84:悪用は止めようね!
出発の準備が整う前にカークは暇を持て余していた。
村の周辺を調べるのはノアであり、その時間を利用してレラがゼトと色々話しこんでいたし、ルリとオニキスと新たな仲間シンジュは途切れ途切れの会話をしていた。
グールと会話するのが珍しいのかオニキスの食いつきが凄く、シンジュも戸惑い気味に口を開いていた。
無理にその中に参加する気はないが、そう言えばカークは最近自分の能力表を見ていなかった。
“塊屍候”から【炎の外套】を貰ったし、その前に“纏穣公”から貰った【門の創造】について一切説明を読んでいない。
魔法の発動方法や大雑把な効果は知っているが、条件などは知らないのだ。
左手を上に向けてカークは能力表を浮かび上がらせた。
半透明の板が浮かび上がり、カークの能力を見せてくれる。
「んん?んー・・・・・・」
気のせいかもしれないが、司教と剣士のLVが上がっているし、能力値が結構上がっている。
「あ、竜か。竜を倒したから?」
竜を倒す直前に能力値を見たわけではないのでわからないが、そんな感じのする上がり方と言うか、それ以外に心当たりがない。
いや、勿論、訓練でもLVは上がるし、能力値ものびる。
むしろその方が効率がいい場合もある程だ。
まあ、カークが知りたいのは能力値ではなく、魔法の使い方だ。スルーした。
「【炎の外套】は1秒で1の魔量を支払い、炎を纏う。炎の外套を纏った状態では地面から10㎝浮き、AGIを倍し素早い行動を可能にするが、何者かに触れた場合お互いに負傷する。使い勝手悪いかっ!!」
カークの今の魔量は270。最大270秒。だが、カークの素早さはやっと上がって6。そりゃ全力疾走した誰にも追いつけない訳だ。
AGIを12にして、やっとオニキスに追いつけるくらいの速度になるだろう。
その為に魔量をそこまで消費したくない。【時虹公のこぶし】の方が使い勝手が最高だからだ。同じだけ魔量を消費するなら【時虹公のこぶし】に割く方が有意義である。
カークは自分が気づかないだけで有意義な使い方があるかもしれないと一瞬思ったが、少なくとも倍以上のAGIを持つか、魔量を持つかしない限りは使わないだろうと諦めた。
「次だ次。えー【門の創造】は魔量を消費して現在地と別の場所を繋ぐ。16kmにつき魔量は1消費。滅茶苦茶便利じゃないか!?」
そこまで読み進めてカーク感動のあまり大きな声を出した。
周囲の目が気にならないでもないが続きを読み進める。
「門ひとつの創造、維持に精神力を魔量と同点消費する。門を解除すれば、この効果は元に戻る。へー」
16㎞向こうに門を作ったらMNDも魔量も1点消費。通過に消費は無し。
ただし、継続している以上はMNDは1点減点。解除すれば戻る。
「最高じゃないか!」
「何がですか?」
ゼトが気になったのかこちらに来たのでカークは満面の笑みで答えた。
「【門の創造】と言う魔法が」
続けられた説明にゼトは顔色を悪くしてレラを呼び寄せ、同じ説明をカークに求めると、レラも同じ顔をした。
顔色が極めて悪い。朝ごはんが悪かったか?美味しかったのに。
「・・・・・・ちなみに、お前の精神力値は?」
「えー・・・・・・37」
「い、異様に高いですね。エルデン・グライプだからでしょうか?」
レラは頭を抱えてしゃがみ込み、ゼトはそれを気遣うかどうしようかと慌てて辺りを見渡した。
「やろうと思えば帝都まですぐ行けるわけだ。この危険性が分かるか」
「ん?んー」
危険か?
カークは真剣に考えた。悪用しようと思えば確かに出来る。
「あー・・・・・・帝都に乗り込んで直ぐ帰るって感じの事は出来るなあ。窃盗団にはならないから安心しろ」
「お前、もうちょっと考えて生きろ。頼むから」
レラの失礼な言葉に心外なと顔を歪めるがレラは気にした風もなく、厳しく言った。
「お前を利用すれば、誰にも知られることなく軍が帝都を乗っ取る事が出来るんだよ」
「あっ!?」
確かにそうだ。“通過する分には消費がない”“制限時間もない”のだから、人数制限がない。カークは門を創造しぼんやり見ているだけで殺戮者になれる。
「分かってくれたか。いいか、本当に気をつけろよ」
「あ、ああ」
「悪い奴にはついて行かない。信用できる奴にだけ、その魔法を使えよ」
レラの言い含めるような言葉に必死に頷く。首都を押さえられればどんな国も崩壊する。その一助などまっぴらごめんである。
不安そうな顔でレラはカークを見上げていたが諦めたように肩を落として立ち上がり、ゼトに向き直った。
「ある程度は諦めるしかない。魔法を取り上げることなんてできないしな」
「それも、そうですね」
ゼトも不安そうに見てくるのが心に来る。そこまで信頼がないか。
しょんばりと肩を落としているとオニキスが近寄ってきて、どうしたのかと見上げてくる。
「何でもないよ・・・・・・」
ふわふわな髪を撫でながらカークは力なく項垂れた。




