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猫まっしぐら。

 


 ブチ猫を追いかけていたが見失った。


(4足に2足じゃ敵わないよね。はぁ〜。どうするかね〜)


 とそこら辺にいる猫達に熱い視線を送っていると--


「にゃあああっ。こっち向いて-っ!」

「王様カッコいいにゃああ!」

「たまらにゃいにゃぁぁ!」


 王冠を被った雄猫が雌猫に囲まれていた。


(黒猫の王様たまらんっ!)


 興奮して鼻から血が出かけた。はぁはぁと荒い息が口から漏れる。側から見ると危ない奴である。


 変態だと気付かないイケメンな黒猫は私を見て心配そうに声を掛ける。女性の声優で男役のイケメンボイス出せる人がいるじゃないですか。そんなイケメンボイスです。


「そこの方大丈夫ですか? 何処か痛いのですか?」


 俯いて堪えていたが、黒猫の顔面を正面から見つめたいっ!という欲求に負けて、顔を上げた。


 すると--


「さなちゃんっ!?」と目を丸くして驚かれた。


 私の名前は田中 紗奈。確かに「さなちゃん」である。そんなことよりも黒猫の綺麗な金色の虹彩に釘付けだった。


 黒猫は苦しそうに顔を歪ませ、4足で走り去ってしまった!


 取り巻きのニャンコが追いかけて行く。


「待つにゃぁぁぁ--


(また。逃げられた)


 ガクッ


 私は愛しいニャンコに逃げられ意気消沈した。自分の気持ち悪さは自覚はあった。だが、治す気はない。何故なら……治らないからだ!


(にしても……私の事を何で知ってるの? まぁ、疑問に思っても分からない事だらけだし、この際この猫の世界を愉しむべしっ!)


 プラス思考で脳天気な紗奈であった。


 紗奈は取り敢えず街をぶらぶら歩き回る事にした。


 裸足で寒い? 何のこっちゃ! 周りの猫は皆素足だ! 靴なんてこの世界には無いのさ! ははははははっ!



 視界が開けた先には畑が広がっていた。猫が畑を耕して……いない! 畑から生えた青い草を食べている!


「うみゃうみゃ」


 あれは猫の腰ぐらいまで伸びてて長いけど猫草だ! 猫は基本的に肉食だった! 猫草が猫にとっての野菜なのだ!




 猫は魚でも獲っていたりするのかな? と街を散歩していると、猫が集会していた。


 うにゃ〜〜


 陽気な猫の声が聞こえた。猫はぼんやり白光している。


 うにゃにゃにゃにゃ


 白光した猫が集まり前足を上に上げ器用に後ろ足だけで立つ。前足を左右に振る。長い胴体も左右に振る。


 うにゃ〜うにゃ〜うにゃ〜♪


 眩い光と共にパァッと魔法陣が出現した。光り輝く魔法陣はくるくる回る。


 次の瞬間っ


 ドバアアアアアッ


 魔法陣の中から生きた魚が大漁に湧いて来た! 猫達は大興奮! 魚に我先にと群がる! 他の猫を払い除け、自分も他の猫に揉みくちゃにされながらも、我先にと魚にかぶりつく!


 皆野生の獣の目をしていた。流石に彼処(あそこ)に彼らと同じサイズの人間が入り込めば無事では済まさ無いだろう。呆気にとられ紗奈はただ眺めた。


(さっきの魔法陣で私もここに飛ばされて来たんだ! 猫は魔法使いだったんだ!)


 古来よりヨーロッパの方では猫は魔女の使い魔と信じられていたとかいないとか……。とにかく、猫とはミステリアスな生き物にゃのだ。


 お腹が魚でぱんぱんに膨れた猫達が地面に横たわる。昼寝していた。鼻提灯まで出ていた!


 微睡む猫に質問してみた。


「さっきの魚って何処から来たの?」


 猫は「うにゃうにゃ」微睡ながら器用に答えた。


「人間の漁師がにゃ〜。水揚げした魚をだにゃ〜。向こうに暮らす海の野良猫達のにゃ〜。協力でにゃ〜。掻っ攫ってきたのにゃ〜。にゃふにゃふ」


 何という事でしょう!? 人間の漁師が獲って来た魚を猫だけにネコババしたそうだ!


 紗奈は迷惑をかけた漁師に申し訳ないと……思わなかった!


(猫ちゃんに食べてもらえて漁師さんも本望よね!)


 猫を中心に生きてきた猫カフェの店員の思考回路は猫中心的であった! 消えた魚達に漁師達はきっと真っ青だ! しかし、猫が「にゃ〜」と寄ってこれば魚をあげてしまうのだ! 猫なら許せる! 素晴らしき世界にゃのだ!


 昼寝タイムのニャンコの中に先程のブチ猫がいた。ぷよぷよのお腹が魚でぱっつんぱっつんだ。お腹を撫でるとポヨンポヨンして面白い。


「にゃめろ〜……むにゃむにゃ」


 すぴーと寝ていた。鼻提灯がぷーと膨らんだり縮んだり……しばらく眺めていたが、好奇心で指でチョンと触れた。


 ぱちんっ


 ブチ猫は目を覚ました!


「にゃにゃっ!? にゃんだっ!? おみゃ〜! よくもみゃ〜の昼寝の邪魔してくれたにゃっ!?」


 マイペースなブチ猫は自分の昼寝を邪魔されて大激怒! 「にゃんだったら、おみゃ〜を食べてやるぞっ!」と舌舐めずりする。


 流石の紗奈も怯えるかと思うが……手をこう自分にカモーンと招いている。


「うぇるかむっ! 猫の糧となって死にたいっ!」


 予想と違う反応に猫なのに鳥肌が立ったブチ猫。


「おみゃ〜の様にゃ変態を食ったら腹壊すにゃ〜!?」


 近寄るんじゃね〜!? と距離をとられた。


「ぐはっ!?」


 私は胸が苦しくなり地面に崩れ落ちた。


「にゃっにゃんだっ!? 死ぬにょかっ!?」


「ううっ!? ……ニャンコに(ことごと)く逃げられて悲しいっ! 黒の王様ニャンコもモフりたいっ!」


「おみゃ〜っ!? いっぺん死んで来いっ!? ……やっぱり駄目にゃっ!? おみゃ〜は怨霊になって「うふふふふ」言ってそうで怖いにゃっ!?」


「……猫ってやっぱり霊とか見えるんだっ! たまに何もない場所をじっと見るから、もしやと思ってたんだ!」


「ただの例えにゃっ! 本気にするでにゃい!」



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― 新着の感想 ―
[一言] こんにちは。 猫の文字につられて読みに参りました。 元気と猫への愛に溢れていて良いですね^^ また続きもゆっくり読ませて頂きますね♪
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