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悠久とエテル  作者: aqri
本編
11/107

モカ3 獣人の友達

「えーっと、犬耳がダガー、猫耳がアリスね。よろしく友よ」

「あはは」


 獣耳を持っているものは獣人で、獣の能力を備わっているので優秀な者たちが多い。一般的には五感が優れていて力が強い、といったものだ。尻尾が生えて爪も長い。

 ただしそれが逆に弱点にもなり、臭いの強いもので攻撃をされたり大きな音を出されればいくらかダメージはある。獣人は数が少なく魔法学校に入ること自体稀だ、ダガーたちしか獣人は入学していない。


 全員軽く自己紹介をしたが、そっけない態度のエテルに二人ともどう接していいかわからないといった様子だ。するとそんな空気をわかっているのかいないのか、モカはダガーとアリスの間に立って二人の手を握った。円陣を組むような形だ。


「ほら、エテルも早く早く」

「……」


 小さくため息をついてエテルは開いている場所に入って二人の手を握った。その様子に二人はうれしそうだ。


「行くぞ野郎どもー!」

「え、それが掛け声なの?」

「ここは、おー! だよエテル」

「あはは、もうダメ我慢できない。面白いんだけど!」


 ダガーとアリスがケラケラと声を上げて笑った。


「全員が野郎だったらそれでもいいけど、さすがにね。行くぞ、おー、でいいんじゃない?」


 耳をぴこぴこと動かしながらうれしそうに言うアリス。正直獣人は性別がわかりにくい。愛らしい顔立ちをしていても男だというのはよくある話だ。犬や猫を見ても雄雌で顔立ちが違うわけではないことが彼らにも反映されている。しかしアリスは名前とつけているアクセサリーから女の子だということがわかる。


「じゃ、改めていくぞ」


 これまた愛らしい顔立ちをしているものの、心地よいバリトンの声をしているダガーの掛け声に全員で「おー」と声を上げた。全く聞こえなかったが一応エテルも声を上げてくれたらしい。


「ちなみにさー、別に耳とか尻尾とか触るのはいいんだけど。触る時は一言声かけてくれよな。どうも犬猫と同じ扱いで突然触ってくる奴がいるから。失礼だろ普通に」

「わかった、触るときはモフモフするって叫んでから触る!」

 そう言いながらも既にアリスの耳を撫で回している。耳の大きさはダガーの方が大きいのだが、ダガーはあまり耳を触られるのが好きではないという。猫以上に犬の方が音に敏感なので触られると気が散ってしまうらしい。

 尻尾は逆にアリスはあまり触ってほしくないらしい。ダガーは太くモコモコな尻尾で、好きなだけ触りなと笑ってくれたのでモカは目を輝かせている。


「ちなみに俺たち双子な」

「うそ!?」

「そうなんだ」


 飛び跳ねて驚いたモカはともかく、エテルも少し驚いたようだ。


「ふふー、普通の人って大体びっくりするんだよね。お母さんが猫系、お父さんが犬系。だから私は見た目猫だけど、犬と同じくらいの嗅覚は持ってるんだよ」

「おれも犬の血が強いけど、またたびはちょっと苦手だ」


 見た目はきれいに分かれたが特徴は半々くらいだということだった。純潔の獣人は魔法を持っていない。長い歴史の中で人と交わってきてわずかに魔法の力が芽生えた者たちだ。獣人と獣人の子供なので、二人は特に魔法の力が弱いということだった。


「だからチームどうしようかなと思ってたんだ、強い人からしたら役立たずはいらないじゃん。困ってた、声かけてくれてありがとう。うれしかったよ」


 気さくに笑うダガーに、エテルは少しうつむいた。その様子にアリスが心配して声をかけてくる。


「どうしたの? あ、魔法の力は弱いけど他の事は役に立って見みせるから任せてよ。私ジャンプで二階まで届くよ? どんな木でも一発で登れるし」

「いや、違うの。そうじゃなくて」


 一瞬言い淀んだが、意を決して二人を正面から見つめた。


「いろんな事情を抱えた人がいるんだなって思って。獣人は普通の人より能力が高いから、二人は楽勝でこのイベントできるんだろうと思ってた。考えてみたら私、獣人のこと何も知らないのに勝手に決めつけて。自分本位だったなって」


 その言葉に二人はキョトンとした。アリスは眉をハの字にして、ダガーはケラケラと明るく笑う。


「よくわかんないけど、エテルすげー!」


 突然モカがうれしそうにそんなことを言った。意味が全くわからずエテルは首をかしげる。しかし二人は何となく意味がわかったらしくうんうんとうなずいていた。


「そう思ったことを後悔するのって結構珍しいっていうか。なかなかできないよ、エテルって優しいんだね」

「え?」


 困ったように笑っていたがすぐに優しい笑を浮かべるアリスに、エテルは戸惑ったように視線を返す。するとダガーも明るくこんな風に言った。


「そうそう。私には関係ないし、とか思うもんだよ。他人の事情なんてどうでもいい、とかさ。それを反省するってちょっとできないことだよ」


 今の言葉からわかるのは、彼等も獣人であるが故に差別されてきたのではないかということだ。自分で理解できない事は他人には事情を押し付け違うものである。

 そんな二人がひねくれずにこうして素直にエテルを褒めている。エテルのことをすごいと言っているが、この二人こそ凄いんじゃないか。そう思ったら自分の言動がなんだかとてもみっともない気がした。

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