ラム2 シャロンとラム
歩いてきたラムにシャロンは駆け寄る。
「どうだった?」
「袖に振られたって感じかな。どんな生活を送ってきたのかわからないけど、だいぶ苦労したのかもしれない。他人を全然信用してないって顔に書いてあるかのようだった」
見た目が綺麗なだけに氷のように冷たい雰囲気は迫力があった。結局は一言もしゃべらずに仲間とともにどこかに行ってしまった。
「上級生が声をかけてきたら、利用価値があるかどうか品定めしてるってわかってるみたいだったな。この学校の行事を知っているんだ、彼女」
「やっぱり家族が地位の高い魔法使いってことでしょ。私は何も聞かされてないから、特に問題があるとか逆に気を遣わなきゃいけないわけじゃないと思うけどね」
親がこの学校を取り仕切っているため、シャロンには時折あまり表沙汰にできない事情が知らされることもある。例えばとんでもない問題児が入学した時や、王家の人間がこっそり視察に来た時などだ。
表立って何かをするわけではないが学校の印象が悪くならないようにさりげなくフォローするのも彼女の役目。その彼女が何も聞いていないのなら良くも悪くも何かある、というわけではないらしい。
「近寄ってみて改めて見てみたけど。やっぱり彼女の魔法の強さが全くわからなかった。魔法そのものがあるのは間違いないんだけど、何か蠢いているような感じで読み取れない」
「霧がかかってるような感じってこと?」
「なんとなくね。それか日が落ちる直前の夕暮れみたいだ。目を凝らしてみようとしても薄暗くてよく見えない、みたいな。感じさせない力、もしくは守りの力が強いのかな」
それは、この学校始まって以来強力な魔力を持っていると言われているラムよりも強いということになる。それがどれだけ大変なことか、学校側の人間であるシャロンにとっては由々しき事態だ。もしそれが本当なら彼女は特別待遇にするべきだ。悠長に勉強している時間がもったいない。
「飛び級にしてもらうべきなんじゃないの?」
「それを勝手に働きかけていいわけじゃないよ。ま、一応お父上に相談してみたら? 学校のためにはなるかもね」
そう言うとラムはイベントに参加するために歩き出した。シャロンは内心失敗したなと後悔する。あくまでシャロンは学校側の人間なのだと自分で線引きをしてしまったようなものだ。こういうところがあと一歩踏み込んで信頼してもらうえない原因になっているというのに。
――別に、お父様の手先ってわけじゃないのに、私。
それを口に出したところで信じてもらえないかもしれないが。
チラリと遠くの方を見ると、エテルはどうやら四人で行動するらしい。彼女がいれば謎解きなんてあっという間に終わってしまうだろう。早く解いた方が良い成績になるというわけではないが、それでも最短の時間でクリアとなればそれなりに話題になる。
(お父様には本当に彼女は一般人なのか、何もないのか聞いておこうかな)
それをやったからなんだというわけではないが。ただ、自分が安心したいだけなのかもしれない。ただの一年生だ、と。