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エルデン・グライプ~「不滅者」は混沌の世界を狂気と踊る~  作者: 津崎獅洸
第一部

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79:村への支援


床に這いつくばり、目を覚ますとそこは木造の小屋の床だった。

極寒にさらされ業火に焼かれた後だと木の床が少し気持ちいい。

慌てて立ち上がると訝し気な顔のオニキスとルリと目が合い、グールの少女と、いや“塊屍候”と目が合う。


「“塊屍候(かいしこう)”」


思わずそう言って片膝を付こうとすると少女はそれを留める。


「違う。私は“塊屍候”の神性を持つ、ヒトガタに過ぎない。御方本人ではないのだ」

「何か複雑だな」


どういうことだか意味が分からない。


(んー・・・・・・そうか、ルリも“水獄の君”の神性を持っているけど、彼女は“水獄の君”ではない。確か、恩恵を得られる代わりに魂の一部を割くのだったか。目の前の少女も同じと考えれば・・・・・・割かれた魂の割合によって影響力が違う?)


いや、そうだ。そういえば、“水獄の君”は確か、ルリに「神性を深めて欲しい」と言っていたか。

深めた結果、少女の様に“塊屍候”の目になる事が出来るのか?

考えれば考えるほど混乱する。

カークの理解の範疇にはない。諦めて肩を落として口を開いた。


「もう少し、村を見て回るか」

「いいんですか?突然倒れたようですけど」


オニキスたちから見れば突然倒れたことになるのか。頭に何か振ってきて押しつぶされるかと思ったのだが。


「ああ、大丈夫」


カークはそう言って小屋から出た。




村を一周して広場まで戻るとゼト達がグールと話し合っていた。


「あ、ゼトさん。どうかしましたか」

「カークさん!ノアとレラと話した結果、この村に支援を送れそうだという結論になったのですが、グールたちの処遇をどうするかと相談していたんです」

「・・・・・・いなかった事でいいのでは?」


支援を送るのはいいことだが、グールは別に関係ないだろう。


「あ、そうか、駄目か。“グールが村を襲撃した”んだった」


そう、そうだ。竜が襲って来たのは事実だがグールが襲って来た事を関連付けて考えるものは極めて少ないだろう。むしろそんな発想をする人物は異様な妄想癖を持っていると言って過言ではあるまい。

グールのおかげで竜の襲撃を逃れられたなどと言う信の無い言い分を誰が信じると言うのか。


「かと言って彼らを連行するわけにはいきません。彼らのおかげで村人が助かったのは事実です」


魔物であるグールに対してあまりいい感情を抱いていないように見えたゼトだったがその判断は冷静そのものだ。


「確かに。グールは討伐したと報告するのは?」

「それで解決しないかもしれません」

「不思議な話ですね。グールが居なければそれでいいのでは」


カークが単純に疑問に思ってそう口にすると、ゼトは気まずそうにノアとレラを見て、それからカークを見た。


「これは花竜帝国の性質上の話なのですが、基本的にこの国では軍が強権を持っています。後々、この村には軍の監査が入り、グールが何匹いて何匹討伐したかを正確に測ります。その上で領主に報告を上げ、地域を担当する“9将軍”のひとりに事の顛末を報告する事になるんですが」

「え?なんて?」

「・・・・・・つまり、全く倒してない事がばれるんです」

「でも来るまでは時間がかかるんじゃないですか?流石に数日以上はかかるでしょう?その間に証拠を捏造すればいい」


それもまた曖昧な表情をしてゼトは左右に立つノアとレラを見て、肩を落とす。


「それはそうなんですが、実はこの地域を担当している“9将軍”はノアとレラのお母上なんです」

「・・・・・・はあ」


ぶっちゃけ、カークにはそれがどれ程の事かは分からない。そもそもこの国の事情に疎いカークでは“9将軍”の地位がどれ程かは想像の域を出ないのだ。

たぶん、軍の中でもトップクラスの権力者たちだろうと言うのは話の流れで分かるが、それがどうしたという気持ちもある。

むしろ、身内がその権力者たる“9将軍”であるなら良いように作用しそうなものだが。


「とても、その、とても苛烈な方で――――不味いんですよ、いろいろ」


言うべきことを言いきれないような微妙な顔を見せたゼトにカークは首を傾げるしかない。


「うーん?つまり、その方にバレたくないと?」

「はい」

「けど支援をしたい」

「はい」

「支援をするには、領主に話しを通す必要が当然出てくる」

「はい」


再び、カークは唸った。

正直、3人で話していい案が出ないのであればカークにも出ない。

まさか、支援の為に罪のないグールを殺すわけにもいかない。

不意に背後から声がかかった。


「それでしたら、竜がちょうどいるので利用しては?」

「うん?」


振り返りオニキスを見下ろすと彼は微笑んで答える。


「花竜帝国ではどうのような制度か知りませんが、陽王国では冒険者が倒した魔物の素材は冒険者の物です」

「成程、確かに。ですが、いいのでしょうか?」


話の流れを理解してカークは笑って頷いた。


「勿論です。“偶然”村に竜の鱗が落ちていて、それにいい値をつける方が“偶然”いても不思議はありません」


竜の鱗が一枚いくらかは知らないが、結構な大きさの竜だ。村の損失を賄える分は剥ぎ取れるだろう。

全身の鱗を剥ぎ取って、内臓を分け、皮膚を剥がせばいい値が付くに違いない。

肉もあるし、目玉も牙も爪も骨も売れそうだ。


(竜の肉って美味しそうだし)


「でしたら、こちらで相場より高く買い取ります。お金はカークさんたちへの特別報酬と言う事で。買い取った鱗を村長に渡します」


ゼトの提案にカークは頷き、それからちょっと笑った。

財布は侘しいが、それでも見過ごせないものだってある。つまらないお人好しの偽善者かもしれないが。


「もしかしたら冒険者が村の損害賠償をするかもしれません。どのみち村長と話さないといけませんね」


カークは村の生活がどれ程厳しいかはよく知っている。だからこそのこの言葉が出た。

畑があれだけ駄目になれば3年近くは収穫が見込めないかもしれない。土がめくれ、耕すにも開墾だってタダではないし、農耕具の手入れもしなければならないのだ。農耕馬がどこにいるかは知らないが彼らの飼い葉も必要だ。

しかも、家屋も倒壊している。とても楽観できる状況ではない。村人が戻ってきてもまともな生活どころか、直ぐに身投げをしかねない状況だ。


「ただ、お金があればいいということはありません。要らぬ争いを生みかねませんからほどほどに」


ゼトに窘められてカークは苦笑する。


「その辺りの匙加減はゼトさんたちにお任せします。加減よく、整えてください」

「勿論です。任せてください」


流石は貴族だ。機微の仔細もよく分かっているに違いない。


「その上でグールの皆さんには直ぐに村を発っていただきましょう。少しでも知られないように」


カークは兎に角、竜を解体しようとレラに声を掛けた。


「竜を解体できるナイフか何か持っていますか」

「ああ、ある。竜の解体を手伝うか?鱗を剥がすには特別な器具が必要だぞ」

「そうなんですか。よろしくお願いします」





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[気になる点] 誰かを助けたいけど、お母さんが怖くて助けられないって只の護衛を頼んでいる人に相談して、さらに解決してもらうとか、どんだけ無能なのってか一生の恥では? 自分の身内すら説得出来ない半端者…
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