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めでたし めでたし。

 

 4足で街中を走っていたが、途中で立ち止まる。


(流石に2足のさなちゃんは追って来れないよね?)


 チラッと後ろを確認すると--



 ガラガラガラガラ



「待ってーっ!!」



 何という事でしょう! 猫4匹が引く荷車に乗って追いかけてきました! あれは先程の掃除していたニャンコ達です! 猫だけに猫車だっ!



「私っ知ってるんだからっ!? 逃げるって追いかけて欲しいって意味だって知ってんだからっ!?」



 盲目的な自論を述べる紗奈。王様がびびって再び逃げ出そうとするのも無理はない。



 がーー



 猫の目の前を蝶々が飛んでった。紗奈の目にはモンシロチョウに見えるがサイズがアゲハチョウよりも大きい。



 猫は大きなモンシロチョウを見て進路を変えた! 荷車は急な進路変更に耐える事が出来ずに横転した!



 ガッターーン



 紗奈は地面に転倒! 猫は自分と荷車を繋いでいた紐を爪で引き裂きモンシロチョウを追いかけた! 猫は虫に目がないのだ! 何という悲劇! 



「痛ーいっ!? 手のひら切ったーっ!?」



 紗奈の泣きそうな叫びに王様はめちゃくちゃ気になった。


(怪我? 大丈夫だろうか? というかさなちゃん。人間で裸足って大丈夫なの? 人間って靴履いてるよね)


 色々と紗奈が心配になってきた優しい王様である。物陰に隠れてじっと紗奈を見守る。


 紗奈は手のひらを見てぎゃあぎゃあ騒いだ後、その場に蹲る。


「やっぱり怒っているよね。恨んでるよね。ニャンコと和解出来なきゃ死んじゃう」


 鼻をすする音が聞こえた。王様は驚いた。


(僕と仲直りがしたいの?)


 鼻をピクピクさせながら紗奈にそっと近づいた。



 ……何故この様に王様は苦手意識を持っていた紗奈に近づいていくのか?


 答えは--


「王様。やっと来た。やっぱり、ニャンコって過剰に構うと逃げるから、こうしてじっと待ってるのが正解ね」


 との事だ。


 王様は「えっ」と少しびくっとなる。耳が後ろを向き、腰が低くなる。


 紗奈は目を合わせない様に気をつけて王様のお腹辺りをじっと見る。目をじっと見ると睨まれているとニャンコが勘違いするからだ。決して、お腹に顔をすりすりして匂いを嗅ぎたいと思っているわけではない。


「昔の事。謝りたかったの。怖い想いをさせてごめんなさい」


 紗奈は頭を下げた。ずっと頭を下げる紗奈の様子に、王様は興味を持った。


 紗奈にご飯を貰っていた頃の事を思い出す。


(母は警戒心が強かったから、人間を怖がっていた。でも、僕ら兄妹を育てるには人間の慈悲を貰う事が出来れば楽に育てる事ができる。猫にはテリトリーがあり、誰のテリトリーにも属さない家である事が好ましい。例外は猫を飼っている家だ。猫を飼っている人は大概、野良猫にもご飯をあげるし、家猫は外にはあまり出してもらえないからバトルの危険性は減る。比較的新しい家を母は選んで回った。小さなさなちゃんは満面の笑顔で僕ら家族にご飯をくれた。母もほっとしてたのを覚えている。僕は結果として大変な目にあったけど、ご飯の恩を忘れたわけじゃない)


 下を向く紗奈の顔を寝っ転がり下から覗く。紗奈の驚く表情に「ぷっ」と笑った。


「紗奈ちゃん。良いよ。許すよ」


「ほ、ほんとっ!?」


「うん」


「やったー! やったよー!」


 紗奈は「うわぁぁぁ!!」と子供の様に号泣した。


(紗奈ちゃん。感情豊かなところ昔と変わらないなぁ)


 ニコッと王様は笑った。すると--



 パンパカパーン とラッパが鳴った。


 王様が背後を振り返ると猫達が集まっていた。ブチ猫もいる。王様はブチ猫を見て「隊長っ!?」と驚く。


 驚く事にブチ猫は近衛兵の隊長なのだ!


 ブチ猫は剣を鞘から抜く。 そこにはキラリと光る剣身がっ……ないっ!? 猫には爪や牙があるから、武器など必要にゃいのだっ!


 ブチ猫は剣身の無い剣を掲げた。


「バンザーイ! 王様バンザーイ!」


 ブチ猫の叫びに他の猫も続く。


「「「バンザーイ! 王様バンザーイ!」」


 紗奈も続いた。


「バンザーイ! 王様バンザーイ!」


 王様は恥ずかしくて顔を隠してしまいました。嬉しかったのでしょう。王様はこの嬉しい気持ちを頑張って皆に伝えます。


「ありがとう! 皆ありがとう!」



 皆笑顔☆ 皆幸せ☆



 HAPPY END☆



「……ちょっと待ってください。何をめでたしめでたしで終わろうとしているのですか?」


 地鳴りの様な声が響き皆は「にゃ?」と固まった。


 そこにはモノクルを付けた白猫がいた。格好が執事服となかなかにカッコいい。


「田中様。貴女は人間の世界へ帰りたいですか?」


 紗奈は「え?」と驚く。


「私達の願いは王様を笑顔にする事です。田中様は無事にそれを果たしていただきました。なので、帰っていただいても、ここに残って貰っても良いですよ」


 にゃんという身勝手な! 猫の身勝手な理由で紗奈はここに飛ばされたのだ! 


 紗奈はもちろん気にしない。だって相手はニャンコだから。むしろトラちゃんを幸せにするならば、自ら飛ぶだろう。


「……せっかくトラちゃんと仲直り出来たから、しばらくはこっちにいたいな。けど、猫カフェの猫が心配だし……」


 執事猫はモノクルをくいっと上げた。


「それについてはご心配には及びません。先程まで私は田中様の代わりに猫の世話をしておりました。向こうの猫は甘ったれで……いや失敬しました。オーナー様も今日帰宅されるので心配はありません」


 紗奈は「ありがとう!!」と執事猫の手を握って感謝した。紗奈は執事猫の肉球を何気にモミモミしている。それを王様は「いいなぁ」とじっと見た。だが、執事猫は紗奈の手を払い除けた! 


「ふんっ。馴れ馴れしく触らないで下さい」


 ツンデレなのか、変態な行動に嫌悪しているのか判断がつかない! ツンデレ執事猫恐るべし!


「来たい時にこちらにこればよろしいかと。猫カフェの猫にお伝えくださればいつでも召喚します」


 なんとっ!? 人間の世界と猫の世界を自由に行き来できるそうだっ! そんなにほいほいと召喚して良いのだろうか!? 猫だから良いのにゃっ!



 紗奈と王様は見つめ合った。王様はまぶたをパチパチさせます。これは親愛の証です。猫好きな紗奈は当然その事を知っています。1人と1匹の間には言葉は不用なのです。



 背後ではブチ猫が執事猫に褒められていた。


「てっきり、また使命を忘れると思いましたが、きちんとやり遂げましたね。流石隊長です。見直しました」


 ブチ猫は焦った。すっかり忘れていたとは言えない。


「お、おうよっ! 当然にゃっ! 宰相もご苦労にゃっ!」


 執事猫の正体は宰相でした。隊長と宰相は歳が近い為仲良しです。生まれ変わった回数も一緒だとか……。


 執事猫は紗奈と王様の仲睦まじい様子に一言。


「若いですね」


 隊長は欠伸をしながら「だにゃ」と同意。この2匹は紗奈よりもずっと歳上であった。



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