4 魔女に名前をつけられる
その黒い服を着た女の子ー見たところ18歳くらいーは、飼い主の老婦人と少し話をした後、一緒にこちらにやってきた。
「ほら、言ったでしょう。あなたは黒猫だから、魔女に引き取られるって」
飼い主は優しげな微笑みを浮かべながら、黒い服を着た女の子に目をやる。
「初めまして。わたしは魔女の、斎藤月子。これからあなたを引き取ることになったの。よろしくね」
月子と名乗った女の子は、私をじっと見つめて微笑む。長い黒髪ロングストレートの髪が、猫のような目つきに似合っている神秘的な女の子だ。
私は月子を見上げて、にゃあと鳴いてみせる。
「あら、鳴き声も可愛いのね。あなた名前は?…そう、まだ無いのね」
名前がまだ無いことを見透かされて、私がキョトンとしていると、月子が言葉を続ける。
「わたし魔女だから、猫の気持ちがわかるし、言葉もわかるの。だから遠慮なく、わたしに話してね。…そうね、あなたの名前は、ムーンってどうかしら?」
ムーン!素敵な名前!
私がそう思っていると、月子は私を抱き上げて言った。
「気に入ってくれてありがとう!わたしとお揃いの名前なのよ」
そう言えば、その通りだ。
「うふふ、よろしくね、ムーン」
こちらこそ、よろしくね。
私がにゃあと鳴くと、月子は微笑んだ。