4 どこからツッコめばいいか分からない手紙
「はぁ……。」
私、マリー・エスターライヒは、自室の机にて先程届いた手紙を読み、ため息を吐いた。
あんの馬鹿王子め……。
「お嬢様、どうしました?どこか具合が悪いので?」
「いや、大丈夫、ほっといて。頭がいいけど悪いやつのことを考えてうんざりしてただけだから。」
紅茶を注いでいた乳母のチェリーに一人にさせてと手で示す。
「……お嬢様、頑張ってくださいね。」
「うん。」
「では。」
そう言い、チェリーは去っていった。一人きりになり、外にいる鳥の鳴き声がよく聞こえる。そう、丁度モールス鳥の鳴き声が。
「普通、私がモールス読めると思わないでしょ……やっぱり、あいつ、天才だけど馬鹿だ……。」
そう言い、私は頭を抱えた。誰かが聞いたら不敬罪になるような言葉。でもそんなことを言わないとやってられなかった。
その原因は、先程私の家に届いた一通の手紙だ。
それは、一見研究の誘いをしているように見えて、モールスでの暗号が仕込まれているものだった。
差出人は一応ドール・フェイクとなっているが、こんな名前があるわけない。モールスにもそう書いてある通り、クラウスからの手紙だ。
その内容自体にはとても賛同できるのだが、問題はクラウスがモールスを使っていることだ。
モールス鳥についての論文は少し未来に私が完成させたものだ。あの時、私は偽名を使って論文を発表したから、彼は私がモールス論文を書いたと知らないはず。それにもかかわらず、モールスを使ったということは、その水準の知能を私に求めているということだ。つまり、論文をたくさん読み漁った前提の知能。
だけれども、私は当時モールス鳥についての研究にしか興味が無く、生物学についての論文しか読んでいない。この基準を毎回要求されるのは、正直困る。それに、魔法については王立学園卒業レベルの知識しかないし、役に立てる気がしない……。
……ここは、発想の転換で表の内容より裏の内容で活躍しようかな。魔法については畑違いでよく分からないし。作戦を立てるのはギリギリ私の得意分野だ。
「それじゃ、どうしようかな。」
そう言い、思考を開始する。様々な案が浮かび上がり、その中から最も良い案を選び、それのデメリットを考え、それをどうすれば解決できるのか考える。
その結果出来上がった作戦を簡潔にモールス化して、手紙は完成した。
モールスは意訳すると「襲ってきたところを迎え撃つのがいいと思う。私は、論文を発表した翌日に襲われた。貴方はいつだった?あと、次の手紙に変身魔法をかけてほしい。どうせなら変身魔法完成させて、それ使って家を抜け出してあの男を捕まえようよ。」となる。
うーん。大丈夫かなぁ。大分言葉省略しちゃったんだよな。まぁ、いけるか。天才だし。
そう思い、チェリーに手紙を渡す。
「猫の手、という道具屋までお願い。」
「かしこまりました。」
それにしても、王子がモールス鳥の論文を読んでいたってことは、王子が襲撃されたのは、私より後なのか……
相手側の思考が読めない。
だって王子を色ボケさせてダメにしようとするならわかるけど、私を襲撃する意味が分からないし……あ。
「あぁ、そういうこと?」
そう言い、私は意地悪い笑みを浮かべた。
「あぁ、そうねぇ。うふふ、確かに、そうね。そう考えれば辻褄はあうわ。それじゃ、犯人はあそこってとこかしら?」
自分の推理を裏付けるための証拠が早く来ることを願いつつ、私は窓を開け、モールス鳥の研究を再開した。
画質悪くてごめんなさいね
感想下さい!待ってます!