表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
エルデン・グライプ~「不滅者」は混沌の世界を狂気と踊る~  作者: 津崎獅洸
第一部

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

76/275

74:目的とは


少女の身なりは平凡な村にはそぐわない物だった。

農民たちの服と言うのはカークが着ているような縫製が甘く、目の粗い麻や木綿で出来た簡素な服。

それに対して彼女の服は装飾こそないが縫製もしっかりとした滑らかできめ細かい高価な生地の服である。

農民じゃない。警戒して彼女を見たが、彼女もまたこちらを警戒したように見ている。


「さあ、村から出て行って!」


繰り返しそう言うと腰に手を当てて彼女は全員を睨みつける。

代表して声を上げたのはカークだ。


「あー・・・・・・すまない。村がグールに襲われたと聞いて来たんだ。村人は?」


カークの言葉に彼女は反応し、何か迷うそぶりを見せてから口を開く。


「皆いないわ。あたしたちが追い出したもの。あたしもグール!さっ逃げて頂戴!」


がおーと手を見せつけて爪を僅かに伸ばし異様に鋭く尖った犬歯を見せつける様に口を大きく開けた少女にレラとゼトが顔を見合わせ、カークはそれを見つめてから、しゃがんだ。


「うん。その、事情を知っている人はいないかな?出来れば話したいんだ。このままじゃ、君たち討伐されちゃうぞ」

「とうばつってなに?」

「殺されるってこと」

「殺されちゃうの!?なんで?あたしたち、村から追い出しただけ。あの人たちを助けたのよ!」

「助けたって?どういうことだ?」


カークの疑問に彼女は口を手で覆い、それから、黙って踵を返す。


「え!?ちょ、ちょっと」

「追うぞ、頓馬」


なんか昨日から口が悪いよなレラ。と思いながら少女の後を皆で追う。

少女は村の広場まで走って、それから一番大きな家に駆け込んでいった。


「俺が先に行く」


レラの言葉に頷き、少し離れて窺うと家の中から驚いた表情の女性が飛び出してきた。


「あ!?本当だ。なんで、なぜ・・・・・・私たちはグールよ!さあ、逃げなさい」


さっきも聞いたセリフにレラは若干肩を落として女性を見た。


「グールなのはわかったから、なんで村を襲ったか聞きたい」


レラの言葉に女性は戸惑い、家を振り返ってを何度か繰り返してから一行を見渡す。


「信用できる?」

「信用の方向性によるな。ヒトを襲いたいという欲求を土台に持ってくるなら信用はするな」


レラの真っ直ぐな言葉に彼女は苦笑して、家に招いた。


「こっちで話しましょう。時間はまだあるから」

「どうする?家の中にはまだグールがいるだろ」


レラは振り返り目の前の女性をまるで無視して話しかけてくるのでゼトは苦笑した。


「中で聞きましょう。襲う気があるなら一斉に飛び出してきたはずですし、村の中を警戒していないのも不自然です」


女性に促されて家の中に入ると、土間に置かれた簡素なテーブルと4脚の椅子。唯一椅子に座る青年とその傍らに立つ少女とさっきの少女だけだった。


「グールは15人では?」


ノアの言葉に椅子に座っている青年が苦笑した。


「何故知っているのか聞きたいが、まあ、残りは今いないんだ」


青年はそう言い、一行を見渡して聞く。


「どうして、此処に?」

「グールに襲われたと聞いて調査に来たんです」


ゼトの言葉に彼は顔を歪め、首を振る。


「随分と行動が早いな。冒険者を雇う金だってないはずだ。何故?」

「異常事態だと判断したのです。それで、直ぐに動ける我々が」


彼は考え込むような仕草をして目を一瞬少年に向けてからゼトを睨む。


「この村はグールが占拠した。死にたくなければ、去るが良い」

「それは通用しないな。村人に意図してケガを負わせないようにしただろう?害意は無かったはずだ」


ノアの何ともないような言葉に彼は盛大にため息を吐き、額に手を当てる。

カークはそのしぐさに不安を煽られた。例えば、それは何か致命的な事が起ころうとする前触れのように感じたのだ。


「話さないと出て行かないか?」

「出て言っても良いが、正式に討伐隊を送り込む」

「だよな」


にべもない返事を聞いて青年は諦めたように左側に立つ少女へと目を向け懇願するように頭を下げた。

少女はため息を少し吐くと改めて一行を見渡し、無表情に告げる。


「此処は間もなく戦場になる。死にたくなければ去れ」


冷たい言葉だったが、そこにある感情は全くの別物だ。憐憫ではない。傲慢でもない。

あるのは憂いだ。


「何故、分かるのか聞いても?」


少女に向き直りゼトは丁寧に聞く。すると少女はゼトをガラスのように無感情な瞳で見上げて無表情のままで口を開く。


「神がそう仰った。この村では我らが信仰する神を我らと同様に敬い信仰した。その恩恵を下すと神が決定されたのだ。故に村人は村から追い出されるべきであり、此処で信仰あるものが死ぬ事は神がお許しにならない」


先じても変わらない声色にゼトは眉を顰めてレラは剣の柄に手を添えて一歩下がる。

ノアは少しずれたがいつでも剣を抜くだろう。


「神の正体をお聞きしても」


ゼトの言葉に少女は瞳に感情を灯し、微笑み、慈愛に満ちた声色で溶けだすほど柔らかに口を開く。


「グールの王。納骨堂の神。墓所の主。我らを見守り、我らを愛してくれる。“塊屍候”。その御方が我らの神だ」


カークは息を呑む。あの時、あの、ゴブリンが探していた“神”に違いないと!





評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ