推し活ラプソディ
第一話〜大好きな推し様〜
私の大好きな人。つまりは最推し。
人気声優の海月夕生さん。
あなたが生きている、ただそれだけで世界は輝いていた。
今日はそんなあなたのイベント当日。
晴香「ああ、私はあなたに会えばその眩しさに目が潰れその熱に焼かれてしまう!
しかし、あなたと言う名の太陽に焼かれて死ねるなら本望だ!」
一緒に来た友人(女性)「まーた晴香がおかしな事言ってるよ笑」←慣れた
自己紹介。
〜宇奈月晴香(31)〜女性
売れない小説家をしながら小さなラジオ番組「黒い森のさくらんぼケーキ」を開設
お豆腐メンタル
マイペースな個性派
〜魚崎〜男性
黒森ラジオのスタッフ
晴香と10年来の友人
ツッコミ担当
メガネ
〜福田〜男性
黒森ラジオのスタッフ
晴香と10年来の友人
場の盛り上げ担当
ぽっちゃり
〜海月夕生(33)〜男性
人気声優
体が弱い
努力家で前向き
話上手
〜島谷(33)〜男性
海月と同期の声優
夕生をクラゲ君と呼んでいる
第二話〜推しと共演〜
スタジオにて。
晴香「こんばんは、相変わらず売れない小説家の黒森ラジオのショコラ(ラジオネーム)です
さて、今日ものんびりとやっていきましょう」
スタッフ福田「ショコラさん」
晴香「はいはい、何でしょう?」
スタッフ福田「ショコラさんは推しがいるという事でしたね」
晴香「唐突ですね!いますけど!」
スタッフ福田「確認ですけどその方は声優の海月夕生さんで合ってますか?」
晴香「はい、そうですよ」
スタッフ福田「大好き?」
晴香「もう大好き!」
スタッフ福田「はい、という訳で本日、来てくれています」
晴香「はい?」
スタッフ魚崎「どうぞ、お入り下さい〜」
ガチャ。(スタジオの扉を開ける音)
スタッフ福田&スタッフ魚崎「開けて飛び出てジャジャジャーン♪」
海月「どーもー海月夕生でーす!」
晴香「へぁ!?海月さー・・・わあぁ!!」
ガターン!!(椅子ごとひっくり返った)
海月「えぇ!?大丈夫ですか!?」
スタッフ魚崎「ちょっとちょっとショコラさん、大丈夫ですか?ククク・・・」(必死で笑いを堪えようとしている)
スタッフ福田「いやーこれはまた見事に椅子から転げ落ちましたねぇ」
海月が手を貸そうと近付く。
晴香「手は!手はいけません手は!!」
パニック状態の晴香はズザザザっと後ずさる。
なんとか立ち上がり椅子に座ろうとするが・・・。
スタッフ福田「ショコラさん、足ガクガクじゃないですか、ちゃんと座れます?笑」
晴香「だめだめだめ、これはajxtpw(言葉になってない)」
スタッフ魚崎「(腹抱えて大爆笑中)」
海月「手めちゃ震えてるけど大丈夫ですか?」
晴香「す、すみません、驚きのあまり動揺が・・・」
スタッフ魚崎はなんとか笑いを抑えメガネをくいっと上げた。
スタッフ魚崎「はい、少しラジオをストップしましょうか」
ラジオ一旦ストップ。
晴香「魚崎さん、何故、私が転んだ瞬間止めなかったんですか?」
スタッフ魚崎「その方が面白いからに決まってるじゃないですか」
晴香「スタッフ二人、後で覚えてなさいよ」
海月「ショコラさん落ち着きました?」
晴香「はい・・・ありがとうございます」
スタッフ福田「良かったですね、海月さんに会えて」
スタッフ魚崎「ぶっくく」(まだ笑ってる)
晴香「ちょっとスタッフさぁん!なんて事してくれたんですか!
ダメだって海月さんをこんな場所に呼んじゃ・・・」
スタッフ魚崎「いいでしょ、来てくれたん
ですから」(やっと笑いが収まった)
スタッフ福田「そうですよー、ショコラさんの為にわざわざ来てくれたんですよ?」
晴香「それはありがたい話ですけど」
スタッフ魚崎「じゃあ、後はよろしくお願いしますね
事前にお伝えした通り、雑談して頂ければ大丈夫ですので」
海月「分かりました」
晴香「え、ちょっと待って!スタッフさん達、どこ行く気なの!?」
スタッフ福田「いやーせっかくなので"二人でじっくり"お話をしてもらおうかと」
晴香「いやいやいや、鬼か!推しと二人きりは無理ですって!」
スタッフ魚崎「大丈夫ですって!」(ですって重ね攻撃)
晴香「そんなの海月さんだってこま・・・」
海月「ショコラさん、僕と"二人で"お話ししましょう」(キラキラ〜)
海月はすでにこの状況を楽しみ初めていた。
晴香「はーい♡」
スタッフ魚崎「乙女か!」
スタッフ福田「ショコラさん、俺達と話す時と対応違い過ぎません?笑」
晴香「そりゃあ大好きな人と"その他"じゃ違いますよ」(照れ照れ)
スタッフ魚崎「はいはい(怒)、じゃあ後はお二人で楽しんで下さ〜い」
スタッフ福田「また後で〜」
バタン。(扉閉まる)
晴香「本当に行っちゃったよ・・・トホホ」
やっとラジオ再開。
晴香「あの、海月さん、今日はこんな訳の分からないラジオ番組に出て頂いてありがとうございます」
海月「いえいえ、楽しみましょう!」
晴香"うぅ、笑顔が眩しい、推しが尊い・・・"
雑談後。
海月「また今度この番組に来たいです」
晴香「はい、ぜひぜひ」
スタッフ魚崎「どーぞ、どーぞ、こんなラジオ番組で良ければいつでも来てやって下さい」
福田「ショコラさんも泣いて喜びますよ」
晴香「またこのスタッフ二人は勝手に」
晴香"その後、海月さんは本当にラジオ番組に出演してくれた
最初は社交辞令でまた来ますって言ってくれたのかと思ってたけど
まさか本当にまた来てくれるなんて!"
海月「ショコラさんって凄く個性的な人ですよね」
晴香「そうですね、個性的だけは誰にも負けないと思いますよ」
海月「ほんと面白いし見てて飽きないです」
晴香「私は面白くしようとしてるつもりはないんですけどね」
海月「それはある意味凄い」
晴香「ですが、海月さんに楽しんで頂けてるなら何よりです」
海月"あ、笑った"
番外編〜エレベーターで〜
魚崎&福田と晴香は別の用事があり、晴香が二人をエレベーターまで見送ろうとした時だった。
エレベーターに乗った魚崎が死角となる場所から海月が来るのを察知。
福田と一瞬、目を見合わせると春花にあっかんべぇと人差し指で片目を下げた後、福田も人差し指で豚鼻を作って見せた。
晴香「!べろべろばぁ」
晴香も負けじと返すがその直後、エレベーターの死角となっている横から海月が登場した。
海月「え、ちょっショコラさん!?何やってるんですか笑」
春花「ガーン、う、海月さん・・・」
エレベーターの扉が閉まるまでの間、魚崎と福田は遠目から晴香を指差してゲラゲラ笑う素振りをしている。
晴香「あいつら・・・ち、違うんです、今のは決して海月さんに対してやった訳では決してなくですね・・・」
海月「クスクス、大丈夫ですよ、魚崎さんと福田さんにやったんですよね?」
晴香「は、はい・・・ホッ・・良かった」
海月「ショコラさんって本当にスタッフさんと仲良いですよね」
晴香「友人になってからもう10年の付き合いですからね」
海月「長いですねぇ」
晴香「はい」
海月「ちょっと妬けますね」
晴香「ふふ、推しに妬いてもらえるなんて嬉しいです」
海月"割と本気で言ってるんだけどなぁ・・・さて、どうしたものか"
第三話〜推しとデート〜
三回目の共演ラジオ終了後。
一緒に食事をしようと海月さんが提案してくれて4人で行く事になった。
魚崎「お疲れ様です!カンパーイ!」
福田「かんぱ〜い!」
海月「乾杯ー!」
晴香「か、かんぱい」(隣に推しが座っている為ど緊張)
海月「予定が合って良かったです」
福田「晴香、海月さんに誘ってもらえて良かったね」
番組が終わったので通常の呼び方&喋り方に変更。
晴香「うん・・・あの、海月さん、今日も来てくれてありがとうございました、食事まで誘って頂いて」
海月「いえいえ、こちらこそ楽しかったです
ショコラさん、名前まだ聞いてなかったですね」
晴香「はい、宇奈月晴香です」
海月「晴香さんね」
晴香「推しが・・推しが私の名前を・・・」(くらぁ)
海月「ちょっ、大丈夫ですか!?」
晴香「わぁ!大丈夫です!」
晴香は近寄ろうとした海月と距離を取ろうと壁ギリギリにへばり付いてる。
魚崎「だーっはっは!」(晴香を指差し大爆笑)
福田「あの、大丈夫です、この人これが日常なので」
海月「それはそれで心配なんですけど!?」
1時間後。
魚崎「ほら晴香、海月さんが呼んでるよ」
晴香「えー?まーた魚ちゃんは適当な事言って
私をからかおうったってそうはいかな」
海月「晴香さん」(キラキラ〜)
晴香「はーい♡」
魚崎「ほんっと何なのこの人」
福田「まぁ晴香だからね」
晴香「あの、何でしょうか」(机に指でののじを書く奴)
海月「今度、一緒にご飯食べに行きませんか?」
晴香「あ、はい、もちろんです!」
海月「念の為に言いますけど二人でですよ?」
晴香「え?」(カチコン)
海月「晴香さーん?やっぱり分かってなかったんですね」
海月は手を顔の前で振った。
魚崎「もう何でもいいから二人でどこへでも行ってきなさいよ
てか今の流れは二人ででしょうよ」
福田「まぁ、そこはほら晴香だから」
晴香「はっ!す、すみません、まさか推しに食事に誘われる日が来るなんて思っていなかったので・・・お誘いは嬉しいんですけど
私はともかく、海月さんは有名な方ですし、二人で出かけたりしたら変な噂が立ってしまいませんか?」
海月「メガネしたりマスクしたりすればバレないですよ
今回みたいに個室があるお店にするから安心して下さい」
晴香「そ、そうですか・・・なら行きたいです」
海月「良かった、いつにしましょう?」
晴香「はあ、そうですねぇ・・・」
魚崎「"晴香ちゃん"緊張して吐かないようにね♡」
福田「晴香の場合、あり得そう」
晴香「う・・・それは、ないとは言い切れない・・」
海月「なるべく緊張しないように話しますんで」
晴香「や、優しい・・・推しが、推しがこんなにも尊いよぉ!!」(天を仰ぐ)
海月「たったこれだけでそんなに感動します!?」
海月"まぁ面白いからいいんだけど"
魚崎「じゃあ解散しますか」
福田「そろそろ帰らないとねー」
晴香「そうだねー」(ショボン)
魚崎「ぶはっ、晴香あからさまにテンション下がり過ぎでしょ!」
福田「海月さんと別れがたいんだよね」
魚崎「子どもか!」
晴香「ギクッ・・・そ、そこまでお子ちゃまじゃないし」
魚崎「もうおばちゃんだもんねー」
晴香「いーだ!」
海月「はは、ほんと晴香さんは面白いですねぇ」
晴香「海月さんまで!?」
魚崎「まぁ晴香は絶滅危惧種みたいなもんですから」
福田「あーそれは分かる、珍生物というかね笑」
晴香「何よそれ!」
海月「なるほど」
晴香「何で海月さんまで納得してるんですか」
海月「ははは、すみません笑」
晴香「まぁ、海月さんが笑ってくれてるならいいか・・・」
後日。
晴香"今日の私は浮かれぽんちっち〜タラリラタラリラ〜♪"(脳内お花畑)
海月「晴香さん?」
ひょこっと海月が後ろから現れた。
マスクに帽子を深めに被っている。
晴香「わ!?海月さん!」
海月「すみません、待たせてしまいましたか?」(キラキラ〜)
晴香「え、天使ですか?」(真顔)
海月「うん?どういう事ですか!?」
晴香「海月さんは何を着ても似合う方だとは思っていましたけど
ニットがこんなに似合う人ってこの世にいるんですね
天使が舞い降りてきたのかと思いました一瞬」
(シャバダバ〜)
海月「大袈裟ですね!笑」
晴香「いえいえ、そんな事はありませんよ」
海月「じゃあ行きましょうか」
晴香「はい!」
カフェにて。
晴香「海月さんは私の事を覚えていないかもしれませんが
前に応援メッセージのリクエストをしていましたよね」
海月「あー!しましたね!」
晴香「その時、私がリクエストした夢を叶えて!って言葉を言ってくれたんです」
海月「あー!じゃああの時のショコラさんが春花さんだったんですね?」
晴香「覚えててくれたんですか・・・ありがとうございます」(じ〜ん)
海月「こちらこそリクエストしてくれてありがとうございます」
晴香「推しに、お礼言ってもらえた・・・ありがたや」(拝み)
海月"晴香さんって忙しい人だな笑"
晴香「あの、海月さん」
海月「何ですか?」
晴香「私の話ばかりになってしまって恐縮なんですが
実はリクエストをする前の1か月間、吐き気と精神的な落ち込みが酷かったんです」
海月「え、そうだったの!?今は大丈夫?」
晴香「はい、もう大丈夫です
それで、リクエストの言葉を聞いたちょうどその日から体調が良くなったんです
大好きな人の力って本当に凄いんだなって思いました
海月さんには感謝しても仕切れません
本当にありがとうございました」
晴香は深々と頭を下げた。
海月「僕の言葉がそんなに力になってたなんて知らなかったんで嬉しいです
治って良かったですね!
それにしても不思議な事もあるんですね、偶然にしては凄い」
晴香「偶然でもいいんです、あなたに救われた事実は変わりませんから
あなたは太陽なんです、人は太陽がなければ生きてはいけませんから」
海月「いや、待って、太陽とか初めて言われたんですけど?」
晴香「そう思ってる人は他にも沢山いると思いますよ」
海月「そうですかね?」
晴香「きっといます」
海月"あ、また笑った"
番外編〜やいのやいの〜
酒の場。
魚崎「晴香、俺には分かる、お前から闇が見える」
晴香「やかましいわ!」
魚崎「あ、晴香酒注いで」
晴香「は?」
魚崎「は?じゃないのよw」
海月「ふはっ笑」
最近、晴香がすっかりツボに入ってしまった海月。
晴香「ごめんごめん、今素だったw」
魚崎「あーあ、これが普通の女ならはーいって注いでくれるんだけどなぁ」
晴香「私に注がせたら高くつくんだから!」
魚崎「仮にも推しが隣にいるのに全く
そんなんだから彼氏できないんだぞ!」
晴香「最近彼女にフラれた魚ちゃんに言われたくありませんー」
魚崎「うっせーわ!」
福田「いつも騒がしくてすみません」
海月「いやいや!楽しませてもらってますよ」
福田「だって、良かったね晴香」
晴香「だね福ちゃん!
海月さんに楽しんでもらえてるならこれ以上の幸せはないよ!」
魚崎「でしょうね!!」
海月「あはは笑」
15分後。
魚崎「で、その人がさ」
晴香「魚ちゃん魚ちゃん、シーシー!お願い一回、一回黙って!お腹痛いからw」
海月"晴香さんってこの二人の前だとよく笑うんだよなぁ"
晴香「海月さんすみません、海月さんの前でこんな大笑いしてしまって」
海月「そんな事ないです、楽しいのはいい事ですよ」
晴香「ありがとうございます・・・はぁ、今日も海月さんは尊いですね」
海月「あはは、ありがとうございます笑」
番外編〜二人がいなかったら〜
海月「魚崎さんと福田さんって何繋がりで仲良くなったんですか?」
晴香「二人とも元々はネット友達なんですよ」
海月「え、そうだったんですか?」
晴香「はい、ゲームから知り合ったんです」
海月「それが10年の付き合いになるって凄いですね」
晴香「ほんとですね」
海月「春花さんにとって二人は特別な感じがします」
晴香「そう見えます?」
海月「はい」
晴香「そうですね、詳しくは言えませんけど
あの二人がいなかったら今生きていなかったと思います」
海月「え・・・?」
晴香「あの二人は私が一番辛かった時期に一緒にいてくれたんです
私にとってとても大事な友人ですよ」
海月「そっか・・・僕もその場にいられたら良かったな・・・」
晴香「いいえ、もしその場にあなたがいたら
私はあなたに嫌われていたでしょうね」
海月「え、どうしてですか?」
晴香「それは秘密です、あなたはこれ以上こちら側に来てはだめです」
海月「え、それはどういう・・・」
晴香「あなたの存在は私には眩し過ぎる」
海月"晴香さんが困ったように微笑むから僕はそれ以上、何も言えなかった
聞いてしまったら全てが壊れてしまうような気がした"
第四話〜幸せって?〜
何度目かのデート。
海月「晴香さんにとっての幸せって何ですか?」
晴香「それはもちろん海月さんが幸せでいる事です!」
どどーん!!
海月「すみません、その気持ちはめちゃくちゃ嬉しいんですけどそれ以外で・・・」
晴香「そうですね・・・ご飯が美味しいこと、空が青いこと、花が綺麗なこと、友人や家族と会えた時、きっと数えたらまだまだ沢山ありますね」
海月「・・・晴香さんはないものねだりするような人じゃないんですね」
晴香「な?そうなんですかね」
第五話〜告白〜
とある帰り道。
魚崎「あ!UFOだ!!」
魚崎は突然、空を指差した。
晴香「え、どこどこ!?何よー何もないじゃないって
あれ?二人がいない!」
海月「あの二人なら向こうに行きましたよ」
海月は二人が向かった先を指差す。
晴香「いつの間に・・・」
海月「気を使ってくれたみたいですね」
晴香「はっ、ご、ごめんなさい、私が海月さんのファンだからきっとあの二人が気を使ってくれたんですね
巻き込んでしまって申し訳ないです」
海月「んー、気を使ったのは晴香さんにじゃなくて僕にじゃないかなぁ」
晴香「え?それってどういう・・・」
海月「僕が晴香さんを気に入ってるのをあの二人は気付いてるんだと思います」
晴香「海月さんに気に入ってるだなんて!幸せ過ぎます!・・・ありがとうございます!」(拝み)
海月「たぶんまだ全部伝わってないと思うんではっきり言いますけど
僕、晴香さんの事好きですからね?」
晴香「え?」
海月はじっと晴香の目を見る。
晴香「えー!?」(地球の果てまで)
第六話〜二度目の告白〜
島谷「で、晴香さんとはどうなってんの?何度か会ってるんでしょ?」
唯一事情を知る島谷。
海月「うん、何度か会った後、告白したよ」
島谷「え、くらげ君の方から?」
海月「うん」
島谷「そっかそっかー!じゃあ晴れてお付き合いを・・・」
海月「フラれたよ」
島谷「え、何で!?だってあの子、くらげ君のこと
ちょー大好きじゃん!」
海月「自分じゃ僕に釣り合わない、自分といても僕が幸せにならないからって」
島谷「うわぁ、それ凄い切ないな・・・本当はくらげ君に告白されて浮かれるくらい嬉しいはずなのに
その気持ちを押し殺して断ったって事でしょ?
本当にくらげ君の幸せだけを願ってるんだね」
海月「うん」
島谷「くらげ君はさ、それでいいの?」
海月「その話なんだけど島谷君、ちょっと手伝って欲しい事があるんだよね」
・・・・。
島谷のイベントにて。
島谷「えー今日はゲストで来てくれたくらげ君からある人に伝えたい事があるそうです」
会場がざわざわとし始める。
海月「僕はある人に告白をしてフラれました」
「えー!?」
「誰ですかそれー!!」
会場にいた女性達が声を上げる。
島谷「シー!お願い、今だけは静かにしててあげて!」
島谷が皆んなが静まるように指示を出すと会場は静まり返る。
海月「今追いかけても彼女の意思は変わらないとその時は追いかけるのを辞めました
でも、今ここでもう一度好きだと伝えます
"晴香さん"、もし今、この場にいるならここに来て欲しい」
「きゃー!!!」
会場にいた女性達の悲鳴が響き渡る。
晴香は急いでステージ上に上がった。
晴香「何やってるんですか・・・私、言いましたよね?
私とあなたじゃ釣り合わない
私といてもあなたは幸せにはなれないからって、きゃ!?」
ぎゅっ。
海月「うん、聞いた、でももう決めたから」
晴香「うぅ・・・」
晴香「は海月にしがみついた。
それと同時に歓声が上がる。
島谷「うんうん」(泣)
海月「何で島谷君が一番泣いてんの」
島谷「いや、なんか感動しちゃって・・・ずびっ」
海月「晴香さん、僕の彼女になってくれますか?」
晴香「はい、はい!」
「何でその人なんですかー?」
「何でですかー!」
と言うヤジが飛ぶ。
晴香「す、すみませ、むぅ?」
謝ろうとした晴香の口を海月が人差しで止める。
海月「こんなに一緒にいて楽しい人いないからね
それ以上の魅力は秘密かな」
「えーー!何ですかそれ!」
「信じられないー!」
海月「そう思うのは自由だけど、彼女は僕の大事な人だから傷付けるようなことがあれば出るとこ出るからね?」
し〜ん・・・。
島谷「言うじゃんくらげ君」
海月「まぁね」
晴香「あの、大丈夫なんですか?こんなイベントで大々的に言ってしまって・・・」
海月「うーん、大丈夫じゃないかもしれないなぁ
だから、もしヤバくなったら一緒に逃げてくれる?」
晴香「もう・・・あは、海月さんはちゃめちゃ過ぎですって!」
海月「晴香さんもね?」
番外編〜デート〜
付き合い始めて二度目のデート。
海月「晴香さん、手繋ごうよ」
晴香「ではまず手を洗って消毒してきますね」(ど真剣)
海月「そのままでいいから!笑」
晴香「うぅ・・・」
海月「!」
海月は晴香のたじたじな様子を見て何かを閃いたらしく。
海月「晴香さんから手を繋いで欲しいなぁ」
晴香「へ!?」
海月が晴香の前に手を出す。
晴香「は、はい、分かりました・・・」(カチコチ)
晴香が海月の手に触れようとした瞬間、
海月は晴香の手を両手でぎゅっと握った。
晴香は驚いてもう片方の腕をブンブンと振り回した。
晴香「!??ちょ!海月さん!?」
海月「最初に僕を振った仕返し♪」(ちょっと根に持ってる)
海月は一旦手を離す。
晴香「いや、あれはだからそのですね・・・」
海月「大丈夫、晴香さんが僕の幸せのことを本気で考えた上で自分の気持ちを押し殺してまで断ったんだってことくらいちゃんと分かってるよ
でも、悲しかったなぁ・・・」(いじわる)
晴香「〜!!」
晴香「はパッと海月の手を取り繋いだ。
その手はプルプルと震えている。
海月「ごめんごめん、ちょっといじわるし過ぎちゃっ・・・」
晴香「海月さんのいじわる・・・」
晴香は真っ赤にした顔で下を向きながらポツリと呟いた。
海月「ドキッ・・・」
海月"え、何この可愛い生き物"
二度目のデート。海月に何かが刺さった。
第七話〜対等で〜
島谷「クラゲ君は彼女に直して欲しいところとかってある?」
海月「直して欲しいと言うか、対等になりたいとは思うね」
島谷「ん?どう言う事?」
海月「彼女の中ではさ、今だに僕に付き合ってもらってるって感覚なんだよね」
島谷「あーなるほど、そう言う事ね、でもそれはさ
時間が解決するんじゃない?まだ付き合って半年も経ってないんだし」
海月「うん」
島谷「がんばれがんばれ
てかさ、最初は彼女の方がベタ惚れだと思ってたけど実はクラゲ君の方が彼女にベタ惚れなんじゃない?」
海月「痛いとこつくなぁ」
海月"彼女は良くも悪くも僕に何も求めて来ない
いつ僕が別れを切り出しても彼女は心のどこかで受け入れる準備をしてる
深入りして来ないし壁があるのを感じる
自分から電話やメールはほとんどして来ないし我儘も言わない
お酒に酔ってても甘えて来ないしまだ距離があるように思う
・・・と思っていたら"
デートの帰り道。
晴香「あの」
海月「どうした?」
晴香「今日はあと5分だけそばにいてもらえませんか?」
海月「キュン・・・」
晴香「ダメですか?」
海月「5分でも10分でも20分でも一緒にいるよ!」
(くわっ)
晴香「やった」(小声)
海月「いや可愛いか!」
晴香「え?え?」
海月「ね、これからは呼び捨てにしていい?」
晴香「は、はい、呼んで頂けるのであれば」
海月「じゃあこれからは晴香って呼ぶね」
晴香「推しの呼び捨て・・・(ふらっ)」
海月「わぁ!?大丈夫!?」
晴香「だ、大丈夫ではないかもしれません・・・」
海月"僕も名前で呼んでもらおうと思ったけど今の状態だとショックで倒れかねないな・・・
ゆっくりいこう"
第八話〜泣いた形跡〜
付き合い始めて数ヶ月。
初めて晴香の方から電話がかかってきた。
僕は連れと食事をしている最中だった。
晴香「それなら、悪いのでまたの機会に・・・」
明らかに声色に元気がない。
海月「ちょっと待って、すぐ行くから、今どこにいるの?」
晴香「駅の近くの公園に」
会うと晴香の目の周りが赤くなっていた。
何があったかは分からないけどきっと泣いたんだろう。
やっぱり会いに来て良かった。
晴香「すみません、急に呼び出してしまって
海月さんの顔が見たくなって・・・」
晴香は服の裾をギュッと掴んでいた。
海月は今にも泣き出しそうな晴香をそっと抱き締めた。
海月「いや、頼ってくれてありがとう」
晴香「うぅ・・海月さん、私、今辛いです」
海月「うん」
海月「そっか、魚崎さんが手術を・・・」
晴香「上手くいく可能性は半分だって・・・」
海月「不安かもしれないけど今は魚崎さんを信じよう
きっと大丈夫だよ」
晴香「はい・・・」
30分後。
海月「時間、まだ大丈夫だよ?」
晴香「いいえ、もう大丈夫です、残りの時間はどうか体を休めて下さい
時間作ってくれてありがとうございました」
海月「(軽くデコピン)」
晴香「!あ、あの?」
晴香はおでこを両手で押さえながら質問する。
海月「こーら、大丈夫じゃないでしょ?こんな時まで僕の心配しないの」
晴香「海月さん・・・」
1時間後。
海月「少し元気になったみたいだね」
晴香「はい、やっぱり海月さんに会うと元気出ますね」
海月"ぐ・・・帰したくない!帰したくないけど・・弱みに付け込むのはだめだ"
海月「良かった、駅まで送るよ」
晴香「ありがとうございます」
その後、手術は無事成功し、戻ってきた魚崎はあっけらかんとしていた。
晴香「もー!心配したんだからぁ!」(ぽかすかぽかすか)
魚崎「痛いいたい!俺、病人!」
海月「良かったです、魚崎さんも晴香さんも元気になって」
魚崎「え、晴香元気なかったの?」
晴香「うん、まぁ・・・」
海月「ずっと魚崎さんの心配してたんですよ晴香さん
」
魚崎「ほほーん?」(ニヤニヤ)
晴香「腹立つ顔だなぁもう」
魚崎「俺は生まれつきこういう顔ですー」
晴香「きー!」
海月「ははは」
第九話〜素直〜
島谷と海月が飲み会をする際にたまたま居合わせた晴香。
島谷「晴香さんが浮気したらくらげ君どんな反応すんだろね?」
晴香「あはは、反応してくれたらいいんですけどね」
海月「いやするでしょ」(ずいっ)
トイレから戻って来た。
晴香「わ!?海月さんいつの間に・・・」
海月「ちょっと、島谷君、晴香に変なこと吹き込むのやめてよね」
島谷「ごめんごめん」
海月「それと、ダメだからね浮気しちゃ」
晴香"か、可愛い・・・"
晴香「しないですよ、海月さんは私が海月さんしか見えてないの知ってますよね?」
海月「うん、知ってる」
島谷「うわー腹立つわ〜、余裕ぶってると後で痛い目見るよ?」
海月「って言ってくるんだけど」
晴香「大丈夫ですよ、海月さんよりカッコいい人なんてこの世界にいませんから」
海月「・・・っ・」
島谷「あれ、くらげ君ひょっとして照れてる?」
海月「このコねー表現がストレート過ぎるのよ」
島谷「もし逆の場合そうなっても晴香さん怒らなそうだよね」
晴香「え、海月さんが浮気したらですか?」
島谷「そうそう」
海月「こらこら、意地悪な質問しないの」
海月"でも、ちょっと気になるかも
浮気なんて許さないですからね!とかって言うのかな"
晴香「それで海月さんが幸せならそれでいいです」
海月「え」
晴香「私だけでは何かと不十分でしょうから
海月さん、どんな場合でもあなたが一番幸せだと思う選択を取って下さいね」
ぎゅっ。
晴香「え!?あの、海月さん??」
海月「いや、今のは抱き締めるタイミングでしょ
」
島谷「うん、俺もそう思うわ、早く帰ってよしよししてあげなさいな」
海月「うん、そうする」
第十話〜結婚〜
結婚式当日。
魚崎「デレデレしてんじゃないよ」
晴香「だってタキシード姿の海月さんめちゃくちゃカッコいいんだもん!」
海月「ありがとう、でも、今日の主役は花嫁である晴香だよ?」
晴香「いえいえ!今日も明日も明後日も主役はあなたですよ」
(シュビデュバ〜)
福田「相変わらずアホアホだね晴香は」
魚崎「海月さん、ほんとにいいんですか、こんなのと結婚しちゃって
結婚にはクーリングオフ制度なんてないですからね」
晴香「ちょっと魚ちゃん!変なこと言わないでよ!
海月さんの気が変わったらどうしてくれんのよ!」
海月「はは、大丈夫だよ、変わらないから」
晴香「海月さん・・・キューン」
魚崎「やれやれ」
晴香「あ、ちょっとトイレ行ってきますね」
海月「うん」
魚崎「海月さん」
海月「はい、何でしょうか」
魚崎「晴香は、普段はおバカな奴ですけど、好きな人にはバカが付くほどめちゃくちゃ一途なんで
暴走することがあっても許容してあげて下さい」
海月「はい・・・分かりました」
海月"やっぱり長い付き合いなだけあって晴香の事よく分かってるんだな"
福田「晴香と俺らは普段はあんな感じでバカやってますけどマジで大事な友達なんでよろしくお願いします」
魚崎「大事にしてやって下さい」
海月「もちろんですよ!」
海月"晴香は周りの人達に愛されてるんだなぁ"
晴香がトイレから戻って来ると海月が頬を膨らませていた。
何やら拗ねているようだ。
晴香「海月さんどうしたんですか?」
晴香"ほっぺ可愛い"
海月「ヤキモチ焼いてる」
晴香「え、何にですか?海月さんを妬かせるなんて凄い人ですね!」
海月はじーっと晴香を見つけた。
晴香「?」
海月「秘密」
晴香「えー?何で秘密なんですか!」
海月「悔しいから言わない」
晴香「いいじゃないですか教えて下さいよ〜!」
海月「やーだ」
晴香"なんかよく分かんないけど可愛い"
そして式が始まり・・・。
晴香「これから大変なことも沢山あると思いますが
私のこの命と生涯をかけて海月さんの幸せと笑顔を守ります」
海月「僕の言うことなくなっちゃいましたね!
えー晴香さんは本当に個性豊かなので
この先5年、10年と一緒にいても飽きないと僕は思っています
何て言うんでしょうね、予測不能な動きをしてくる動物みたいな感じなんですよね」
晴香「え、私のことずっとそんな風に思ってたんですか?」
海月「僕は出会った時からずっとそう思ってたよ」
会場から笑いが巻き起こる。
その後。
海月「式終わったね」
晴香「はい、ああ、あと数分であなたの輝くタキシード姿が見れなくなるなんて!今のうちに目に焼き付けておかなければ!」
海月「タキシードなんてスーツみたいなものでしょ!」
晴香「推しのタキシード姿なんですから特別なんですよ!」
海月「もう旦那になるんだから推しでは無くなるんじゃない?」
晴香「いえいえ、とんでもない、私は生涯あなたの推し活ライフしますよ」
晴香は執事のように手を胸に当てた。
海月「旦那の生涯推し活ライフって初めて聞いたよ!笑」
晴香「あなたの為に今考えました」(シャララ〜)
海月「晴香は本当に僕のこと好きだなぁ笑」
晴香「そりゃあ好きですよ、世界で一番」
海月「そんなサラッと好きって言えるのに誓いのキスで鼻血出すんだもんなぁ〜」
晴香「う・・それは申し訳ない、です・・・」
海月「夫婦になったのにキスで毎回、鼻血出されたらこれから身が持たないよー?」
晴香「そ、それは・・・頑張って慣れます・・・」
海月「というか、キス初めてじゃないじゃん」
晴香「それはタキシード姿のあなたが眩し過ぎてつい・・・」
海月「誰がどう見ても花嫁姿の晴香の方が眩しいと思うんだけど」
晴香「ふっふっふ、海月さんの輝きの前にはウエディングドレスの美しささえも霞んでしまうのですよ」
海月「本当に晴香はブレないなぁ笑」
番外編〜海月さん以外にも〜
実は晴香は他にも好きな声優がいた。
島谷「晴香さんは好きな声優ってくらげ君以外にいるの?」
晴香「はい、坂野さんと三木さんの声好きです」
海月「え?待って聞いてないんだけど?」
島谷「聞いてなかったんかい!」
海月「でも一番好きなのは僕だよね?」
晴香「え」
晴香の目が明後日の方向を見る。
海月「んー?どうして僕と目を合わせないのかなぁ?」
ニコニコしながらガシッと晴香の肩を掴む海月。
島谷「拗ねない拗ねない」
海月「拗ねてませんけどー」(むすっ)
島谷「いや、クラゲ君思いっきりむくれてるよ?
鏡見てみなよ」
第十一話〜写真〜
海月「ねぇ、部屋に僕の写真飾るの辞めない?
さすがに恥ずかしいんだけど」
晴香「何ですって!?ピシャーン(雷が落ちる音)、い、今なんと・・・」
海月「写真そろそろ片付けようよって」
晴香「そんな殺生な!いいじゃないですかこんなに素敵な写真なんですから!」
海月「いや、そういう事じゃなくてね?」
晴香「推しの写真くらい飾ったっていいじゃないですか」
海月「目の前にいるんだからもう充分じゃない?これから毎日顔見るんだよ?」
晴香「いえ、それとこれとはまた別です」(真顔)
海月「ふ〜ん?じゃあ僕も晴香の写真飾ろうかなぁ」
晴香「うわぁ!それだけは辞めて下さい!自分の顔なんかできる限り見たくないです!」
海月「そうなるでしょー?」
晴香「海月さんはいいんです!有名人なんですから
私は一般人なんですよ?」
海月「うん、よし、じゃあこうしよう!一緒に写真撮ろう?それで飾ろう」
晴香「えー私の顔はいらないですよ、ぶーぶー」
海月「いや僕がいるから」
晴香「分かりました」(口がへの字)
海月「変な顔になってるよ晴香」
晴香「私は産まれた時からこの顔なんですよー」
海月「そんな訳ないでしょ笑」
海月は晴香の頬を軽く引っ張る。
晴香「にゃにするんでふかー!」
海月「あはは」
海月"良かった、やっと少し慣れてくれたみたい"
第十ニ話〜役に立てたなら〜
晴香は僕と同じで胃が弱い。
その為、食事の内容もよく似ていた。
海月「晴香の作った食事を食べ始めてから体調が良くなったよ、ありがとう」
晴香「うぅ、それは良かったです・・・私が作るものは質素なものが多いのでお口に合うか心配だったんですけど」
海月「ううん、美味しいよ、それに晴香の料理は優しい味がするんだよね」
晴香「海月さんの役に立てる日が来るなんて!」
海月「ねぇ、もう結婚したんだしそろそろ名前で呼ばない?」
晴香「え!?」
海月「晴香も海月になったんだから
はい、じゃー呼んでみよう!3、2、1!」
晴香「ゆ、ゆうせい、さん・・・」(赤面)
晴香はプルプルと震えている。
海月「・・・」
晴香「どうして黙ってるんですか・・・」
海月「いや、ごめん、思ってたより破壊力あった」
夜。
寝付きが悪いと思った僕はなんとなく晴香に読み聞かせをしてもらいたい気分になった。
晴香「え、私が読み聞かせですか?でも私は夕生さんみたいに上手には読めないですよ?
それならプロの方のラジオとか読み聞かせの動画を聞いた方がいいんじゃ・・・」
夕生「いや、晴香に読んで欲しいな」
晴香「わ、分かりました」
朝。
夕生「晴香の読み聞かせ、凄いよく眠れたよ」
晴香「少しでも夕生さんの役に立てて良かったです
私、自分の声嫌いだったんですけど夕生さんがぐっすり眠れているのを見て少し好きになれた気がします」
夕生「僕は晴香の声好きだしいいと思うけどなぁ
また眠れない時はお互いに読み聞かせしようか」
晴香「はい!」
晴香"やったー夕生さんに褒めてもらえた!"
夕生「やったー褒めてくれた!」
晴香「え、今私、声に出てましたか!?」
夕生「ううん、でも晴香分かりやすいから」
晴香「そ、そんな分かられちゃうと困ります・・・」
夕生「どうして?」
晴香「だって恥ずかしいじゃないですか」
夕生「いつもあれだけストレートに言ってるじゃん」
晴香「それはそうですけど・・・」
夕生「まぁ、黙ってても9割型いつも好きって言ってるもんね?」
晴香「そ、そんなことまで分かっちゃうんですか!?」
夕生「今の冗談だったんだけどマジか」(自分で言って照れた)
第十三話〜誕生日プレゼント〜
夕生「晴香、来週誕生日だよね?」
晴香「はい」
夕生「プレゼント何がいい?」
晴香「そうですね・・・夕生さんの手料理が食べてみたいです」
夕生「え、でも僕、焼きそばくらいしか作った事ないよ?」
晴香「夕生さんの焼きそばがいいです」
夕生「せっかくの誕生日なのに本当にそれでいいの?」
晴香「はい」
夕生"ほんと晴香って欲がないなぁ"
誕生日当日。
晴香「う、う・・・世界一美味しいです・・・」
夕生"泣きながら食べてる・・・"
夕生「さすがに話盛り過ぎじゃない?」
晴香「私にとっては世界で一番なんです」
夕生「キュン・・・そっか、そんな泣くほど喜んでくれるとは思わなかったよ」
晴香「誕生日に夕生さんが作った焼きそば食べれるなんて幸せ過ぎます」
夕生「良かった良かった」
番外編〜遊園地〜
せっかくの遊園地ということでお互いに動物の耳を付けて回る事にした。
晴香「うわぁ!うさぎ耳姿の夕生さん可愛い過ぎて普通に助かる〜!ありがとうございます!」(パシャパシャ)
「え、あの子可愛くね?」(ヒソヒソ)
「友達と来てんのかな?声かけてみようぜ、あ、何だ彼氏と一緒じゃん」(ヒソヒソ)
夕生"うーん、どう考えても晴香の方が可愛いのに本人自覚ないんだよなぁ・・・"
夕生は写真を撮りまくっている晴香に近寄り手を掴んだ。
晴香「あ」
夕生「もう行くよ」
推しの優しい声に晴香は「はい」と幸せそうに答えたのだった。
番外編〜足ツボ〜
島谷の番組。
島谷「はい、今日はですね、ゲストで海月夫婦が来てくれてます
えー晴香さんが足ツボをやってみたいと言うことだったのでマッサージの先生をお呼びしてます
よろしくお願いします」
マッサージ師「よろしくお願いします」
島谷「ではまず、クラゲ君から」
夕生「え、僕もやるんですか!?聞いてないんだけど!」
マッサージ師「じゃあやっていきますね〜」
夕生「や、ちょっと!先生?待って待って、いたあぁい!!」
島谷「さすがクラゲ君、リアクションいいですねぇ分かってらっしゃる」
夕生「違う違う、今のは素で出たの!」
晴香「痛がる夕生さんも可愛いなぁ〜」
夕生「はぁはぁ、次は・・・晴香の番だからね」
マッサージ師「はい、やりましょう」
晴香「あー、確かにこれは痛いですね!」
島谷「あれ?意外とヘーキそう?」
夕生「先生、ちゃんと力入れてます?」
マッサージ師「めちゃくちゃ入れてますよ」
島谷「クラゲ君あんなに悲鳴上げてたのに凄いな!」
晴香「あ、そこ痛いかも・・・」
マッサージ師「これ胃のツボですね」
夕生「やっぱり胃が弱いんだ」
晴香「ちょっとヤバいかも・・・ゆうせいさぁん!!」
島谷「いや、叫び方ゆうせいさーんって笑」
夕生「可愛い過ぎか笑」
晴香「ゼーハーゼーハー・・胃はだめだめ・・・」
夕生「ねー、胃のツボめちゃ痛いよね」
島谷「二人とも胃が弱いからねぇ」
番外編〜結婚後〜
島谷「結婚生活はどう?」
海月「楽しいよ」
島谷「あれから一年でしょ?奥さんも最初の頃と比べたらだいぶクラゲ君に慣れてきたんじゃない?」
海月「そうねー、最初の一カ月なんて帰って来るたびに感動して泣いてたもん」
島谷「まじか、何その可愛いエピソード笑
でもさすがに一年経つともうないでしょ?下手したら玄関まで来ないとか」
海月「あー、泣くことは無くなったけど
その代わりにクラシック流して踊りながら出てくるよ笑」
アパートにて。
夕生「はー、今日は疲れたなぁ・・・」
ガチャ。
携帯でクラシックかける(近所迷惑になるので音量は小さい)&くるくると踊りながらキッチンから出て来る妻。
晴香「〜♪お帰りなさい夕生さん、今日はあなたの為にバラを用意しました
ああ、神よ、こんな素敵な旦那さんと出会わせてくれてありがとうございます
ああ、恋よ、私はあなたに出会う為に産まれてきた女なのでしょう」
夕生「ふはっ、ちょっと晴香何やってるの笑」
晴香「おやおや、どうしましたか?」
夕生「いやだって、あははは!
はー・・・さっきまで凄い疲れてたけど疲れが一気に吹っ飛んだよ、ありがとう笑」
晴香「?私は至って真面目なんですけどね?」
夕生「まじか笑」
晴香「ですがまぁ、夕生さんが笑ってくれたのでサプライズ大成功ですね」
夕生「うん、無茶苦茶、大成功だよ」
その日の夜。
夕生「晴香どうして肩にタオルなんか・・・」
晴香「肩揉みしますよ」
夕生「え、悪いよ!晴香も疲れてるでしょ?」
晴香「大丈夫ですよ、私、今日は休みでしたから」
夕生「じゃあ、お願いしようかな」
15分後。
晴香「夕生さん?」
夕生「うとうと・・・」
春花「ふふ、夕生さん、今日も一日お疲れ様でした」
海月「てな事があったんだ」
島谷「何それ、奥さん面白過ぎでしょ!めちゃくちゃ見てみたいんだけど!!笑」
海月「毎日じゃないけどね笑、疲れ果てて帰って来て爆笑したの初めてだよ」
島谷「面白過ぎるわー!なんか楽しそうな結婚生活だねぇ」
海月「本当、それに何故か僕が疲れてたり落ち込んでたりする時にやるんだよねー
言ってないのに不思議だよ」
島谷「へぇー何となくで分かるもんなのかな?」
海月「どうだろ」
島谷「体調も良くなって眠れるようになって面白くて
体まで労ってくれるんでしょ?最高じゃん」
海月「まー晴香は僕のこと大好きだからねぇ」
島谷「一回殴っていい?」
海月「え、やめて?」
島谷「毎日クラゲ君が大好きで仕方ないんだろうなー羨ましいなぁ」
海月「好き過ぎて辛いって泣かれたこともあったからねー」
島谷「やっぱ一回殴っていい?」
海月「だからやだってば!」
番外編〜信じたくても〜
結婚して一年。
自宅でお酒を呑んで晴香が酔った日のこと。
酔い潰れる寸前の晴香を布団に横たわらせた。
晴香「夕生さんはずっと私といてくれますか?」
夕生「もちろん、いるよ」
晴香「ありがとう・・ございます・・・すぅ」
夕生"だいぶ僕に慣れてくれたと思ってたけど晴香はまだ不安なのかな"
後日、夕生は晴香に内緒で三人で飲み会をした時のこと。
魚崎「晴香はあなたを信じてないというより
信じたくても信じれないが正しいですね」
夕生「信じたくても、か」
魚崎「晴香が自分に自信がないのは知ってますよね?」
夕生「それはもちろん」
魚崎「結婚して一年も経てば"普通"は慣れたり信じれるようになると思いますけど
晴香の場合、普通になりたくてもなれない葛藤みたいなものを抱えてる部分がありますから
"普通"を求めたいなら別れた方がいいですよ」
夕生「魚崎さん、なかなかズバッと言いますね」
福田「まぁあなたが普通を求めたら晴香は自分を押し殺してでも答えようとするでしょうね」
魚崎「晴香はおバカなくらい好きな人には愛情注いじゃうからねぇ」
福田「それは本当にそう」
夕生「僕は別れません、不安に思う時があったらちゃんと向き合っていきたいです」
魚崎「イケメンがイケメンな事言うとか狡いですねぇ」
福田「正直、最初はおもしろ半分で晴香を気に入ったのかと思ってましたけど
意外とそうでもないんですね」
夕生「面白い人だなとは思いましたけどふざけて誘った事は一度もないですよ
むしろ、僕はずっと本気でしたし
気付いてもらえるまでだいぶ時間かかりましたけど」
魚崎「"はーるかちゃん"は何と言っても鈍感ですからねぇ」
福田「うんうん、それは一理ある」
魚崎「海月さんも苦労してますねぇ」
夕生「分かってくれますか」
魚崎「そりゃあもう、まぁペット飼ってると思えば良いんですよ」
福田「晴香は警戒心強い動物ですよ」
夕生「あー確かにそんな感じです・・・」
魚崎「でも、好きなんですね?」
夕生「うー好きですよー」
福田「海月さん、だいぶ酔ってません?」
夕生「酔ってないですよー」
魚崎「いや、だいぶ酔ってるじゃないですか笑」
夕生「はるか・・・はるかがいない・・・」
魚崎「はー、やれやれ、福ちゃん、晴香に電話してあげて」
ルルル(着信音)
晴香「福ちゃんからだ、しもしも〜?」
福田「しもしも〜、今暇?暇だよね?」
晴香「家にいるから暇だけどなーに?」
福田「ちょっと訳あって俺と魚ちゃん、海月さんと居酒屋にいるんだよね」
晴香「ちょっと、何で二人と夕生さんが一緒に飲んでるのよ?」
福田「話はとりあえず後でするから」
晴香「後でってあのねぇ」
福田「とりあえず来てくれない?海月さん、"晴香の名前"ずっと呼んでるんだけど」
晴香「え、夕生さんが?もうしょうがないなぁ〜」
福田「という訳でよろしく〜」
15分後。
魚崎「あ、来たきた」
晴香「来たきたじゃないよ、全くもうちゃんと説明してよね!」
福田「話は後日の方が良いんじゃない?」
魚崎「ほら、海月さん、晴香が迎えに来てくれましたよ」
夕生「んー?はるか?」
晴香「夕生さん、晴香ですよー」
春花"あー可愛い"
夕生「はるかは・・・」
晴香「うん?」
夕生「僕が一番だよね?」
晴香「何言ってるんですか、当たり前じゃないですか」
終始ニヤニヤが止まらない晴香。
夕生「声も、一番がいいー」
晴香「あの日の事まだ気にしてたんですね・・・大丈夫ですよ、私は声もルックスも性格もあなたが一番ですから」
夕生「うん・・・すやすや」
晴香「ちょっ、夕生さん!可愛いけどここで寝ないで下さい!風邪引いちゃいますよ!」
魚崎「なーんだ、海月さんもちゃんと面倒くさいとこあるんだねぇ」
福田「意外な一面を見たね」
晴香「何呑気な事言ってんの二人とも!夕生さん運ぶの手伝ってよ」
魚崎「はいはい」
福田「しょうがないな」
帰宅してしばらくしてから
酔いが覚めた夕生はゆでだこのようになっていた為、晴香の溺愛モードが発動したそうな。
次の日の夜。
晴香「じゃあ私にどうしたら信じてもらえるかとあの二人に相談をしていたと・・・」
夕生「うん、呆れたよね・・・」
晴香「そんな事ないですよ!むしろそう思わせてしまって申し訳ないです」
夕生「僕は大丈夫だよ」
晴香「ですが夕生さんに大事に思ってもらえた事が嬉しいです
夕生さん、私が不安になるのはあなたのせいじゃありません
私自身の問題なんです
ですが、これだけは信じて欲しいです
私はあなたの事が本当に大好きで大好きで仕方ないんです
それだけはどれだけ不安になったとしても変わりませんし揺らぐことはありません」
夕生「晴香・・・ありがとう、でも、好きな気持ちは僕も負けてないからね?」
晴香「何をおっしゃいますか、私には敵いませんって」
夕生「それはどうかな?」
晴香「何故なら私は夕生さんの好きなところを語り始めたら夜明けまで終わりませんからね」
バーン!!
夕生「僕だって語れるけど?」
晴香「夕生さん、私にそんな気を使わなくても大丈夫ですよ?」
夕生「僕のトーク力を舐めてもらっちゃ困るなぁ」(にや)
晴香「え・・・あ、あの私やっぱり・・・」
ガシッと肩を掴まれる。
夕生「どこ行くのかなー?気を使って言っただけかどうかちゃんと最後まで聞いてもらわないと困るな」
夕生が話初めて3時間が経過。
晴香「あの、夕生さん、私そろそろ眠いんですけど・・・」
夕生「え、まだ半分も終わってないよ?」(にっこり)
晴香「ひえぇ・・・」
更にその1時間後、眠気に勝てなくなった晴香は意識を失った。
次の日の朝。
晴香「夕生さんを敵に回したら怖いです」
夕生「でしょー?」(勝ち誇った顔)
第十四話〜不思議な能力〜
夕生の出勤前。晴香は休みの日だったのだが・・・。
夕生「どしたの?」
晴香「ゆうせいさん、仕事行かないで・・・お願い」
晴香は完全に青ざめている。
こんな晴香を見るのは初めてだった。
夕生「晴香はどこか具合悪い?」
ふるふると怯えた様子で晴香は首を横に振った。
まるで銃でも突きつけられているのかと思うくらいに怯えている。
晴香「お願いします、今日だけは行かないで下さい
夕生さんが死んじゃう・・・」
あまりの晴香の錯乱状態に僕は放っておくのはまずいと判断し、その日の仕事を急遽休む事にした。
晴香「ありがとうございます・・・」
夕生「いいよいいよ」
夕生は晴香の頭を優しく撫でた。
夕生"とりあえず話は落ち着いてからの方が良さそうだな"
しばらくして晴香は落ち着きを取り戻した。
テレビを付けてニュースを見た僕は驚愕した。
何故なら、僕が仕事に行く途中で乗る予定だったバスが横転している画像が流れていたからだ。
バスに乗っていた乗客と運転手は全員死亡するほどの大きな事故。
あのまま晴香が止めてくれなければ僕は確実にあのバス事故に巻き込まれて死んでいた。
夕生「ひょっとしてさっき言ってたのってこの事?」
晴香「分かりません、でも、起きたら急に夕生さんが死んでしまう気がして・・・取り乱してすみませんでした」
夕生「いや、晴香のおかげで僕は無事でいられた
守ってくれてありがとう」
晴香「はい・・・」
晴香はホッとした様子だった。
夕生"どうして晴香はまだ起こってもいない事故を察知することができたんだろう
そう言えば晴香と付き合う前にも・・・"
交際前。
晴香「海月さん、火に気をつけて下さいね」
夕生「え、火?それは一体どういう意味でしょうか?」
晴香「例えば、火の消し忘れとか火のある場所に近付かないとか」
夕生「は、はい」
晴香「最近、火事のニュースが多いですから」
夕生「あ、なるほど!分かりました、気をつけときますね」
その後、調理をする為にコンロを使う日があった。
夕生"そう言えば火に気をつけてって晴香さん言ってたっけ・・・念の為に、あれ?さっき消したと思ってたのにスイッチがオンになってる
ふぅ・・・どうして晴香さんこうなるって分かったんだろう?"
魚崎「あー晴香はたまに妙に感が働くんですよ
俺や福ちゃんも何度か似たようなことがありましたし」
夕生「そ、そうなんですね」
魚崎「でも、晴香は霊能力者でも予知能力がある訳でもないんで本当に全くの感なんですよ」
夕生「す、凄いですね・・・」
魚崎「もちろん、当たらない場合もありますけど
責めるとかはしませんし
当たらなかったらラッキーって感じでいいんじゃないって僕と福ちゃんなんかは思ってますね」
夕生「そうですね、僕もそう思うようにします」
後日。
島谷「くらげ君が休んだ日の話だよねそれって」
夕生「うん」
島谷「奥さん凄くない?予知能力者じゃん」
夕生「いや、晴香自身もよく分からないって言ってたよ」
島谷「もうびっくりだよ・・・鳥肌立ってるもん」
夕生「僕もいまだに驚いてるよ」
最終話〜君は太陽だった〜
結婚して2年後に息子が産まれた。
晴香は朝、僕を玄関まで見送ろうとしてくれたが育児でかなりの睡眠不足になっており顔色が悪かった。
夕生「晴香ら大丈夫?顔色悪いよ」
春花「大丈夫ですよ・・・」(ふらっ)
夕生「晴香!!」
病院。
晴香「夕生さん、ごめんなさい、上手くできなくてごめんなさい・・・」
夕生「晴香大丈夫、大丈夫だから」
夕生は優しく晴香の頭を撫でた。
二日後、晴香は退院した。
夕生「僕も二週間休み入れたから」
晴香「え、そんなに休んで大丈夫ですか?・・・」
夕生「僕の方はなんとかするから今は自分の体を優先して
晴香は周りをもっと頼っていいんだよ」
晴香「夕生さん・・はい、ありがとうございます」
その後、晴香は周りを頼るようになったことで無事に息子は成長し、晴香の体も元気になった。
そしてその30年後息子は立派な大人になった。
晴香は落石事故に遭いそうになった僕と息子を庇って亡くなった。
いつも晴香は僕や息子を守ってくれていた。
息子が火傷しそうなのを庇ったり
僕が階段で転びそうになった時も晴香が僕の腕を引っ張り、その反動で自分が階段から落ちたりした。
どうしていつも晴香ばかりが傷付かなくちゃいけないんだろうと思った。
墓参り。
魚崎「晴香らしい生き様だったなぁ」
福田「本当にな」
魚崎「海月さん、大丈夫ですか?」
海月「正直、かなりキツイです」
魚崎「それだけ晴香はあなたに愛されていたって証拠ですよ」
海月「はい、今でもずっと大好きです、僕にとって晴香は妻であり推しでもありましたから」
福田「推し?」
海月「はい、僕は晴香に対して恋愛感情と晴香がよく言っていた尊いという感情を抱いていました」
魚崎「だってよ晴香、良かったな」
福田「今頃泣いて喜んでるぞきっと」
魚崎「だーな、さて、俺らそろそろ行きますね」
福田「すぐには難しいと思いますけど元気出して下さい」
魚崎「海月さんが泣いてたら晴香も悲しむでしょうから」
海月「はい・・・ありがとうございます」
二人と解散した後、僕は思い出の場所に来ていた。
一番最初に話をしたカフェ。
晴香の事を何度も何度も思い出していた。
初めて話をした日の事、初めて笑った顔を見た事。
息子は独り立ちをして家を出た。あれからもう随分と経つのに
まるでそれは昨日の事のように思えた。
晴香の机の引き出しを開けると手紙が入っていた。
"夕生さんへ
この手紙を読んでいるという事は私はもうきっとこの世にはいないでしょう。
それでも最後にどうしてもあなたに伝えたい事があります。
今どんな状態にあっても私と出会った事を後悔しないで欲しい。
私はあなたが大好きで大好きで仕方がなくてそんな気持ちがあなたの負担になっていないか不安でした。
それでもあなたはそばにいてくれた。
私は幸せでした。
あなたと出会えて良かった。
あなたは私に初めて生まれてきたことの意味を見出してくれた存在であり光。
こんな私を選んでくれて本当にありがとうございます。
どうかこれからもあなたの太陽のような笑顔があり続けますように。
妻より"
僕は初めて声を出して泣きじゃくった。
後日。
息子「ねぇ、父さんは母さんのどこを好きになったの?
だいぶ変わり者だったって聞いたけど」
夕生「確かに変わり者な部分は多かったけど
いつも真っ直ぐで太陽みたいなところかな」
息子「ふーん、母さんは自分の方が父さんにベタ惚れだって言ってたけど本当は父さんの方がベタ惚れだったんじゃない?」
夕生「はは、そうかもしれない」
晴香は僕の事をよく太陽だと表現していたが僕にとっての太陽は春花、君だった。
きっと晴香が生きているうちにそれを伝えていたら私はそんな大した人間じゃないですよと笑ったはずだ。
だけど僕の目に映る晴香はいつもキラキラしていたよ。
それは僕を心から好きでいてくれたからだね。
晴香は僕に対してとにかく優しかった。
共に過ごす時間は温かった。
食事を作る時に鼻歌を歌ったり、食べている僕の顔をじっと幸せそうに見つめていたり
本当に好きでいてくれているのだと伝わってきた。
態度だけじゃなく言葉でもありがとう、大好きと毎日のように言ってくれた。
僕にとって君は太陽(推し)だった。
紛れもなく太陽だった。
番外編〜初対面が島谷経由だったら〜
初対面が島谷の番組だったらと言うお話。
島谷「ショコラさんは推しがいるという事でしたね」
晴香「はい」
島谷「クラゲ君が好きと」
晴香「好きです」
島谷「どういうところが好きですか?」
晴香「そうですねぇ、もちろん声も好きですけど笑った顔がとにかく可愛いところです」
島谷「新しい着眼点ですねぇ!他にはありますか?」
晴香「全部好きです・・・」
島谷「ほうほう」
海月「ショコラさん」(背後から)
晴香「うわ!?ええぇー!!ガッターン!!」(椅子から転落)
海月「えー!?」
島谷「ちょ、大丈夫ですか!?」
心配した海月が手を出すが・・・。
晴香「わああ!海月さんの手に触れるなんてダメです、ダメです!」
島谷「手足ガクガク震えてるじゃないですか」
海月「座れます?」
晴香「す、すみません、腰が抜けてしまって・・・」
結局、スタッフ達に座らせてもらった。
晴香「まさか海月さんに会えるなんて・・・カッコいい・・・」
島谷「わー俺に会った時と全然リアクション違う〜」
海月「だってショコラさんは僕のファンだもんね♪」
晴香「はい♡」
島谷「うわー、クラゲ君急に上から目線になるじゃん」
晴香「ありがたやありがたやありがたや・・・」
島谷「ってショコラさん、ありがた過ぎて拝み出しちゃったよ!」
海月「僕、お地蔵さんか何かなの!?」
島谷「何かご利益あるかも?ありがたやありがたや」
晴香「ありがたやありがたや」
海月「二人で僕に拝むのやめて!?」
晴香「う、う・・・」
島谷「今度は泣き出しちゃったよ!忙しい人だな!」
晴香「私もう思い残すことはないです・・・」
島谷「悟り開き始めてるし!」
海月「いや、死んじゃダメだからね?」
晴香「大丈夫です、今日という日を糧に生きていけます」
島谷「クラゲ君パワー半端ないな!」
海月「良かった良かった」
島谷「それにしてもショコラさんって個性的ですね〜」
晴香「そうですね、個性だけは誰にも負けないと思います」
海月「いいですね」
島谷「クラゲ君、個性的な人好きだもんね!」
海月「うん、好きだよ」
晴香「社交辞令とはいえそう言って頂いてありがとうございます・・・」
島谷「ショコラさん、今の社交辞令じゃないですよたぶん、ね、クラゲ君」
海月「うん」
晴香「それは・・ありがたきお言葉です」
島谷「だめだ、もはやクラゲ君はお地蔵さん的ポジションになっちゃってる笑、クラゲ地蔵」
海月「なに勝手に命名してんの!笑」
過去編〜あの日、空は晴れていた〜
晴香は何をやっても上手くいかない根暗で不器用な女だったが、
ゲームの中で知り合った二人の男性が晴香を新しい世界へと一歩踏み出す勇気をくれた。
「推し活ラプソディ」、「黒森ラジオ」誕生秘話。
晴香と魚崎、福田の出会いは10年前までさかのぼる!
〜宇奈月晴香〜
宇奈月晴香。21歳。春。
目が悪くて小学生の頃からずっとメガネをかけている地味で根暗な女だ。
趣味はゲームと読書と執筆。
私は何をやっても上手くいかない。
勉強ができない。運動ができない。
学生時代、人付き合いも苦手でクラスでは孤立していた。
そして現在。仕事も当然のことながらできない。
接客をしようものなら緊張で声が裏返りガタガタ震えるし、電話対応なんてパニックになり余計にクレームが増える始末。
そんな私だけど何とかしてお金を稼がなければと工場勤務を始めた。
力が弱くて体力もないのに毎日毎日働いた。
他にできることがなかったからだ。
挙げ句の果てに恋愛もまともにできない。
まず、付き合うまでもなかなかいかないし、
付き合えても相手に尽くし過ぎて重い認定されて引かれる。
そしてそれとセットで病むのがお決まりだ。
死にたかった。消えたかった。最初から自分という存在がなかったらどれほど救われたか。
生きてることが馬鹿みたいに思えた。
〜魚崎と福田〜
趣味の一つ、ゲームの世界で知り合った二人の男性がいた。
オンラインゲーム。RPG。
レトロな世界観が魅力の一つで、旅をしながら遠い世界にいる人達とも会話をしながら進められる優れものだ。
旅がひと段落し、談笑スペースなる場所で特定のプレイヤーと話しをする。
夏。
ウオ「ハル、最近元気なくね?」
フク「大丈夫か?」
ゲームの世界でしか知らないのに二人は私の異変に気付いたらしい。
ハル「うん、最近彼氏に振られて・・・」
ウオ「あー、あの大好きな彼氏かぁ」
フク「それは辛いな」
ハル「わたし、しんじゃおうかな・・・」
ポツリと呟いた私に二人は否定することなくウオは言葉を続けた。
ウオ「んじゃ、死んだつもりでここ三人で集まってみない?」
ハル「え」
フク「賛成さんせ〜い!俺行くー」
ウオ「ハルも来るか?」
ハル「うん、行く」
そして三人は会うことになった。
ゲームで知り合って三ヶ月後のことだった。
意外にも三人とも同じ県内だった。
距離があるとはいえ、会えない距離ではなかった。
三人の本名。
ウオは魚崎、フクは福田、ハルは晴香だ。
この日を境に二人は晴香と呼び、晴香は魚崎のことを魚ちゃん、福田のことをフクのちゃんと呼ぶようになった。
〜逃げる選択〜
魚崎「晴香、最近ヤバいんじゃない?」
最初に顔を合わせてから一年後の夏。
出会った当初より晴香は明らかに痩せていた。
身体中は骨が軋んでいるような感覚がするほど痩せて、頬がこけてしまっている。
晴香「うん、仕事が思ったよりもキツくて、ずっと我慢してたんだけど
お腹痛くて仕事前に泣いてて」
福田「仕事辞めたら?」
晴香「うん、本当にヤバくなったら辞めるよ」
福田「いや、本当にヤバくなってからじゃ遅いんだよ、
まじで戻って来れなくなるぞ、俺、経験あるから分かる」
魚崎「だな、てか、これすでに限界だろ」
福田「俺もそう思う」
二人は晴香を見てうんうんと頷き合う。
晴香「なんか、逃げたらまた次の職場でも同じ事繰り返しそうでさ・・・」
福田「真面目だなぁ、仕事なんていくらでもあるんだから大丈夫だって」
魚崎「そうそう、てか、逃げないとまじで死ぬぞ」
福田「実際、逃げたいっしょ?」
晴香「うん」
福田「逃げたいと思うのはこの場所が自分にとって危険な場所だっていう体の防衛本能なんだから何にも悪いことじゃないさ」
魚崎「だーいじなのは晴香ちゃんの幸せよ〜ん」
魚崎はおちゃらけた言い方をしているが晴香の心配をしているのが本人にも伝わっていた。
晴香「そうだね・・・会社に相談してみるよ、ありがとう」
魚崎「そうしなさいそうしなさい」
福田「辞めたら祝いで飲み行こ」
晴香「うん」
後日、仕事を辞めたいと会社に伝えたが、
なかなか辞めさせてもらえず日が経つごとにどんどん体調は悪化していった。
最初は頭痛。頭痛薬を飲んで無視した。
次にパニックと喘息。これも無視した。
次に腹痛と仕事前の涙。甘えだとこれも無視し続けた。
仕事前、いっそこのまま事故に遭って入院でもすれば仕事に行かなくて済むのかなとぼんやり考える日もあった。
頭の中がぼんやりとしていて救急車のサイレンの音にさえ気付かずに目の前の道路を渡ったこともあった。
普段ならあれだけの音がすれば絶対に聞こえるし、救急車が通るまで青信号のまま立ち止まっていたはずだ。
この頃からだろうか。
次第に体が重過ぎて起き上がることさえ困難になっていき、月の半分。そして週の半分休むようになっていった。
最終的にはベッドから起き上がれなくなり、強制的に仕事を辞める事になった。
体からの最後のSOSだと確信した。
このSOSが無ければ恐らくそのまま自殺していただろう。
〜黒森ラジオ誕生〜
冬。
晴香「三人で仕事できたら楽しそう」
晴香が何気なくそう言うと。
魚崎「あー、それいいじゃん」
福田「副業としてやる?」
なんと二人ともノリノリで答えてきた。
晴香「でも、何を??」
魚崎「んーラジオとか?」
晴香「なにそれめちゃくちゃやりたいんだけど」
福田「面白そうだね」
ラジオ名は晴香が決めてくれと二人が言うので、考えた結果、黒森ラジオになった。
魚崎「なんで黒森?」
福田「てか、黒森って何繋がり?」
晴香「黒森は黒い森のさくらんぼケーキの略だよ」
魚崎「えーと、黒い森の・・・あー、これ?」
魚崎は検索したスマホの画面を晴香に見せた。
晴香「そうそう!それそれ!」
福田「へぇー、でも、ケーキから名前を使うのはまだ分かるけど、何でまた数あるケーキの中からこれなん?」
晴香「最初に写真見た時に、あ!これだ!って思ったんだよ」
魚崎「出た、直感女!」
福田「まぁ晴香は直感で生きてるからな」
魚崎「ぷぷ、ほぼ珍獣じゃん笑」
晴香「まぁまぁ、それでね、材料調べだらたまたま私らに合うものが入っててさ、
魚ちゃんのイメージカラーが紫で福ちゃんお酒好きじゃん?そんで私がココア好きだからピッタリだなって!」
福田「いいんじゃない?」
魚崎「まぁ、俺は晴香がその名前が良いならそれでいいぞ」
福田「俺もそれでいいよ」
晴香「本当?ありがとう!じゃあ黒森ラジオでいこう!」
魚崎「ついでに小説書いてることも言ってみたら?」
福田「お!それいいね、宣伝にもなるし」
晴香「そうだね、それいいかも」
こうして三人は小さなラジオ番組"黒森ラジオ"を開設した。
副業という形ではあるものの、稼ぐことを目指しているというわけではなく、
月に一度三人で集まってくだらないことをだべろうという何ともゆる〜い番組だ。
ようするに三人が楽しめる場所を三人で作った、という感じだ。
ついでに晴香が趣味で書いている小説の宣伝も入れる事になった。
この頃、晴香はレーシック手術を受けてメガネ生活からおさらばした。
〜あの日、空は晴れていた。〜
10年後の春。
晴香が推しの海月夕生と結婚後。
三人はラジオ番組が終わり、食事をしていた。
晴香「魚ちゃん、最近体調どう?」
魚崎「ん?大丈夫だぞ」
晴香「福ちゃんは?」
福田「元気げんき!晴香は心配性だなぁ」
晴香「むぅ、それ夕生さんにも言われる、晴香は心配し過ぎだよーってやんわり、なんか子どもをあやしてるみたいな感じだよ」
そう言って晴香は机に頬杖をつく。
魚崎&福田「でしょうね!!」
その後も三人は相変わらず馬鹿みたいなくだらない話をして笑い合った。
しばらくして・・・。
晴香の分の会計まで済ませてくれた二人。
晴香「二人ともごちそうさまでした!」
魚崎「いえいえ〜、あなた安いから」
福田「晴香は少食だからねぇ」
晴香「私的には食べたつもりで・・・あ、晴れてる、さっきまで雨降ってたのに!」
空は先程までの雨が嘘のように止み、青空が広がっていた。
魚崎「あ、ほんと」
晴香「青空ってなんかいいよね」
魚崎「・・・晴香、あの日、気付いてなかったでしょ?」
晴香「え?何が?」
突然のことで何の話か分からず晴香は首を傾げる。
魚崎「俺らが最初に出会ったあの日、空晴れてたんだぜ」
晴香「あれ、そうだっけ?」
福田「うんうん」
魚崎「まぁあなたずっと下向いてたから気付かなかったのも無理ないな」
そっか、ちゃんと晴れてたんだ。
死にたいと泣いていたあの日も。
そして今も。
二人に出会ったあの日は最初から晴れてたんだ。
魚崎「さーて、んじゃそろそろ帰るか!」
魚崎は伸びをしながら言う。
福田「だな!」
晴香「えー帰りたくなーい!」
福田「出た、晴香の駄々っ子」
魚崎「そーゆーとこはほんと変わってないなぁ」
福田「まだまだ大人への道のりは長しだな」
晴香「ぶーぶー!」
魚崎「でも、帰るんでしょ?推しのいる家にさ」
晴香「にへへ!うん!」
推し、と聞いた瞬間、晴香の顔がヘニャヘニャになる。
魚崎「ったく幸せそうな顔しやがって」
福田「まぁ、晴香は海月さんのこと大好きだからねぇ」
魚崎「しゃーない、家まで車で送ってくか」
晴香「え、いいの?ありがとう」
魚崎「晴香になんかあったら海月さんに顔合わせできないからな」
晴香「助かる〜!」
福田「まぁまた次のラジオ終わったら飯食いに行こうよ」
魚崎「だな!飯くらいいつでも奢ったる」
晴香「えへへ、いつもありがとう!」
こうして晴香は推しがいる家へと帰っていった。
番外編 晴香のドタバタ体調不良!
朝目が覚めてキッチンに行くと妻の「夕生さんおはようございます」という声が聞こえてきた。
「おはよう晴香」と夕生が返す。
朝ごはんを作る晴香の顔が赤い。
表情はへにゃへにゃしていて心なしか焦点があっていない。
夕生はお皿に料理を盛り付けている晴香の横に立つ。
晴香「すみません、すぐ終わりますので」
夕生がそっと額に手を置く。
夕生「晴香熱あるじゃん、ベッド行こ?」
晴香「いえいえ、これくらいヘーキですよ」
夕生「ごめん気付かなくて」
晴香「謝らないで下さい、今日は休みなので後でゆっくりしてますから」
玄関。
夕生「何かあったらすぐ連絡すること、いい?」
晴香「大丈夫ですって」
夕生「だーめ、必ず連絡して」
晴香「わ、分かりました」
夕生は晴香の頭をポンポンすると仕事場に向かった。
私もお腹空いたな、でも、食欲ないし・・・。
そうだ、お粥作ろう・・・あれれ?さっきより酷くなってる?
何か頭も痛いしぐるぐるする・・・とりあえず横になって休んでから何か食べよう。
昼12時。お粥を何とか作り食べた後。
ピコン。
晴香「あ、夕生さんからメールだ」
夕生"晴香、具合どう?"
だいぶ良くなりました、とメールに書いて消す。
晴香"朝より酷くなってます、頭が痛くてぐるぐるします"
夕生"病院行けそう?"
晴香"いえ、お粥食べて風邪薬飲んだのでこのままゆっくりしていれば大丈夫だと思います"
夕生"ごめんね、仕事終わるの夜になりそう"
晴香"私のことは気にしないでください"
しかし、体調は落ち着くどころか悪化していった。
昼3時。
ピンポーン。
あれ、誰か来た・・・とりあえずインターホン確認しに行こう。んん!?
晴香は目をコシコシと擦り再度インターホンの画面を見た。
そこには二人の男性が写っていた。
インターホンを押して音声が聞こえるようになった。
晴香「なーに?」
福田「元気?元気か?晴香生きてるかー」
魚崎「はーるかちゃ〜ん、お見舞い来たよ〜ん」
ヤバい、更に頭痛くなってきたかも。
ガチャ。
晴香はマスクを付けて扉を開けた。
晴香「何で知ってるの」
福田「うわ、晴香死にそうになってんじゃん、顔色わっる‼︎」
魚崎「海月さんから晴香の見舞い頼まれたんだよ」
晴香「それで来てくれたんだ悪いわね、ありがとう」
魚崎「俺、仕事早く終わったし、ちょうど福ちゃんは休みだったんだよ」
福田「そんな感じ」
魚崎「とりあえず中入るわ、お邪魔しまーす」
福田「お邪魔しまーす、うわーめちゃいい部屋住んでるな、さすが海月さん」
晴香「あ、ちょっと!風邪移るといけないから帰った方がいいよ、来てもらって早々悪いけど」
魚崎「大丈夫大丈夫、みーんなマスクしてるから」
晴香「マスクしてれば移らない訳じゃないでしょ」
キッチンに着くや否や魚崎は袋をテーブルの上に乗せガサガサと中身を出していく。
魚崎「えーと、スポドリとプリンとゼリーにヨーグルト」
晴香「そんな色々買って来てくれたの?ありがとう・・・」
魚崎「あーそれと」
そう言うと魚崎は熱冷ましシートをペシッと晴香の額に貼り付けた。
晴香「な、何!?」
晴香はおでこを咄嗟に両手で押さえた。
魚崎「熱冷ましシート」
福田「てか晴香横になった方がいいんじゃね?」
魚崎「あなた薬は?」
晴香「風邪薬、11時くらいに飲んだ」
魚崎「効いてるように見えないけど熱は測ったか?」
晴香「飲む前は38度だった」
福田「もっかい熱測っとき」
晴香「うん」
魚崎「体温計どこ?」
晴香「棚の一番下に入ってる」
魚崎は晴香に代わり体温計を探し出して渡す。
魚崎「おー、あったあった」
ピピピ。39度8分。
福田「結構高いな、上がってるし」
魚崎「病院行くか」
晴香「でも、風邪薬飲んだよ」
魚崎「効いてないってことは風邪じゃないっしょこれ
髄膜炎とかじゃねーか?」
晴香「ほえ?」
魚崎「ほえーじゃないのよ、ほら、病院行くぞ」
晴香「ふあーい」
福田「ダメだこりゃ」
検査の結果、魚崎の予想通り髄膜炎と高熱による脱水症と診断され一週間入院することになった。
スポドリを飲んでいたとはいえ、かなり汗をかいていたようだ。
夜10時。
夕生の仕事が終わった頃。
仕事場から帰ろうとした時だった。
夕生「魚崎さんと福田さん、あの、晴香の様子は」
魚崎「髄膜炎と脱水症で一週間入院だそうです」
夕生「え!?風邪じゃなかったんだ・・・」
福田「まぁ、とりあえず症状は落ち着いてきたんで安心して下さい」
夕生「そうですか・・・あの、ありがとうございました」
福田「いえいえ、それじゃ俺ら帰りますんで」
夕生「はい、気を付けて」
魚崎「あー海月さん」
夕生「はい、何でしょうか?」
魚崎「仕事や夢は壊れても努力次第で立て直せますけど、
心と体は一度壊れたらどんなに努力しても立て直せないですよ」
夕生「え?」
魚崎「じゃ、俺らの役目は終わったんで後はよろしくお願いしますね」
夕生「は、はい、ありがとうございました・・・」
夕生の姿が遠くなったタイミングで魚崎は福田に話しかけた。
魚崎「お節介しちゃったかね」
福田「まぁ、いいんじゃない?ちゃんと海月さんに刺さったみたいだし」
魚崎「晴香にとっては海月さんが一緒にいるのが一番心強いだろうからねぇ」
福田「まーそうだろーね」
次の日。夕生は午前中だけ仕事だったので終わってそのまま病院に向かった。
病室に入ると晴香は眠っていた。
そこにいるのはいつものおちゃらけた晴香ではなく、衰弱し切っている妻の姿だった。
夕生「晴香、ごめん」
夕生は晴香の手を握りながらある決意をした。
それから一か月後。
晴香「え、夕生さん事務所辞めるんですか!?」
夕生「うん、これからはフリーでやることにした」
晴香「どうしてまた急に?」
夕生「不安?」
晴香「いえ、夕生さんなら安心ですけどどうしてなのかなって」
夕生「これからは少し仕事セーブしようかと思って
最近晴香と出かける時間もあんまりなかったし
そばにいないと体調の変化も気付きにくいからさ」
晴香「私の為にそんな・・・」
夕生「これは僕自身の為でもあるんだ、晴香の為だけじゃないよ」
晴香「夢に支障は出ませんか?」
夕生「出ないよ、むしろフリーになってみたい気持ちもあったからそれが早まっただけだよ」
晴香「それならいいんですけど」
夕生「だからこれからはフリーになるけど応援してくれる?」
晴香「はい、もちろんです」
夕生「来週の金曜、晴香仕事休みだったよね?久しぶりにデートしない?」
晴香「はい!」
後日。
晴香「それでねー、夕生さんフリーになるんだって、
夕生さんなら事務所だろーがフリーだろーが大丈夫よね〜
今まで積み上げてきたものが沢山あるし努力家だし、人気者だし、あとあとカッコいいし!」
魚崎「なぁ、福ちゃんこれって俺のせいか?」
魚崎は自分を指差しながら福田を見た。
福田「うん、100%」