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エルデン・グライプ~「不滅者」は混沌の世界を狂気と踊る~  作者: 津崎獅洸
第一部

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6:ゴブリン狩りの名人でも目指すか

冒険者になって数日たとうともやることは変わらなかった。

ゴブリン退治の依頼を受けて、退治しに森へ歩いて行く。

冒険心とは程遠いがあの森のゴブリンが群れて行動することも、賢い個体がいて統率されているわけでもない事を考えれば安全だ。

堅実に実績を重ねて経験を積み、LVを上げていくことは大切だろうと思うのだがイナンナは不満顔で此方を睨んでいた。

来る日も来る日もゴブリン退治では飽きるのは分かるがそれでも実力もなければ装備もない2人ではこれが限度なのだと説明しても聞き入れてもらえなかった。

イナンナは自信家だ。魔法の使い方だって学んでいたし剣も使えるが、カークよりましな程度の実力では2,3匹のゴブリンを同時に相手取るのが限界なのだからより強い魔物や魔獣とはまだ戦えない。

ゴブリンから取れるだけの素材を回収して立ち上がると警戒しているはずのイナンナは髪の毛の先を持って弄うと隠しもせずにカークにしかめっ面を見せた。


「弱いゴブリンなんか話にならない。もっと強い魔物と戦うべきよ」


今度はカークがしかめっ面をする番だった。

この森にはゴブリンより強い魔物や魔獣はごまんといるが出くわさないのはカークが細心の注意を払っているのもあるが、ゴブリンはそもそもそんな奴らと同じ生存圏ではなく、ヒトがすぐに入ってこられるような森の浅い所にしかゴブリンの様に弱い魔物は通常は住めない。

その分、どこかの“黒くて名前を言ってはいけないアレ”のように爆発的に増えるのだ。

とにかく、イナンナは危険を冒して森の奥に踏み入れるか草原地帯の魔物と戦うべきだと言い始めた。

今の2人ではシカ一匹を追いかけまわして狩るのが精いっぱいだとしてもだ。


「イナンナ、駄目だ。俺達じゃあこれ以上森の奥には行けない。魔法の道具はおろか、防具すらないんだぞ」

「何で!?私の実力ならどんな魔獣も魔物も狩れる」


自信家だ。いいや、これはもはや自信過剰だ。

そう思いいたってカークをため息を吐きそうになりそれをぐっと飲みこむ。


「俺達の実力で魔物や魔獣の生態を知らずに狩ろうとすれば手痛いしっぺ返しを食らう。慎重に進めていこう。死んでしまっては元も子もない」

「ふん」


鼻息あらくイナンナが帰り始めたのでカークはひっそりとため息を吐いた。

そろそろ剣を買うべきだろう。切れ味の悪い武器は精神にも肉体にも負担だ。

帰ったらさっそく武器屋をのぞきに行こうと心に決めた。

いや、どうだろうか。防具が先がいいかもしれない。

森を抜け、草原の街道を歩いているとイナンナが立ち止まった。

どうしたのかと声を掛けるより早くイナンナは声をあげる。


「青鹿よ。あれなら狩れるでしょ」


鋭い目でそう言われて苦心して表情を歪ませずに済んだ。

“青鹿”は体毛が青色で斑が淡紅色であり、体高が1mを超す中型の草食魔獣。

控えめに言って過ぎた獲物である。

確かに草食魔獣であり危険性は低いと感じるだろうが、角と身体のデカさと突進力は凶器だ。気軽に相手出来やしない。


「D級の依頼に上がっていた。青鹿を無理に狩るのは危険が大きい」

「あれも狩れないこれも狩れないって!!!私はゴブリン狩りがしたくて冒険者になったんじゃないの!」


激昂したイナンナは拳を握りしめてそう怒鳴り息を吸うと、口をつぐみ踵を返して街に向かう。


「私は、魔法剣士なの」


限界を知らず真っ直ぐに進み続ける彼女は好ましい。

カークはこの世界で生を受けてからであった幼馴染であるイナンナを目を細めて見守る。

そうだ、彼女は魔法剣士だろう。だがそれは彼女の自称に過ぎない。

能力表にはその人物が今まで就いてきた“クラス”が表示されるが彼女の能力表を見た際には“魔法使い”と“剣士”の表記だけであり“魔法剣士”の表記は無かった。

いつかはなれるだろう。だが今は魔法剣士ではないという事実を彼女は無視している。

ロクな防具もなく冒険者を続けるのは綱渡り状態なのだ。

危険の少ない狩場を選び、慎重に周囲を窺いそうやって狩りをしてきた。

せめて防具があれば。せめて武器があれば。

ああ、結局はどこでも金はいるのだ。

カークはひとり嘆息した。



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― 新着の感想 ―
[一言] 登録料よりも装備を優先でよかったかもなぁ
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