学校(短い詩集)
■校庭
教室から見下ろす校庭は大きかった。
フェンス越しに見る校庭はこじんまりとしていた。
■教室
学んだことはほとんど忘れてしまったかもしれないが、学んだということはしっかりと覚えている。
大人になりましたと、恩師に感謝する。
■校舎
友達が待っている。
勉強もしておこう。
ああ、学び舎という罠。
■席替え
期待を胸に抱き、
強く願い、
平然を装い、
席替えの決定を待つ、
約三十人。
■体育館
キュッキュッとバッシュが響く。
ダムダムとドリブルをする。
スタンとボールがゴールに入る。
ビーとタイムアウトを知らせるブザーが鳴る。
応援に来た人たちはマスクをしている。
いつの日かまたここに声援という音を。
■音楽室
タンホイザー行進曲はワーグナーでモルダウはスメタナが書いた曲であることを今でもちゃんと覚えているけれど、それによって得をしたことは一度もない。
音楽室で習った知識は一体何だったのだろうと思案するが、その疑問を持てることは生活が豊かである証拠で、その時間そのものが有意義というもの。
■焼却炉
校舎裏の焼却炉でせっせと炎に放り込む用務員さんに見る大人の背中よ。
■放課後
誰と誰とが付き合っているとか、あいつ女子と帰っていたとか、帰路につく編成で翌日の話題が持ちきりになることが、今は愛おしい。
■卒業
みんなに平等に与えられた時間を用いて輝かしい期間のタイムリミットを知らせることで自動的に大人へのステップを踏まされる大人たちの仕掛けなのに、感動というフィルターで素晴らしいものだと勘違いさせられているのが痛々しいはずが、式まで用意されてしまうと私だって心を動かされる。
気持ちの整理がつかないままに私は大人になるのですかと問いかけるのは先生をはじめとする大人にではなく時間に。
でもとりあえず親には感謝、とならないのが大人になれていない部分といえるので素直な気持ちを表現できるまで心の卒業はもう少し先にしてモラトリアム。