表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

学校(短い詩集)

作者: 寿々喜 節句

■校庭


教室から見下ろす校庭は大きかった。

フェンス越しに見る校庭はこじんまりとしていた。




■教室


学んだことはほとんど忘れてしまったかもしれないが、学んだということはしっかりと覚えている。

大人になりましたと、恩師に感謝する。




■校舎


友達が待っている。

勉強もしておこう。

ああ、学び舎という罠。




■席替え


期待を胸に抱き、

強く願い、

平然を装い、

席替えの決定を待つ、

約三十人。




■体育館


キュッキュッとバッシュが響く。

ダムダムとドリブルをする。

スタンとボールがゴールに入る。

ビーとタイムアウトを知らせるブザーが鳴る。

応援に来た人たちはマスクをしている。

いつの日かまたここに声援という音を。




■音楽室


タンホイザー行進曲はワーグナーでモルダウはスメタナが書いた曲であることを今でもちゃんと覚えているけれど、それによって得をしたことは一度もない。

音楽室で習った知識は一体何だったのだろうと思案するが、その疑問を持てることは生活が豊かである証拠で、その時間そのものが有意義というもの。




■焼却炉


校舎裏の焼却炉でせっせと炎に放り込む用務員さんに見る大人の背中よ。




■放課後


誰と誰とが付き合っているとか、あいつ女子と帰っていたとか、帰路につく編成で翌日の話題が持ちきりになることが、今は愛おしい。




■卒業


みんなに平等に与えられた時間を用いて輝かしい期間のタイムリミットを知らせることで自動的に大人へのステップを踏まされる大人たちの仕掛けなのに、感動というフィルターで素晴らしいものだと勘違いさせられているのが痛々しいはずが、式まで用意されてしまうと私だって心を動かされる。

気持ちの整理がつかないままに私は大人になるのですかと問いかけるのは先生をはじめとする大人にではなく時間に。

でもとりあえず親には感謝、とならないのが大人になれていない部分といえるので素直な気持ちを表現できるまで心の卒業はもう少し先にしてモラトリアム。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] 短い詩、良いですねー! うん、すごく節句さんらしい感じがする内容で、とっても良いです!! ワーグナーやスメタナの曲を知っていて、ギターが弾ける節句さんはとっても素敵だと思います。
2021/08/23 21:43 退会済み
管理
[良い点] 初めましてです~…。 凄く良かった!! 谷川俊太郎さん…の…詩を…読んでいるかのようでした…m(_ _)m
[良い点] 当時、大きく感じた学校という場所を 大人になって改めて訪れると、意外と大きくなかったと感じる。理由は様々あるのでしょう。 それでも、思い出の場所だと感じる人はきっと多いでしょうね。 [一言…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ