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悠久とエテル  作者: aqri
本編
14/107

ラム3 ラムの目的

 しかしラムは知っている。かつてその真相を確かめようとして、命を落とした者がいると。その人物こそが自分の父親なのだ。

 父はこの学校で教師をしていたが、父が死んでからその事実はなかったことにされている。母は身の危険を感じてラムを私生児として育てた、父の実子だとわかったらどんな影響があるかわからないからだ。

 そしてこの学校の話をして、危険なことはしないでほしいと言っていた。結局母は自分を養うために無理に働いて体を壊して亡くなってしまった。この学校に入ったのは高い魔力を評価され特待生として学費免除で入学したのだ。


 人の命を台無しにしておいて隠そうとする学校、絶対に許せない。その関係者であるシャロンのことも完全に信用しているわけではない。ただ彼女の真摯な態度、使われるだけという苦しい立場も理解はしている。微妙な人間関係となってしまったが、彼女の魔法の才能は本物だ。学年の成績は一位はラム、二位がシャロンなのだから。

 どれだけ自分が探りを入れても、地下への入り口は見つかったことはない。最高難易度と言われている課題の地下とは全く違う、もっと下に別の地下が存在するはずだ。両親の為にも絶対に卒業までにこの学校の秘密を暴く、その思いでがむしゃらに勉強をしてきた。


 エテルの力は未知数。彼女に協力してもらえれば何か糸口が掴めるかもしれない。何をやっても成果が出なかったので、ここにきて思わず気が動転した。


(シャロンには言うべではなかった。邪魔をするなという意味で牽制してしまった、失敗したな)


 彼女の性格からはこのことを学校にも父親にも言わないだろう。しかしこそこそと地下への探りを入れたら、彼女の行動こそ目立ってしまう。こうなってしまったらすべてを彼女に話すしかない。

 シャロンのことを完全に信用はしていなくても、三年間ずっと同じチームで様々な困難に立ち向かってきた。仲間として「信頼」をしているのは確かだ。


 そんな彼女に命の危険があるかもしれないという今回の事、協力してもらっていいものか。自分の身勝手な行動が彼女に不幸を招かないか、今更になってそんなことを考える。物事を冷静に数歩先まで考えてきた自分らしくなかった。自分の立場をはっきりとした上であなたを信じると、できることをすると言ってくれたのなら自分もそれに応えたい。


「すまない、少し冷静に考えたいから時間をくれないか」

「もちろん。急かす気は無いからゆっくり考えて」


 入学イベントでチーム勧誘はマナー違反なのはわかっている。まずは彼女に理解をしてもらえるよう接触しなくては。

 大騒ぎの中、エテルを探すとチームメンバーらと避難している。驚いた様子だ、これは想定外だったのだろう。すると黒いローブ、二年の男がエテルに話しかけている。友人たちは大混乱の中、エテルは冷静に男と会話をしている。そっけない態度で立ち去ろうとしたようだが、男が何かを言うと勢いよく振り返る。そして内緒話のようなやりとりをすると、男は立ち去った。


(何を言われた? これをやったのお前だろ、とかかな。先を越されるわけにはいかない)


 今彼女は警戒心が振り切れている状態だ。だが、上っ面で接するのが無駄なのは経験済み。ここは本心で話すしかない。割れた木を見れば、あちこち枝が折れてボロボロだ。衝撃の強さがわかる。


 もし、地下が何らかの魔法で隠されているのなら強い魔法を持つ者の協力が不可欠だ。利用しようという思いで近づけば彼女は察してしまう気がする。心を開いてもらうには時間が必要かもしれない。

 しかし先程の二年が近づいてきたように気づく者は気づいてるはずだ、特に教師はただごとではないというのは見ればわかる。手を打たれてしまったら身動きができない。


(これは賭けだ、やったからといってうまくいくとは限らないけど)


 うまくいかないかもしれないなら、うまくいくように自分でなんとかする。そうやって今までずっと生きてきた。一度や二度の失敗で諦めず、どうやったらうまくいくのかを考えてやれば必ず活路が見出せる。父がよく言っていたのだそうだ、母が懐かしそうにそういつも語っていた。


 幾分か険しい顔をしたエテルが校舎の中を歩いていく。どうやら自分が何をしでかしてしまったのか彼女にもわかったようだ。これはとんでもないことになる。

 責任問題もそうだが稀有な能力の持ち主としてあちらこちらから声がかかるだろう。それは今も戦争の火種がくすぶっている昨今、魔法使いとして戦場に送り出される未来が目に見えている。


「ちょっといいかな。君が壊した結界を作ったのが僕なんだけど」


 誰にも聞こえないようにそう声をかけると、エテルはビクリと体をふるわせた。そのまま立ち去ることもできたが、気づいている者にそっけない態度をとっても自分が不利なだけだと悟ったようだ。


「……何か」

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