青い瞳の貴族は和菓子がお好き
「時雄、お前友達いるのか?」
「……え。あ、ああ、いるいる」
|時雄は両親の質問に生返事で答えた。
老舗和菓子屋の『しろがね堂』の長男である高校生【金本時雄】は、和菓子作りの修行にのめり込み過ぎて、学校では他人と深くかかわらない生活を送っていた。
友達同士で遊ぶ時間があるならそれを和菓子作りの修行に費やす方が有意義。時雄はそう考えていた。
そんなある日、時雄のクラスに転校生がやってくる。
なんでも英国貴族の血を引く女の子だそうだ。
「イギリスから留学してきましタ、アンゼリカ・グリムと申しマース。ずっと日本で暮らすのが夢でしタ。皆さん仲良くしてくださいネ」
金髪のふわふわとしたウェーブヘアに。淡い青色をした瞳。真っ白に透き通った肌。そしてなにより 貴族由来の気品を全身に纏いながらも、気取らず大らかな人柄。容姿のみならず、心まで美少女。
アンゼリカは転校初日にして学校の人気者に。
しかし時雄はそんな彼女には全く関心がなかった。
「ただいまー」
時雄が帰宅すると祖父が出迎えた。
「おう時雄、ちょっと話がある」
「ん? なんだ急に」
「わしもばあちゃんも歳だ。ずっとアルバイト募集してたろ? やっと見つかったんだ」
裏の自宅から店の方へと出る。
「初めまして、イギリスから来ま――」
そこで待っていたのは、和服に身を包み、金髪のお団子頭、青い瞳の少女。
「あ……あんたは」
「あなた確か……カネモトくん、ですよネ?」
アンゼリカだった。
「お、知り合いか? アンゼリカちゃんはのう、何年も前からうちの和菓子のファンらしくてのう、ロンドンから履歴書が来たときは驚いたわい。先週の面接で熱意に押されて即採用したんじゃよ」
アンゼリカは幼い頃、祖母とよく日本へ旅行に来ていた。そのたびに食べる和菓子の味に感動していた。
和菓子職人になるためだけに留学して、しろがね堂で働きたいと志願したとのこと。
「――というわけじゃから時雄。今日からお前には、アンゼリカちゃんの教育係を任せるからのう、よろしく頼むぞ」
「……………………マジか?」
「よろしくお願いしマ――ス!」
職人気質の和菓子男子と金髪碧眼少女の、一風変わった青春が始まろうとしていた。
「魔物学園の文化祭で歌を君に」
「温泉の里で二度目のアイドル生活始めました」
に続くなろうラジオ大賞に向けた3作目
こちらはなろラジの「タイトルは面白そう」では不採用ながら
それなりに気に入ってたので投稿しました
こぼれ話は活動報告で!