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悠久とエテル  作者: aqri
本編
35/107

ロジクス5 行方不明となったトータ

 今聞いた情報を整理すると、影を操るというのはその人の魂を一部の操るということに等しい。だから影を使って相手の行動に干渉するというのがロジクスは当たり前に使っていたのだ。もっと使いこなせれば、相手の行動そのものを操ることができるかもしれないということだった。

 相手を支配できる、管理できる。とんでもない魔法だ。


「へえ、思ってた以上に結構すげえ魔法だったんだな」

【どれだけ大変なことか分かってる? 魂を操るのは国が禁止してるの知ってるでしょ、死者を蘇らせるのと同じくらい重罪だって、ことも】

「ちょっと便利な魔法ってわけじゃないってことだろ。それぐらいわかる」

【ここでこれを使って悪巧みするような馬鹿だったらここで手を切るんだけど。どうやらそういうわけでもないみたいね。今後これをどう発展させていくかはあなたの協力が必要なんだけど】

「それはお前が屋外活動から帰ってきてから。と、言いたいところだが。使う用事ができた」

【……聞かせてくれる? それ】


 エテルはロジクスの性格を大体把握してきている。問題児のように思えて実はかなり慎重で頭が良い人物だ。危機管理やその先に見えているリスクをきちんと把握して、どこまで自分が踏み込むかをちゃんと考えて行動している。

 ずる賢いと言えば聞こえは悪いが、賢いことには変わりない。そんなロジクスがリスクが大きすぎる魔法を使うというのは少々意外だった。それだけ重大なことが起きているということだ。


「トータが戻ってこない」

【女教師に探り入れていたお友達だったわね。いつから……まさか私が最初に会話聞いた時から戻ってないの?】

「いや、一昨日から。あいつはよく授業サボる。一日二日戻ってこないのなんて珍しくないし、別に俺たちは大親友ってわけじゃないからお互いの行動をいちいち報告したりしない。最後に会話した時は女が操りやすくてうまくいってるっていう内容だった。でも今戻らないのは変だ、進級に関わる試験が近いんだぞ。授業も全部出てない」

【まさか女教師、もう学校にないの?】

「昨日退職したって聞いた。さすがに俺も何かあったと思って探りを入れているが、俺にできることにも限界がある。俺は教師たちのウケが悪いから下手に動けない」


 だから苛立っていたのかと納得できる。ロジクスの事だから今まで通り使えていた能力を使ってトータを探そうとしていたはずだ。


【見つからないの、影の魔法使っても】

「気配が捕まらない。こういう時、考えられる事として一つはとっくに死んでる」


 吐き捨てるように言ったその言葉に、さすがにエテルも黙り込む。どう考えても危険なことに首を突っ込んでしまって消された可能性が一番高い。女教師が男に騙される頭の悪い人間であったとしても、その後ろに付いているのは魔法協会だ。


【一つはって言ったわね、もう一つは?】

「もう一つは俺でも感知できない高度な結界の中に閉じ込められてるか」


 可能性としては低い。トータは捕まるような価値のある人間ではない。それをされるのは重要参考人くらいだ、それも魔法協会や国が関わるような超重要人物のみ。


【その可能性が低いってわかってるのよね。何か心当たりでも?】

「俺たちは魔術を探してた。もしトータが協会の反感を買って殺されそうになったとする。その時あいつの舌先三寸で魔術のありかの手がかりを持ってるとか言ったら、監禁ぐらいはされているかなって思っただけだ」

【それは確かに……ちょっと待って、私もやってみる】


 それから数十秒経ったが聞こえてきたのはため息だった。


【確かに何も感じない。存在そのものが知覚できない】

「影が魂の干渉なら、死人に干渉できないのは当たり前だ。だが魂がこの世に残ってるなら接触できるはずなんだ、何もないこと自体がおかしい」

【私の研究結果では、そうね。死んですぐに天に召されるわけじゃないのなら。これからどうするつもり?】

「この魔法を急いで完璧に使いこなす。そうやってトータがどこかに監禁されてるのか、それとも生きてないのかをはっきりさせる。知らん顔するほど薄情でもないつもりだ」


 その言葉の中には、そっけなくもトータを心から心配しているのかわかる。悪友、親友じゃないとは言っているが。おそらくこの世でたった一人の大切な友人なのだ。


「同じことを探ってた俺も同じ目に合う可能性もあるだろう。あと、もし本当に何かあったなら今回の屋外活動の件。お前もそれなりに危険にさらされるってこと忘れるな」


 屋外活動は密かに魔法協会からの干渉によって行事がコントロールされてきた。今回も何らかの危険なことを生徒にやらせるというのは予測がついている。

 そこに行くというのは協会本部に飛び込むということに他ならない。おそらく協会本部は有名な三年の優秀生に目をつけているから、エテルの事は寝耳に水のはずだ。新たに目をつけられる存在となるのは覚悟しなければいけない。


【屋外活動するにあたって、今回一緒に行く人とは結構仲良くなったつもり。だから協会本部の話は私からしたのよ】

「で? なんて言ってた」

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