた。


【うるさくて鬱陶しいから言ってないんでしょ。駆けつけられたら準備が進まないじゃない。ちなみに私、三年の校舎にはいないからね】

「わかってるよ。南門近くの物置小屋だろ普通」


 持っていくものなどを一時的に物置小屋に集めておいて出発する、それは恒例のことだ。一年生だったら知らないのは無理ないが。


「お前あんなのと一緒にいて疲れねえの?」

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