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エルデン・グライプ~「不滅者」は混沌の世界を狂気と踊る~  作者: 津崎獅洸
第一部

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82:果たしてお味は!?


竜の肉を焼きながら、カークはぼんやりと思う。

果して、竜肉とはうまいのだろうか?

家畜の肉が美味いのは品種改良がされているからであり、並々ならぬ努力が連綿と続けられた賜物だ。

そう考えると、食肉用に品種改良されていない竜の肉と言うのは美味くないのでは?という疑問が持ち上がる。

だが、じゅうじゅうと焼ける肉汁の音は食欲をそそり、においも抜群。美味そうだ。

焚き木を囲む中でカークはとうとう口を開いた。


「そろそろいいかな」

「ああ、食っていいぞ」


ノアの言葉にカークはうきうきとしながら串を一本とって、肉汁滴る肉を口に含んだ。

歯ごたえがある。が、肉質は柔らかい。獣臭さもなく、筋張っていることもなく、食べやすく脂ものっているがやや淡泊だ。

微妙な顔をして口を動かすカークにレラが笑う。


「別に珍しい以上の価値はないだろ?」

「うん・・・・・・」


正直、普通の肉と言う感想がたつ。高級の肉を知らず知らずのうちに想定していたのだ。はっきり言って霜降り肉のようなものを考えていた。カークは少し肩を落としながらも肉を頬張る。

不味い訳ではないが、あのレベルの竜を討伐してまで食べたいものではない。

普通に牛や豚の肉を食う方が良い。

とは言え、村を離れたグールたちには竜の肉を持てるだけ持たせた。これが悪い事でないことを祈るばかりだ。

オニキスもルリも食べているが別段表情に曇りはない。

要するにカークが期待しすぎていたのだ。

ただ、調味料もなくこれほど美味しいのであれば、十分だと思わないでもない。


「余った肉は祭壇に捧げればいいと言われましたが、祭壇とは?」

「それなら、俺が知っています。あとで持っていきますよ」


ゼトの問いにカークは答えた。

グールが言っていたのは“塊屍候(かいしこう)”の祭壇の事だ。その位置は知っているので、問題はない。

余った肉は結構な量があるので、ルリにも手伝って貰おう。

夕方を過ぎ、日が暮れ始めた村は薄暗い。焚き木を囲ってい入るが直ぐに夜の闇に暮れるだろう。

そんな中でゼトは口を開いた。


「明日の朝には宿場街に戻ります。そこで手続きを」

「はい」


カークが頷くとゼトは安堵したように頷いて、それから、ノアとレラに向き直った。


「今日は早めに寝ましょうか」

「ああ」


村の広場にテントを張っている。それはどうかと思うが、他に張れそうな場所もなく、やむを得なかった。

レラが焚き木の前に座り、警護をする。深夜頃にノアと交代だというが、初日に決めた通りカーク達にその役目が回ってくることは無い。

信頼関係が無いというよりは、単純に種族の差だろうと考えている。

夜闇を見通せない人間に夜の警護を任せるより、自分たちで警戒する方が理にかなっているのだと彼らは言った。

カークは思い出しながら、ノアとレラに話しかけた。


「また明日」

「ああ、よく寝ろよ」

「そうだぞ、よく寝とけ」

「はは、ありがとう」


そう言ってカークはオニキスとルリと同じテントに入っていった。




ぱち、と火がはぜる音にノアはぽつりとつぶやく。


「信用できるのか」


横に座るレラは肩を竦めて言う。


「実力は確かだ。あいつが居なかったら、死んでた・・・・・・俺も、お前も、ゼトも」

「ああ」


レラの言葉にノアは同意して、けれども、何処か寂しそうに首を振るのだ。


「教えても大丈夫か?」

「それは、辞めておこう。だがその内、知る事になるかもな。トヴェンセで軍と接触する必要がある」


レラの迷うような声と仕草にノアは顔を窺う。


「確かに。やはり、先にある程度は話しておこうか」


悩み、悩んで、結局は首を振る。


「今回の件が宿場街でどれくらいの騒動になるか分からん。場合によっちゃ、3手に分かれるかもしれないしな」


唸るレラにノアは茫然と星空を見上げた。もう何の話をしているのか分からなくなったのだ。こう言った頭脳労働の殆どをレラに任せているし、ノアに出来るのは観察と監視、得意な野伏の技能を活かすことだけだ。

ノアは腰のポーチから両手に乗せられるほど大きな鱗を一枚取り出した。


――魔法でこの竜を倒したのだ


あまりにも隔絶した強さを持つ存在に背筋が凍った。

ノアにはあの得体のしれない泥をこのまま連れて行くのが本当に正しいのかが分からなかったが、この、これほどの竜を倒せるのならば確かにこの先必要な人物だし、大事な主と兄弟を救ってくれた者を無下には出来ない。

それに、とノアは珍しく表情を曇らせた。


――あの女が、この件でゼトに目をつけたら厄介だ。帝都に着く前に居場所がばれでもしたら、最悪だ


鱗をポーチに戻して、ノアはため息を吐いた。





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